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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十章 帝国大戦乱
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第二百五十九話 サウスモナの町

 あっという間にサウスモナへ着いちゃった。

 やっぱりメタリンは速い。


「メタリン、ゲンさんの中に隠れててね」


「キュ!」


 メタリンはゲンさんの鎧の中に入った。


 サウスモナには初めて来たけど、マルセールより明らかに栄えてるみたい。

 ボワールの町もこんな感じなのかな?

 でも王都パルドはもっと凄いんだろうな~。


 ……見られてるよね?


 ゲンさんみたいに大きくて全身鎧装備の人間なんてまずいないから仕方ないか。


「ゲンさん、気にしなくていいからね」


「ゴ」


 いくら人間よりだいぶ大きいとはいえ、まさか私みたいな女の子と魔物がいっしょに歩いてるなんて思わないよね。


「あ、冒険者ギルドだ。そういやもうベンジーさん帰ってるかな? 朝の馬車に乗ってれば昼くらいには着いてるはずだよね?」


「ゴゴ」


 ……一人で喋ってるみたい。

 まぁいいや。


「ちょっと中覘いてくるからここで待ってて。メルだけいっしょに来て」


「ピィ!」


 可愛い……。

 ホント魔物使いってズルいよね。


「中はガラガラみたい。時間帯が悪いのかな」


「ピィ~」


 あ、受付の人っぽいお姉さんがこっちに来る。


「お嬢ちゃんどうしたの? ここはお嬢ちゃんみたいな可愛い子が来るところじゃないのよ? お母さんとはぐれちゃった?」


 むっ?

 バカにされてる?

 いくらなんでもそんな子供には見えないでしょ!


「いえ、冒険者ギルドに用があって来たんです!」


「え? もしかしてどなたか職員のお子様かな?」


「違います! ベンジーさんに用があって来たんですけど!」


「ベンジー君? 妹さんがいるとは聞いたことなかったわね~」


「妹だったらさんなんて付けないですよね!?」


「あ、確かに。あなた頭いいわねぇ~」


「で、ベンジーさんはいるんですか? いたら呼んでほしいんですけど!」


「いるけど今大事な会議中なのよねぇ~」


「そうですか、ならいいです。ありがとうございました」


「え、一応聞いてみるからちょっとだけ待っててもらえる? お名前を聞いてもいいかしら?」


「大樹のダンジョンのララって伝えてください。急ぎって言ってもらえると助かります」


「……大樹のダンジョン? ……ララ? ……少々お待ちくださいませ! あ、そちらにおかけになってお待ちください!」


 今までのんびりしてたのになぜかお姉さんは走っていった……。


 あの反応はもしかして私のこと知ってるのかな?


 すぐに奥からベンジーさんが走ってくるのが見えた。


「ララちゃん! どうしたんだ!?」


「ベンジーさん、今朝ぶりですね」


「あぁ、今朝ぶり! ってそんなことよりなにがあった!? 一人か!? あ、リスがいっしょじゃないか! こいつはえぇっと……すまん、見分けがつかん」


「ピィ!」


「ベンジーさん、少し落ち着いてください」


「あ、あぁそうだな。もしかして船のことか? 俺も昼に帰ってくるなり噂を聞いたもんですぐに港まで行ってきたんだよ。そしたら大きいほうの船がとまってるじゃないか」


 噂になってるんだ。

 まぁあんなに大きい旅客船も珍しいだろうしね。

 それにミスリルだし。


「あの船はもうとっくに出向したはずですよ」


「えっ!? 俺がヴァルトさんに話を聞いたときはまだしばらく待機かもって言ってたのに!」


「じゃあどんな状況かご存じなんですね?」


「先に行った船が入国拒否されたってやつだろ? 本当に帝国の皇帝とやらは酷いな」


 そこまで知ってるんだ。

 それなら話は早い。

 そんなにのんびりしてる時間もないからざっと話そっか。


「……というわけで今から帝国に向かうんです」


「…………屍村か。でもよくそんな決断できるな……」


「お兄ですから。ご丁寧に騎士が町の人たちを誘導してくれると思いますし」


「そこだよな……逆手に取るところが凄い。ベネットやナポリタンに伝わるころには今より魔瘴も拡がってて逃げるという選択肢も生まれてるだろうし」


「はい。屍村がどういうところか全くわかってないのが少し不安ですけどね」


「そこは賭けなんだろうな。でもどんな状況だったとしてもララちゃんが行けば大丈夫って思ってるんだろう」


 お兄、強引すぎるんだもん。

 よく考えたら封印魔法の話だって少しおかしいよね。

 結界の部分解除って話だけで私を帝国に行かせようとしたんだよ?

