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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十章 帝国大戦乱
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第二百六十話 ようやく出航

 結局一時間もロスしちゃったじゃない……。

 あとでヒューゴさんにグチグチ言ってやろうかな。


「メルとマドでヨハンさん探してきて。この港のどこかにいるはずだから。ヨハンさんってわかる? マルセールの魚屋さんの息子さんのほう」


「「ピィ!」」


 メルとマドはバラバラに走っていった。


 港ってこんなに広いのか~。

 今は時間的にあまり人がいないみたいだけど、朝は凄い活気なんだよね?


「ピィ!」


 マドが見つけたみたい。


 マドの後ろをついていくと、魚屋さんに着いた。


「あ、ララちゃん! 待ってたよ!」


「ヨハンさん、こんなところにいて待ってたって言われても探すのに時間がかかるじゃないですか」


「え、ごめん……。久しぶりに市場に来たから楽しくなっちゃってさ! あ、ここがウチから魔物を卸してる魚屋だよ!」


 へぇ~。

 確かにアジジやサババがあるみたいね。

 というか高っ!

 マルセールで売ってるやつよりもだいぶ高いじゃない!

 輸送費による上乗せってこんなに高いんだ……。


 ん?

 ということはこの魚屋さんがきっかけでヤマさんが魔工ダンジョンに入ったのか。

 結果的に水晶玉ももらえたし、そこだけは感謝しないとね。


「え!? 大樹のダンジョンの総支配人!?」


 ヨハンさんから私を紹介されたお店のおじさんがビックリしてる。

 そんなに大きな声で言うのやめてよね。

 いつぞやのお兄みたいに、変な人たちから狙われたりするでしょ。


「ピィ!」


「痛っ! ……あ、ララちゃんごめん。おじさん、あまり人には言わないでください」


 メルがヨハンさんの足を叩いて怒ってくれた。


 そのあとは声を抑えながらも、流通量をもっと増やしてくれないかというお願いをされた。

 適当に笑って誤魔化しておいたけど、お兄はいつもマルセールの色んなお店の人から言われてるんだと思ったら少し可哀想になった。


「ララちゃん、じゃあここに船を出してもらえる?」


 ヨハンさんに言われた場所にレア袋から船を出す。


「おぉ~、本当に凄いねその袋……」


 魚屋さんもカトレア姉からもらった状態保存機能付きのレア袋持ってるくせに。


「メタリン、ここまでありがとう。帰り道気をつけてね」


「キュ!」


 メタリンは走り去っていった。


 ……いや、きっとまだ港にいるよね。

 私たちが出航して見えなくなるまでは待っててくれそうだもん。


 そして船に乗り込んだ。

 ゲンさんもゲンさん専用の入り口から船内に入れたみたい。

 さすがに操縦室には入れないけど。


「早く出向しましょう。みんなが心配しますので」


「あ、うん。でも出発する前に確認することいっぱいあるからもう少し待ってね」


 なんだか頼りないんだよね~ヨハンさん。

 お兄と同い年とは思えない。

 普通の十六歳はこうなのかもしれないけどさ。


「というかヨハンさん、操縦するのは初めてなんですよね?」


「うん。でもマルセールの港からここに来るまでに少しだけ操縦させてもらったから安心して。大きいほうの船だけどさ」


 大丈夫なのかな……。


「ピィ!」


「え? ……大丈夫なの?」


「ピィ!」


 マドのその自信はなに?

 確かに私よりもマドたちのほうがヨハンさんと面識あるだろうけどさ。

 魚屋さんに行ったらいつもおやつくれてるみたいだし。

 この子たち八百屋さんとかお肉屋さんでももらってるからね……。

 可愛いからついあげたくなってしまうんだろうってお兄が言ってた。


「お待たせ! じゃあ出航するよ!」


 すぐに船が動き出した。

 どこかで見てるであろうメタリンに向かって手を振る。


 ……意外とスムーズね。

 心配しなくても良かったみたい。


「ピィ!」


「大丈夫みたいね。メルとマドは周りから魔物が来てないか見ててくれる? この画面で海の中が見れるから」


 防衛……じゃなくて攻撃は私がしっかりしないとね。

 この船のミスリルの槍があれば地下四階級の魔物が来てもこわくないはず。

 船の中だから私が直接襲われることもない。

 大丈夫。

 ここでなら戦える。


「ピィ!」


「え? ……大きいけどあれは普通の魚ね」


「ピィ……」


「謝らなくてもいいの。ウチの地下四階にいるようなヤバそうな魚を見つけたらすぐ教えてね」


「ピィ!」


 この海でもセーフティリングが使えればいいのに。

 ドラシーはいったいどうやって呼吸が可能な空間を実現してるんだろ?


