表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十章 帝国大戦乱
267/742

第二百六十七話 帝国の騎士

 ……んん……なんの音?


「総司令官! 騎士が来ました! 総司令官!」


 ドアを叩く音がうるさい。

 なんでそんなに何回もドンドン叩くのよ……。


「総司令官!」


 …………えっ!?


「騎士が来たの!? すぐ行く!」


 もっと早く呼びに来てよ!


 ……ってごめんなさい。

 完全に寝てました……。


「エマちゃん! 行くよ!」


「……」


「エマちゃん!?」


「……」


 ダメだ、起きない。

 今日は疲れてただろうから仕方ないか。


 小屋を出ると、ゲンさんが待っていた。


「ゴ」


「えっ!? ……乗れってこと!?」


 そしてまたゲンさんの肩に乗せてもらう。

 騎士が攻撃してくる可能性もあるからってことね。

 でも人間相手ならこわくないと思うけど。


 ゲンさんはゆっくりと歩き出した。

 村の入り口はすぐそこだけどね。


「あっ! 総司令官が来たぞ!」


 みんな地下に帰らずにここで見張りをしてくれてたんだ。

 マイキーさんたちを入れると十人くらいいるけど。


「もうまもなく騎士たちが乗る馬車がやってきます!」


「了解です。外には誰もいませんか?」


「はい!」


 よし、それなら封印を一段階強くしようか。

 声だけは聞こえるように調整してと。


 ……うん。

 我ながらなかなかの封印結界だ。

 もしかして封印専門の魔道士として食べていけるんじゃない?


「しばらく村から一歩も出ないでくださいね。蟻一匹入ってこれないですから」


「「「「おお~!?」」」」


 封印魔法だけでそんなに驚いてくれるの?

 それなら外の魔瘴を浄化したらもっと驚いてくれるかな?

 まだ私にはできないだろうけど。


「来たぞ!」


 馬車が来た。

 弱そうな馬だ。

 御者に一人、馬車の両横にも一人ずつ歩いている。


 ……三台?

 何人来たの?

 数人ってわけではなさそうね。


 そして入り口の前まで来て、馬車がとまった。

 馬車からは続々と人が降りてくる。


 ……二十人くらいかな?

 暗いからよくわかんないや。


 その中でも一際年齢の高い人が前に出てきた。

 筋肉より脂肪が多そう。

 こんなんで戦えるの?

 ウチのダンジョン地下三階の山登りなんてできないでしょ?


「責任者を出すのである! この村の責任者ではなく、王国軍の責任者である!」


 王国軍?

 軍ってなによ?


「こんばんは。私が責任者というか総司令官ですけど」


「……え? ……お嬢ちゃん、そんな高いところでなにしてるのである? もうすぐ日が変わるから早く家に帰って寝るのである」


「だから私が王国から来た冒険者たちの責任者というか総司令官なんですよ」


「バカにしてるのであるか!? こんな時間なんだからお嬢ちゃんは家で寝てるのである! 親はどういうしつけをしてるのであるか! あ、親がいなかったら申し訳ないのである……。で、本当の責任者はどいつであるか!?」


 このあるあるおじさんはなんなの……。

 ジジイといい、ここに来てから変な人ばっかり会うわね。

 というかゲンさんのこと認識してる?

 ただの置物の鎧と思ってない?


「それより早く村の中に入れるのである! この周辺も魔物がいっぱいであるからな!」


「そこは大丈夫ですけどね。さっきからそこのブルースライム、近付いてこないですよね?」


「え? ……確かにこっちに来ようとはしているが来ないであるな」


 魔力がないと封印結界が見えないもんね。

 ウチの魔物急襲エリアや休憩エリアみたいに少し色を付けたほうがいいのかなぁ。

 ってそんなことできるかわからないけどさ。


「とうさ……騎士隊長、これはおそらく封印魔法でありますね」


「封印魔法? ……ベネットの町全体にかけるって言ってたやつであるか?」


「そうであります。封印魔法を結界のようにしてこの道を取り囲んでるのであります。……どうやら今来た道にも結界がかけられていたようであります」


「……つまりこの結界内には魔物が入ってこれないってことであるか?」


「その通りであります。かなりの魔法の使い手がいると考えたほうがいいのであります」


 親子なのかな?

 というかこのおじさんが騎士隊長?

 大丈夫なの?