 そりゃそんな細かいことエマちゃんにはまだ無理かもしれないけどさ。

 でも別にそこまで重要なことでもないよね。

 それに屍村に騎士が来るころにはさすがに騎士もヤバいと思ってるはずだからそう手荒なことはしないだろうしさ。


 あ~、なんだかお兄に騙された気分。

 やっぱり帰ろっかなぁ~。


「ララちゃん……怒りが顔に出てるぞ……」


「え、少しお兄にイラっとしたもんで」


「え……いや、管理人さんもララちゃんにしか任せられないと思ったんだろうからさ……」


「え~~。ベンジーさんはお兄の味方するんですか?」


「味方とかそんなんじゃないけどさ……」


「ふ~ん。ところでさっきからみんなこっちを見てますけど、会議はいいんですか?」


「え? ……みんなララちゃんが来てるって聞いたから一目見たいんだと思う。ごめんな」


「別に見るくらいはいいですけどね」


 なんだかお兄の気持ちが少しわかったかも。

 お兄は去年くらいからマルセールに行くだけでも人目を気にするようになったって言ってたもんね。


「じゃあギルドの前通ったついでに一応報告しておこうと思っただけなんでもう行きますね」


「あぁ、わざわざありがとな。……あ、港まで送るよ。本当はいっしょに帝国まで行きたいところだけど仕事があるからさ」


「ここでいいですよ。さっき地図見たんで港の場所わかりますし、リスたちがいますから」


「リスたち? まだほかにもいたのか、それなら安心だ」


「はい、護衛は完璧です。ゲンさんもいますしね」


「ゲンさん!? ゲンさんがここに来てるのか!?」


「え? そこの入り口の前にいますけど?」


 ベンジーさんは走って入り口を出ていった……。

 ゲンさんを発見したのか、挨拶? みたいな会話をしてる。

 そしてまた走って戻ってきた。

 なぜかマドもついてきたみたい。


「ララちゃん! もしかしてこのリス二匹はメルとマドか!?」


「よくわかりましたね……」


「やっぱりそうか! 管理人さんの魔道化作業のメンバーだな!」


「え、詳しいですね……」


 だからってそこまで興奮するものなの?

 今朝まで会ってたのに……。

 というかベンジーさんなら少し考えれば今この大陸にいるのはその二匹ってわかるよね?

 それにみんな服の色が違うんだからね。


「お願いがある! 急いでるところ悪いが、数十分だけ手伝ってくれないか!?」


「手伝うってなにをですか? これでも本当に急いでるんですよ?」


「そこをなんとか! すぐ終わるからさ!」


「……用件は?」


「魔道化だよ! 実は管理人さんとカトレアさんたちに頼み込んで魔道化のための素材をわけてもらってきてるんだ!」


「え……」


 お兄たちなに考えてるんだろ……。

 サウスモナの魔道化なんて話まだ一言も出てなかったよね?

 なんで私に相談しないの?


「あ、魔道化と言っても魔道列車のための魔道化じゃないんだ! 町を封印魔法で守るための準備をする魔道化だ! 木の柵や魔道柱を町の周りに埋め、魔道線を張ったりして最後に封印魔法をかけるってやつ! 魔道プレートを埋めるわけじゃない! だから魔道化じゃなくて半魔道化ってやつか!?」


「あ、そっちですか。……なるほど。その前にベンジーさん、その魔道化セット、凄くお高いっていうの知っててもらってきてるんですよね? 」


「え……もちろん……でも管理人さんは町を守るためならって言って……」


「ベンジーさん? お兄が断るわけないってわかってますよね?」


「え……でも……」


 もぉっ、お兄は甘すぎるの!

 これだけ大きな町の半魔道化セットなんてどれだけ魔力を使うと思ってるのよ。


「あの……ララさん、話は聞かせていただきました……」


 誰このおじさん?

 ……もしかしてギルド長ってやつかな?


「実は今まさにその魔道化による封印結界の話をしておりましたもので……」


「会議でですか?」


「はい。実は町長にも報告済みなんです」


「へぇ~」


「「……」」


 だからなに?

 ってもしかして私が悪者になってる?

 タダで半魔道化セットをあげて、しかも作業まで私たちがして当たり前だと思ってるの?


「なぁララちゃん? 町長は凄く理解のある人でさ、この件はギルドに一任されることになったんだ。あ、さっきの船にだってさ、町で自由に休憩してくれていいって言ってくれてたんだよ。誰も降りようとしなかったけどな……」


 そんなの町長なら当たり前でしょ。

 ベネットの町というか帝国がおかしいのよ。


「町長は王国の方針についても否定的なんだよ。昨日急に船を出すなと言われて怒ってたみたいだし……魔工ダンジョンが出現してるのに助けに行ったらいけないのかってさ」


 ふ~ん。

 でもそれって普通だからね?

 王様たちがおかしいのよ。

 それに助けに行くのは町長じゃないから簡単に言えるんじゃないの?

 自分が危険な目にあうわけじゃないもんね。


「さっき俺も会ってきたが、移住者の受け入れ態勢も整えるって言ってるんだ。必要なら船も出すってさ。つまりマルセールと同じなんだよ。でも大きく違うのは大樹のダンジョンがないってことだな、ははっ」


 笑うところじゃないでしょ。

 移住者を受け入れるってことは評価するけどさ。


「でもそのためにはまず町を守らないといけない。だから半魔道化は絶対に必要なことなんだよ。もちろんそのうち魔道列車も開通してほしいけどな」


 町を守るとかそんなこと言われたらお兄じゃなくても断れないじゃない。


「……わかりましたよ。でもビール村とかの魔道化作業は延期になってるんですからね? それに国からは王都をまず封印魔法で守れって命令されてるんですからね? 無視することにしましたけど」


「「え……」」


「だからたまたま町に来たついでに魔物が勝手に作業します。でも魔道柱だけですよ? 魔道線や木の柵は自分たちでやってください」


「本当か!? ありがとう! 魔道柱さえ立ててくれたらあとは楽勝だ! あ、でも魔道線を張るのは大変か……」


「もぉ~。じゃあそれもメルとマドにやってもらいますから」


「おお!? そうと決まれば早くやろう! 場所はもう決めてあるんだ!」


「時間がないから町中をメタリン馬車で移動しますからね」


 なんでこんなことになったんだろ……。


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