「ララちゃんは魔物使いじゃないのにリスたちの言葉がわかるのかい?」


「いえ。いつもお兄が通訳してくれるときのこの子たちの話し方や表情を知ってるからなんとなくわかるだけです」


「へぇ~。それでも会話ができてるんだから凄いよね。この子たちは賢いし、ウチの魚屋でも立派に働いてくれそうだから一匹欲しいくらいだよ、ははっ」


「「ピィ~」」


「嫌みたいですよ」


「えぇ~、少しは考える素振りしてくれよぉ~」


「……ピィ」


 ふふっ、可愛い。


「よそ見しないでしっかり操縦してくださいね。こんなスピードでどこかにぶつかると怪我だけではすまないでしょうし」


「うん。僕だって少しくらい役に立てるってとこ見せないとね。ロイスさんに認めてもらいたいし」


 お兄のこと尊敬してるのかな?

 でも他人行儀すぎるよね。


「お兄と同い年なんですからロイス君とかロイスでいいんじゃないですか?」


「えぇっ!? 無理だよ! 緊張するし……ロイスさんだって僕のことさん付けで呼んでるし……」


「……ミーノさんやメロさんのことはなんて呼んでるんですか?」


「それはミーノちゃんとメロ君かな。幼馴染だし」


 なんかミーノさんたちと幼馴染って感じが全然しないんだよねぇ。

 学校行くために十歳でパルドに行ったんだっけ?

 そのせいかなぁ。


「なんでわざわざパルドの学校に行ったんですか?」


「なんでって……母さんが行けって言ったからかな」


「でもデイジーさんは学校出てないんですよね?」


「だからだと思うよ。コンプレックスがあったんじゃないかな。父さんはパルド出身だから学校出てるし。スピカさんがパルドにいたってことも大きいと思うけどさ」


 あ、そっか。

 デイジーさんも町長になる前はパルドに住んでたって聞いた気がする。

 王都みたいな都会にただ憧れてただけなんじゃない?


 でもコンプレックスかぁ~。

 ウチの従業員のみんなも学校に行きたいのかな?

 冒険者の人でも学校行ってたって人結構いるしね。


「それより全然魔物に襲われませんね」


「速すぎるからだろうね。さっきの船では何度か襲われてたから」


「防御用の槍は上手く通用しました?」


「タイミングよく出してたこともあって瞬殺だったね。雷魔法使う必要もないくらい。まぁアジジとかサババの初級レベルだったけど」


 サウスモナまではずっと海岸線沿いだからそんな強い魔物はいなさそうだもんね。

 やっぱり海流が強いところに強い魔物がいそう。


 そして出航してから一時間が経過した。


 ……魔物が全然いない。

 画面に映りこむこともない。

 もしかして魔物が逃げてる?

 そりゃこんな大きい物体が遠くから凄いスピードでやってきたら魔物だってこわいよね……。

 新手の魔物とか思われてるのかも。


「あっ! もしかしてあの左に小さく見えてる町がナポリタンですか!?」


「そうみたいだね。面倒になると困るからこれ以上は近付かないけど」


 ベネットがだめだったら次はナポリタンに来ると思うよね。

 ミランニャにまで手を回してそう。

 騎士をそんなことに使うなら魔工ダンジョン討伐でも命じればいいのに。


 ナポリタンの町を大きく迂回し、大陸南の海に差し掛かった。

 ここから東に進めば屍村に到着するはず。


「どうですか? 海になにか変化はあります?」


「う~ん、やっぱり少し海流が強くなったね。……でもこの船には関係ないみたいだ。スクリューの威力のほうが上だね」


 だってカトレア姉の魔法付与があるんだから当然じゃん。

 時間があればもっといい船を作れたんだろうけどね。


 というかここらへん深っ!

 陸地にも結構近いのに底が真っ暗じゃん……。


「それより左の陸地を見なよ。崖の上」


「崖の上? ……あ、魔瘴……」


「あの魔瘴が海まで拡がってきたりするのかな? そうすると海の魔物が増えたりするのかも」


「その可能性はありますね。そうなると船も使えなくなりますね」


「……まだ知らないような魚の魔物が出現したりするかも」


「……もしかして楽しみにしてます?」


「えっ!? そんなことないよ! ……ごめん、本当は少し興味が……」


 この人、やっぱりただの魚オタクだ……。


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