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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十章 帝国大戦乱

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第二百五十六話 上陸不可

 ピピから連絡が来たので大樹のダンジョンに帰ることにした。

 なんでも急ぎの報告があるとのこと。


「チュリ! (おかえりなさい!)」


「あぁ、お疲れ。どうだった?」


「チュリ(とりあえず家に入ってください。いや、準備小屋のほうがいいかもしれません。なにかお飲み物も)」


 順調ではなさそうだな……。


 俺、ララ、カトレア、マリン、セバスさん、ジェマはそのまま準備小屋に移動する。

 モニカちゃんにはミランダさんを呼びに行ってもらった。

 今日はスピカさんが魚屋に手伝いに行ってるので、ミランダさんは武器・防具職人たちのところにいるそうだ。

 魔道具に興味津々みたいだからな。


 というかミランダさんはまだ王都に帰らなくていいのか?

 ベンジーさんは今朝船を見送ったあとサウスモナに帰っていったのに。

 もしかしてシモンさんやヴァルトさんといっしょに帰るつもりなのかな。


 そしてモニカちゃんとミランダさんが合流するのを待ってピピが話し始めた。


「チュリ(高速船のほうはベネットに予定通り三時間で到着しました。あの船速すぎですよ……)」


「へぇ~、魔物に襲われたりもしなかったのか?」


「チュリ(上空から見る感じちょこちょこ寄ってきてたみたいですけど高速船には全く相手にされてませんでしたね。大型船のほうは上手く撃退していたようで、船の進行の妨げにはなっていませんでした)」


 高速船はやはり速いから魔物が近寄れないのか?

 それとも威嚇攻撃でもしてたんだろうか。

 大型船の防御型というのは上手く機能したみたいだな。


 というか高速船と大型船って呼び方だと認識しやすいな、さすがピピ。


「海の魔物対策は上手くいった、時間も正確に着いたとなるとベネットでいったいなにが起きたんだ?」


 みんなへの通訳も兼ねながらピピに質問する。


「……チュリ(入国を拒否されました)」


「入国拒否だと?」


「「「「えっ!?」」」」


「チュリリ(港に着くと同時に帝都の騎士が大勢寄ってきたんです。ヒューゴさんが交渉にあたりましたが、向こうは皇帝の意向により王国の冒険者は帝国内に立ち入ることを禁ずるとの一点張りで……)」


「皇帝の意向……ゾーナさんが帝都で言われたことか。まさかベネットの港にまで騎士を寄こしてるとはな」


 町同士の関係性は薄いから大丈夫だろうって話だったんだが。


「チュリ(交渉役のヒューゴさんでさえ船から一歩も降りられなかったんです)」


「一歩も? 誰も降りてないのか?」


「チュリ(いえ、結果的にお二人だけは町に入ることができました)」


「二人?」


「……チュリ(ユウナちゃんとシャルルちゃんです)」


「そうか、ユウナとシャルルは入れたのか」


「「「「えっ!?」」」」


「チュリ(ユウナちゃんが騎士にユウシャ村のことを少し話したらすんなり入れてくれてましたね。シャルルちゃんはユウナちゃんの姉という設定にしてました)」


 ということは帝国民なら入れるってことか?

 それとも女性二人だから冒険者と思われなかったのか?

 もしくはユウシャ村がヤバい村だからそこの人間を相手にしたらマズいと思ったのかも……。


「お兄! もう少し詳しく教えてよ!」


「え? あぁ……」


 王国の冒険者の入国を拒否したということは魔工ダンジョンと戦うことを決めたって意味か?

 そんなに冒険者や騎士たちの実力に自信があるのかな。

 それならどうやって修行してるかをぜひ教えて欲しい。


 ……って今はそれどころじゃない。


 王国の助けがいらないってことは逃げることもしないってことだよな?

 逃げるのが目的でもうベネットまで逃げてきた人たちも少しはいるよな?

 騎士も俺たちを拒否してる暇があるんなら町の外で戦ってきたらいいのに。


 ……それをせずにわざわざ港まで来てるんだから俺たちが一番の敵と思われてるってことか。


「シルバたちはどうしたの!?」


「チュリ(ペットとして普通に付いていきました)」


「……」


「なんて!?」


「四匹とも可愛いペットのフリしていっしょに入れたって」


「「「「え……」」」」


 犬と牛とリスだからな。

 しかもみんな服なんて着ちゃって可愛いし。

 リスなんか帽子まで被ってるんだぞ。

 さすがにシルバとウェルダンはミスリル装備を外したよな?


