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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十章 帝国大戦乱
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第二百六十一話 屍村到着

 サウスモナを出航してからおよそ二時間。

 もうすぐ屍村に着く。


「少しスピード落とすから魔物に注意しててくれる?」


「はい!」


「「ピィ!」」


 いよいよね……。

 屍村、どんな村なのかな。


「そろそろなはずなんだけど……」


「あっ! あれウチの船じゃないですか!?」


「……あ、そうかも。一応防波堤みたいなのはあるんだね」


「なんだかちゃんと港って感じがしますよね」


「でも船が全く見当たらないね。もうずっと使われてない港なのかもしれない」


 言われてみたら確かに船が一隻もない。

 当然活気もない。

 人っ子一人いないもん。


「あっ! シモンさんとヴァルトさんだ! ほかに冒険者の方も何人かいますね」


「誘導してくれてるね。このままゆっくり近付くよ。碇やロープもボタン一つで出したり巻き取ったりできるから便利だね。魔力プレートも凄いけど魔力線の発明も相当凄いよ」


 魔力線は発明って言わないと思うけど……。

 魔力プレートをただ細い線にしただけだからね。


 ヨハンさんが凄いって言ってるのはその魔力線を応用として使ってるカトレア姉たちの発想や錬金術のことだよ。

 って魔力プレートもマリンちゃんとモニカちゃんの発明には違いないから結局錬金術師のみんなが凄いことには変わりないか。


 船はゆーっくりと岸に近付いていき、岸に向かって船からロープが投げられるとそれをシモンさんが受け取った。

 そして船は完全に停止した。


「ふぅ~。無事到着だね。お疲れ様」


「お疲れ様でした! 初めての航海でしかも一人でなんて凄いです!」


「ありがとう。この船が操縦しやすいんだと思うよ。カトレアさんたちはきっと誰でも操縦できるように作ったんだね」


 ヨハンさん、出航前より頼もしくなったんじゃない?

 少し見直しちゃったな。


 それより早く降りないとね。

 みんな待ってくれてるもん。


「ララちゃん! それにヨハン君! 無事だったみたいだね!」


 船を降りるとすぐにシモンさんが声をかけてくる。

 遅いから心配してくれてたのかな?

 ベンジーさんのせいだからね。


「すみません、少しサウスモナで用事がありまして……」


「そうだったんだ! それより注意したほうがいい」


「注意?」


 なんのことだろ?


「こっちに来るぞ!」


 近くにいた人が急に大きな声を出した。

 よく見たらウチの冒険者じゃないよね?

 この村の人かな?


「なにが来るんですか? ……え? ワイルドボア!?」


「「ピィ!」」


 すぐにメルとマドが私の前に出て、それぞれ風魔法と土魔法を放った。

 ……どうやら一撃で仕留めたみたい。


 それにしても村の中にまで魔物が入ってきてるなんて……。

 近くまで魔瘴が迫ってるってことだよね。

 元々そういう村なのかもしれないけど。

 なんてったって屍村だもん。


 村の人たちはリスが魔法を放ったことに驚きつつも、今魔物が来た方向に走っていった。

 ウチの魔物のことは聞いてるみたいね。

 って既にエクが来てるからか。


「説明するからあっちに行こう。船も一旦レア袋にしまおうか。こっちは目印になるように出してただけだから。……ララちゃん?」


 ……あれ?


「どうしたんだい?」


 体が動かない。


 やっぱり私まだ……


「ゴ」


「きゃっ!」


 ……え?


 ゲンさんが急に私を持ち上げたかと思ったら、自分の左肩に乗せてくれた。


 すっごく高い!


「ゴ」


「……うん。ありがと、ゲンさん」


 そしてゲンさんはそのまま歩き出した。


 すぐに事情を察したシモンさんとヨハンさんは慌てて船をレア袋にしまって後を追いかけてくる。


「ララちゃん、無理しないでいいからな」


 隣を歩いていたヴァルトさんが声をかけてくれる。


「はい。おとなしく封印魔法だけに徹します」


 間近で魔物を見ただけでまだこうなっちゃうのか。

 あれからだいぶ経つからそろそろ大丈夫かと思ってたんだけど。

 今だって別にちっともこわくなんてなかったもん。

 だから少しずつ改善されてきてるはず。

 たぶん頭と体の動きが一致してないんだよね。


 こんなんじゃみんなの足手まといになっちゃうよね。


「ゴ」


「「ピィ!」」


 ……メルがゲンさんの後ろ、マドが前に位置を取った。

 私を守ってくれるってことだよね。


「ゲンさん、しばらく私の傍から離れないでね」


「ゴ」


 守ってやるから安心しろ。

 って言ってくれてる気がする。

 兜を被ってるから表情は全くわからないけどね。

 というかゲンさんの場合は普段から表情には全く変化ないけどさ。


「ここが屍村で間違いないんですよね?」


「うん。屍村って呼ばれてる理由もなんとなくわかったよ」


「え?」


「ララちゃん!」


 すると向こうから知った顔が走ってきた。


「大丈夫ですか!?」


 ヒューゴさんだ。

 なんだか安心するなぁ。


「この通りゲンさんたちが守ってくれますので大丈夫ですよ」

 

