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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十章 帝国大戦乱

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第二百六十八話 長老と騎士

「ほっほっほ、よく来たのう」


「アルフィ殿……」


 ジジイ、起きてきたんだ。

 というかジジイのこと知ってるの?


「お二人もどうぞ座ってください。魔物だらけの道じゃ落ち着いて食事もできなかったでしょう。エマちゃん、二人にお茶をお願い」


「はい!」


 さっきやっとエマちゃんも起きてきてくれた。

 私がいることで安心して寝ちゃったみたい。

 でも私がいなきゃエマちゃん一人でずっと気を張ってなきゃいけなかったんだよね。

 お兄はエマちゃんのことも心配して、私に行くように言ったのかも。


 それより二人は毒が入ってる心配もせずにがっついてる……。

 侵略してきたと思ってるんなら少しは疑ったほうがいいよ。

 いい食べっぷりだからもう少しサービスしてあげちゃおっかな。


「ララちゃんや、ワシにもなにかおくれ」


「ジジイは夜ご飯たくさん食べたでしょ。ボケてるんじゃないの?」


「だってこの料理は食べてないんじゃもん。お腹は減ってないけど美味そうじゃ……」


「アルフィ殿に対してこの口調であるとは……恐るべしお嬢ちゃんである……」


「それよりせっしゃは封印魔法の使い手がこのお嬢さんであるということがいまだ信じられないのであります……」


 親子揃ってせっしゃなの……。

 いや、この国では流行ってるのかもしれない。


「ララちゃんは封印魔法だけじゃなくて攻撃魔法も得意のようじゃぞ?」


「なんと!? そんなことがあり得るのでありますか!?」


「たま~にいるんじゃ。どれ、一つ炎を見せてやってくれんかの?」


「嫌。魔力の無駄遣いじゃん。封印結界の範囲を拡げるのに結構魔力使ったから疲れてるの」


 封印結界維持のための魔力補充はこの村の魔道士たちも手伝ってくれるから心配しなくていいけどさ。


「で、スタンリーよ、この村になにしに来たんじゃ? 近付かないって約束じゃろ?」


「ジジイ、ゆっくり食べさせてあげてよね。ほら、わらび餅あげるから少し待ってて」


「おっ? なんじゃこれ? ……おおう? 初めての食感じゃ……そして美味い! エマちゃんや、ワシにもお茶をくれんかの?」


 ホント図々しいわねこのジジイ……。

 エマちゃんだってそのうちキレるよ?


 騎士隊長さんは食べ終わると、村の外にいる騎士たちの食事の様子を確認しにいった。

 そして満足そうに戻ってきた。

 いちいち封印魔法の調整面倒臭いんだからね?


「ありがとうである! まさかこの屍村でこんな美味い食事が食べられるとは夢にも思ってなかったのである!」


「普通の食事だからね。さて、本題に入りましょうか」


 やっと話ができる。

 賑やかなせいで眠気なんかどっかにいっちゃったな。


「ではこちらからの要求を伝えるのである! 申し訳ないが食事の件とは別であるからな!」


「はいはい。どうぞ」


「皇帝は王国軍に速やかに撤退するよう命じているのである!」


「それはウチの冒険者がベネットにいる騎士たちからもう聞いたけど?」


「むっ!? それにも関わらずこんなところから侵略してきたから皇帝はカンカンにお怒りである! もう一度言う、速やかに撤退せよ!」


「はい、わかりました」


「むっ!? わかってくれたであるか!?」


「……なんて素直に言うと思う?」


「むむむっ!」


 結局またその話だとこれ以上進まないじゃん。

 お兄だったら激怒してるよ?

 私だからこんな穏やかにすんでるんだからね?


「侵略する気なんかないし、私たちは王国の王様に命令されて来たわけじゃないしね」


「それはあの冒険者も言っておったのである。じゃあなんのために来たのであるか?」


「まだ生きたいと思う人を助けようと……いや助けるって言い方はあれね。生きたいと願ってる人が安全な場所へ逃げようとするのを手助けしにきたって感じ?」


「「……」」


 間違ってないよね?

 逃げたくない人は逃げなきゃいいし、無理してまで助ける気なんてないもん。


「というか王国軍って言い方はやめてくれない? みんな大樹のダンジョンで修行中のただの冒険者なんだからね? 困ってる人がいたら助けたくなるのが冒険者でしょ? お金で雇った傭兵ってわけじゃないよ?」


「むむむ……ソロモン、どうである?」


「嘘を言ってるようには思えないのであります……あの冒険者の方も周りの冒険者の方々から慕われてるようでありましたし……」


「あのねぇ、その人はゾーナさんって言うの。半年前までウチのダンジョンで修行してて、そのとき王国に出現した中級魔工ダンジョンを討伐したメンバーでもあるの。今回帝国に魔工ダンジョンが出現したってことを私たちに教えてくれたのもそのゾーナさんたちだし、救援依頼をしてきたのもそのゾーナさん。報酬なんてなにもないの。ただ助けに来ただけじゃん。だからそっちが出てけって言うんなら別に明日にでも帰るわよ。帝国の人たちはこれからみんなで仲良く魔王といっしょに生活すればいいだけだし」