 息子さんは服装が違うから騎士じゃなくてただの魔道士っぽいよね。

 この人も敬語をやめるとあるある口調になっちゃうのかも。


「ふむ。安全なのはわかったからさっさと中に入れるのである」


「別に道を塞いでるわけじゃありませんから勝手にどうぞ」


「むむ? さっきからなぜお嬢ちゃんしか話さないのである? 大人はいっぱいいるであるのに」


 そして騎士隊長が入ってこようとする。


「うぉっ! なにかにぶつかったのである!」


「……どうやらそちらには魔物だけじゃなく人間も入れないようでありますね」


「なぬっ!? そんなことができるのであるか!?」


「なにかの文献で読んだことがあるような……。おそらく上級の封印魔法でありますね……」


「上級!? それほどの使い手が王国軍にいるのであるか!?」


 へぇ~。

 まぁレアっていうくらいだから上級じゃないと困るよね。

 でも既に三人も使えてるのにホントに上級なのかな?

 エマちゃんなんてこの前まで魔法の一つも使えなかったくらいなんだからせいぜい中級ってところじゃないの?


「隊長、こちらに危害を加えてくる様子はなさそうですし、ここは話し合いの場を持たれてはいかがでしょう?」


「そうです。ここに来るまでの道で戦ってた冒険者たちはおそらく王国軍と思われますが、我々が通る道上の魔物を倒してくれているようにも思えました」


「バカ者! 王国軍なんかに騙されるな! 魔王とか言って実は全部王国軍の仕業だとは考えないのか!?」


「そうだ! 現に今この国に王国の冒険者がいっぱい来てるってことは王国は安全だってことだろ!? なにか狙いがあるに違いないんだ!」


 お~、意見がきれいに真っ二つ。

 でも意外にもこっち側に味方してくれそうな人もいるんだね。


「う~ん、ソロモンはどう思うのである?」


「中に入れない以上、話を聞くという選択肢しかないのであります」


「おお!? そうであるな! というわけでみんな落ち着くのである! ここはせっしゃが話を聞くのであるな!」


 せっしゃってなによ?

 自分のことせっしゃって言うの?


「改めて王国軍の責任者! 出てくるのである!」


「だから私だって言ってるでしょ。それに夜遅いんだからそんなに大きな声出さないでよね。みんな起きるでしょ? 村の人に私たちが悪く思われたらどう責任取ってくれるの?」


 敬語なんか面倒だからもう使うのはやめよう。

 眠いし、気を遣うテンションでもないしね。


「……すまんのである。少しトーンを落とすのである……。だからお嬢ちゃんじゃなくて責任者を出してほしいのである」


「だから私だってば! 何回言わせるのよ!」


「「「「……」」」」


 この人たちバカなの?

 こんな真夜中にも関わらずわざわざ子供に相手させる責任者なんているわけないでしょうに。


「騎士隊長、信じがたいことでありますが、周りの人たちの反応を見るにこの少女の言うことは本当っぽいのであります……」


「なにっ? するとこのお嬢ちゃんが王国軍の責任者……確かに高い場所から見下ろしてはいるが……」


「やっとわかってくれたみたいね。ちなみに私が座ってるのは魔物よ」


「「「「へ?」」」」


「ゲンさん」


「ゴ」


 ゲンさんはその場にあぐらをかいて座って見せた。

 これで少しは目線が低くなったわね。


「「「「……」」」」


 騎士たちは唖然としている。

 なんだかもう見慣れた光景だ。


「わかった? 大樹のダンジョンって知ってる? そこの管理人は魔物使いっていう特殊な能力を持っててね、ゲンさんはその管理人の仲間の魔物なの。わかる? ゲンさんはいい魔物なの」


「「「「……」」」」


 やっぱり知らないよね。

 大樹のダンジョンどころか魔物使いっていう言葉も知らなくても普通のことだもん。


 ……あ、でもゾーナさんから聞いてるよね?


「父さん、あの方たちが言ってたことは本当なのかもしれないであります……」


「あの王国帰りとかいう冒険者であるか……。冒険者にしてはなかなかの腕を持ってたであるが」


「なかなかどころじゃないであります。将来性を考えると来年の勇者候補にあの三人の名前があがってもおかしくないであります」


 あの三人ってゾーナさん、ブレンダさん、ジェイクさんのこと?

 あれからどれだけ強くなったか知らないけど、いくらなんでも勇者候補は言いすぎじゃない?

 ゾーナさんたちは強いけど、それならウチの冒険者の多くが勇者候補になれちゃうってこと?


 それこそユウナちゃんなんて…………でもユウナちゃんは攻撃魔法が使えないもんね。

 回復魔法が主体の勇者じゃカッコがつかないか。


「ねぇ、もういい? 話がしたいんでしょ? それなら騎士隊長さんとソロモンさんは中に入れてあげるから。ほかのみなさんは悪いけどそこで食事休憩でもしてて。大樹のダンジョン産の食事で良ければ用意するからさ。心配ならこっちの誰かに毒見させてからでもいいよ。じゃあ二人だけ結界を通れるようにするから入ってきて。……はい、どうぞ」


「「「「へ?」」」」


 あ、私が封印魔法の使い手だってこともまだ知らないのか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=444329247&s
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