「それは安心ですね。それより今村の外は魔物でいっぱいなんです。さらにどうやらこの村にマナというものは全く存在していないらしくて」


 そういうことか。

 だから魔物も好き勝手に村に入り放題なのね。


「近くに魔工ダンジョンがあるんですか?」


「はい、確認しただけでも二つ。魔物の種類を見る限り初級が一つに中級が一つ。かなり危険ですね。魔瘴も拡がってますから」


「さっきワイルドボアに襲われましたけど、あれはどっちのですか?」


「中級だと思われます。初級のほうはブルースライムが大量発生という感じですので」


 ブルースライムかぁ。

 さすがにそれくらいなら今の私でも大丈夫だよね?


「ほかのみんなもまだ村にいるんですか?」


「いえ、もう旅立ってもらいました。ララちゃんが来るのを待って配置を再確認しようとも思いましたが、この村周辺の魔瘴を見たらやはり時間ロスが痛いと思いまして……」


「そうでしたか。ヒューゴさんがそう判断されたんならそれが正解です」


「そう言ってもらえると助かります。それよりララちゃんはまずこの村の長老に会ってもらえますか?」


「長老? 村長みたいなものですか?」


「はい。長老と言いましてもまだ五十歳半ばくらいに見えましたけどね」


 な~んだ。

 すっごい白髭のお爺ちゃんを想像しちゃったじゃん。


「おりゃーっ!」


「スライム死になさい!」


「さすがにブルースライムなんかには負けられん!」


「猪みたいなやつからは逃げろ!」


 というか村の中で普通に戦闘が繰り広げられてるんですけど……。

 本当にブルースライムが大量発生してるし……。

 ワイルドボアもそこら中走り回ってるよ……。


 なにこの村、来てすぐだけどもうヤダ。


「……長老に会う前にまず封印魔法を村全体にかけましょうか」


「あっ! そういえば本当にララちゃんも封印魔法が使えるんですか? 手紙で知ってみんなで驚きましたよ!」


「なんかできるみたいです。戦ってる人たちはこの村の人なんですよね?」


「はい、みなさん戦闘経験がおありのようでして」


「……まぁそれはあとから聞きますね。エマちゃんはどうしてます?」


「それがこの村は実は……というお話もあとにしましょうか。戦えないみなさんは一つの家に固まってもらってそこに魔物が入れないように封印魔法をかけましたのでご安心を」


「さすがです。ということは村全体にも勝手にかけちゃっていいってことですよね?」


「はい。みなさん非常に協力的で騎士たちとは大違いですよ! あの騎士たちなんて」


「ヒューゴさん、あとでゆっくりお聞きしますから」


「あ、すみません……ではお願いします」


 相当イライラしてそうだな……。


「ピィ!」


「あ、エク! ちょうど良かった!」


 呼びに行ってもらう手間が省けた。


「じゃあみんなでまずミニ大樹の柵を埋めてきてくれる? 魔道柱も村の四方と中心に埋めるからその分の穴も掘ってきてね」


「「「ピィ!」」」


 三匹は村の入り口と思われる方向に走っていった。


「ヒューゴさんはシモンさんたちを安全な場所へ誘導してください」


「わかりました。すぐ戻ってきますから、その間はゲンさん頼みましたよ」


「ゴ」


 完全に守られちゃってるね……。


 それからゲンさんとヒューゴさんといっしょに魔道柱を埋めて周った。


 ゲンさんは私を肩に乗せながらも、右手に持った斧で敵をなぎ払い、さらに足で蹴り飛ばしたりもしていた。

 ワイルドボアだろうが一撃だった。

 ほとんどブルースライムだったけどね。

 私は振り落とされないように掴まってるので精一杯。


 そしてこの村を一周してみてわかったことがある。

 この村、凄く小さい……。

 ソボク村よりも。


 建物の数も少なく、ほとんどはボロボロの状態。

 ジェマさんの事前情報によると村民は二百人ってことだったけど、そんなに住んでるわけがない。

 もしかしてみんな死んじゃったのかな……。


 そういやさっきシモンさんが屍村って呼ばれる理由がわかったとか言いかけてたよね?


 その前に封印魔法か。

 これかなり魔力使うんだよね~。

 まぁ範囲は狭いからまだマシか。


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