「じゃあユウナちゃんたちはユウシャ村に向かってるのね?」


「……あぁ。順調なら夜には着くだろうってさ」


「船はどうしたの?」


「……高速船はリーヌに移動してそこで待機することにしたんだって。大型船はまだ着いてなかったから少し引き返してサウスモナで待機してるはずだってさ。そうするようにヒューゴさんが手紙を書いたらしい」


「ふ~ん。さすがヒューゴさんだね。……高速魔船と大型魔船って呼ばない?」


「「「「……」」」」


 今そこはどうでも良くないか……。

 ってみんなが思ったことだろう。


 でもやはり魔船って響きはいいな。

 魔船と魔戦でややこしくなりそうだけど。


「待機する以外にどんな案が出てた?」


「チュリ(どこかベネット近くの岸にむりやり上陸するとか、ナポリタンの町に変更するとかって感じですかね。でも人々が船に乗れないんじゃないかとか、ナポリタンの町もベネットと同じかもしれないといった意見もあって結論は出ませんでした)」


「ふむ。ならヒューゴさんたちは俺たち待ちってことでいいか?」


「チュリ(はい。指示があるまで勝手な動きはしないと言ってました。船からも降りないと)」


 ベネットの近くに港を作るか?

 でもそんなことしてるのがバレたら今度こそ攻撃されそうだな……。


 ナポリタンの町となると大陸最西部で逃げ場所としては一番大変な場所だからなぁ。

 ウチからは一番近い町なんだけどさ。


 ホワイトボードに貼られた地図を見ながら考えてみる。

 ピピはこのために準備小屋に案内したのか。


 …………今まで一度も話に出てきたことはないがそこしかないよな。


「チュリ(今ロイス君が見てる場所、ユウナちゃんがベネットの町中を歩いてるとき、そこならもしかしたら大丈夫かもなのですと言ってました)」


「ふむ。やはりそこか」


「そこってどこよ!?」


「ベネットから見て南南東、帝都から見て南西の海沿いにある村」


「「「「村?」」」」


 みんなの視線が地図の小さな村に集中する。

 地図の扱いでさえもかなり小さい。

 この前ジェマが説明してくれたときにもただ村があるとしか説明されなかった村だ。


「そこに変更するしかないか」


「大丈夫なの!?」


「知らん。ユウナもそこなら騎士が立ち入ってない可能性があるって言ってるらしい」


「港はあるの?」


 そういやその村から船が出てるって話は聞かなかったな。

 ユウシャ村と同じで海流が激しい地帯なのかもしれない。


「ジェマ、どうなんだ? 船でユウシャ村まで行くのは厳しくてもそこまでなら行けそうか?」


「さぁ……なにせナポリタンより南を通っての船は出ていませんから情報が少なくて……」


 ピピに見に行ってもらうのがいいんだろうがそこまで時間がないか。


 ここで一度情報を整理しよう。


「とりあえずベネットの町のことは白紙に戻していいよな?」


「「異議なし!」」


 いつも通りララとマリンだけが返事をし、他は頷く。


「さすがにミランニャは遠いからなしだ。となるとナポリタンの町か、ベネット南の村……そういえばなんて名前の村だ? 地図にも書いてないよな」


「その村に正式な名前はありません。帝国内でも見捨てられた村ですので」


「見捨てられた村?」


「はい。行き場を失った人々が行く村らしいです」


「「「「え……」」」」


「だから帝国内ではこう呼ばれているそうです」


「「「「……」」」」


「……屍村、と」


「「「「……」」」」


 しかばね?

 しかばねってあの屍?

 村の中は墓ばかりだったりするのか?


 というかめちゃくちゃこわい村だった……。

 そんな村に行こうとしてたなんてとんでもない。


「……ベネットの町で騎士たちを説得するか、ナポリタンの町に変更って線で考えようか」


「「異議なし……」」


 ララとマリンは元気なく答えた。


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