「「……」」


「皇帝は今のこの国の状況をどう見てるのよ? 帝都をどうやって守るつもり?」


「それは……魔工ダンジョンを全て潰せば問題ない、と……」


「二人はホントにできると思ってる? ゾーナさんが討伐したもの以外に一つでも潰せた? ダンジョンの中の敵は深層に行くほど強くなっていくんだよ? 半年前にウチでも選りすぐりの冒険者を中級魔工ダンジョンに送りこんだけど、何人か戦闘不能になったんだよ? そのときよりも強い魔物が出るだろうし、一つダンジョンを潰したところでまた一つ新しくダンジョンが出現するだけだろうと考えたから私たちはゾーナさんに逃げることを提案したんだよ?」


「「……」」


 この人たちだってホントはわかってるはずだ。

 ただ皇帝に逆らえないだけなんだと思う。


「ほっほっほ! ララちゃんの言う通りじゃわい。普通にしてたらまず勝ち目はない。魔瘴もそのうち帝都全体を覆いつくすぞ? もちろんそのころにはこの大陸全体が浸食されておるんじゃろうな、ほっほっほ」


「ジジイ、他人事じゃないでしょ。この村の人はほぼ全員王国へ移住することを決断したんだから、ジジイはこれから魔瘴の中一人で生活することになるんだからね?」


「え……ワシも……いや、ワシはここに残る」


「そう。大変だろうけど長生きしてね」


「え……そこは引き留めてくれるところじゃろ? そうじゃろ? じゃよな?」


「「え……」」


 なんで二人に聞くのよ……。

 でもこの二人は帝都から逃げることなんて許されないんだろうな。


「……アルフィ殿も魔工ダンジョン討伐は難しいと考えるのであるか?」


「それは正直ワシにはわからん。じゃがララちゃんたちが言うことに嘘はない。いや、ララちゃんじゃなくて大樹のダンジョンの管理人がそう判断したんじゃからな」


「管理人? ジジイがお兄のなにを知ってるっていうのよ?」


「お兄ちゃんのことは知らなくても、大樹のダンジョンがどういう存在かということは知っておる。帝国でいうユウシャ村みたいなもんじゃからのう」


「ユウシャ村? どういうこと?」


「ユウシャ村の役割は村全体で現勇者のサポートをすること、そして同時に次代の勇者候補を育て上げることじゃ。勇者を育て上げる目的はもちろん魔王が現れたときに討伐するためじゃ」


 やっぱりそうなんだ。

 というか今となっては普通すぎ……。


「帝国はみんなが勇者を目指せば自然と個々の能力も上がっていくという考えで勇者制度を作ったんじゃ。そもそもユウシャ村は一番最初の勇者を輩出した普通の村にすぎん。それがきっかけでユウシャ村とか呼ばれだしたせいで、それからずっと勇者を出そうと必死になっておる。実際に勇者はユウシャ村からしか出ておらんから結果は伴っておるんじゃがの」


 でもその勇者もただ強いってだけで特別な能力があるわけじゃないんだよね?

 どうやって審査してるんだろ?

 冒険者同士が戦ったりするわけじゃないんだよね?

 実はもっと強い人がほかにいたりしてもわからないんじゃないの?


「それに対して大樹のダンジョンは魔王を倒す勇者パーティ養成施設って感じじゃろうな」


「「「「勇者パーティ養成施設?」」」」


「そうじゃ。王国は魔王を倒すにはパーティとしての能力底上げが必要と判断したんじゃ。帝国は強い人物が集まれば強いに決まってるって考えじゃからのう。王国は個々の能力が高くても、パーティとして強いかどうかとは別の話じゃって考えたらしい。じゃから実際に魔王のダンジョンを想定して、人工ダンジョンなる物を作るように錬金術師に依頼したらしいぞ」


 へぇ~。

 このジジイ、結構物知りじゃん。

 そんな話ドラシーからも聞いたことなかったよ。


 でも大樹のダンジョンって大樹のためにあるんじゃなかったっけ?


 ……魔瘴に対抗できるのは大樹が生み出すマナだからそういう意味で大樹のためって言ってるの?

 ついでに魔王を倒せるようなパーティを育成できたら一石二鳥だねってこと?

 それとも逆?


「じゃが今じゃユウシャ村で育った勇者候補たちはみんな村内で噂を聞いて大樹のダンジョンに行くようになってしまったからのう。現勇者も含め結局ここ数代の勇者は大樹のダンジョンで修行した者ばかりじゃ。あそこはしっかりパーティで成長することができるし、周りには切磋琢磨できる冒険者たちがわんさかいるからのう」


 ウチってそんなに需要あったんだ……。

 ユウナちゃんもそうやってウチに来たんだね。


 ……でも去年までの六年間くらいの間に来た人はどう思ったんだろう?

 あんな超初心者向けダンジョンじゃなにも修行にならないよね……。

 一か月ちょい違えばユウナちゃんだってすぐにいなくなってたかもしれないのか。


「つまりワシが言いたいのは、帝国の勇者という存在より、王国の大樹のダンジョンを信じておるってことじゃ。別に王国や帝国がどうとかではない。運悪くワシらの時代に魔王が復活した今、大樹のダンジョン、そしてそこの管理人という特別な存在を信じるしかないんじゃ。信じようが信じまいがそれはお主らの自由じゃがのう」


 ジジイ、だてに年を食ってないみたいね。

 思ってたよりウチのことも詳しく知ってるようだし。

 でもこんなんで騎士たちが納得するの?


「……わかったのである。元勇者のアルフィ殿が言うのであればそうなのである」


「「元勇者!?」」


 このジジイが!?


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