表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十章 帝国大戦乱
251/742

第二百五十一話 船完成

 俺も早く船を見に行きたいところではあったが、馬車の準備をしなくてはいけないことを思い出した。

 と言っても馬車はもう昨日に増産してあるから、その馬車を引く馬の準備だ。


 そして物資階層の牧場エリアにやってきた。


 そこではアグネスとアグノラがたくさんの魔物のお世話をしていた。

 その魔物の中に混じって普通の馬がいる。


「明日40頭くらい必要なんだがいけるか?」


「大丈夫~。みんな強い子に育ってるよ~」


「食べ物が美味しいせいか村にいたころよりも筋肉の付き方がいいね~」


 確かにどの馬も強そうだ。

 言うことを聞いてくれるのかどうかが心配になるくらいだ……。


 この馬たちは二か月ほど前にボクチク村から譲り受けることになった。

 魔道プレートの作業で村を訪れたとき、牧場に馬がたくさんいるのを見つけたんだ。

 最初は馬車用の馬を育てているのかと思ってたが、なんと食用のために育てていると言うではないか。

 そんなのもったいないと思ってしまった俺は後日、ダンジョン産のお肉をたくさん持っていき、馬と物々交換をした。

 どの馬も三歳前後と、一番脂がのってくるころだそうだ。


 魔道列車ができたおかげでこの馬たちの活躍の場が来ない可能性もあった。

 だがこんなに早く出番が来るとはな。


「ミスリル馬車も引けるんだよな?」


「一頭だと重そうだけど二頭でならスピードもそこそこ出るよ~」


「トイレ馬車をくっ付けても大丈夫だと思うよ~」


「よし、正確な数はあとで伝えるからな」


 やはり二人にはこの仕事のほうが合ってるな。


 この二人にやってもらっていた料理保存エリアの仕事は完全にウサギに任せることになった。

 以前から皿に料理の種類毎にタグを付けて、それぞれの場所に転移させる方法については考えていたんだ。

 もうウチではお馴染みの方法だし。


 だがそれをすると厨房側が混乱すると思ってたから実行しなかった。

 でもこの二人の負担を減らすためならばと、結局は厨房側が折れてくれる形になった。


 厨房側も皿の保管場所を工夫することで間違いを極力減らそうと努力もしてくれてる。

 もし間違えても保存エリア担当のウサギがすぐに厨房に転送し返してくれるんだけどな。

 似たような料理だと区別がつかないだろうがそれは仕方ない。


 厨房やウサギのおかげで、二人は牧場で魔物たちのお世話に専念することができたってわけだ。


「明日船でいっしょに行ってくれるか?」


「うん、船の中で暴れたら危ないしね~」


「わ~い、船乗りた~い」


「じゃあその船を見に行こうか」


 三人でお菓子を食べながら錬金術エリアに移動する。


 だが船を作ってた場所には誰もいないようだ。

 船もないということは海でテスト中か?


 ……ん?

 昨日作ったドックとかいう船を置く場所がもう一つ増えてる。

 まさかもう二隻目を作ってるのか?


 すぐ戻ってくるだろうから座って待つことにした。


 よく見るとそこら中に工具やらミスリルやらが散らかっている。

 午後からはアイリスやエルルも手伝ってたはずだ。

 ウチの船は装甲が堅いだけじゃなく攻撃手段も搭載するからな。


 それにしてもこの二人、いつものことながらよく食べるな~。

 従業員は自動販売魔道具で買える料理やお菓子も無料だが、そうじゃなかったら食費はいったいいくらかかるんだろう。


「給料はなにに使ってるんだ?」


「なんにも~。ここに住んでたらなにも困ることないしね~」


「服もフランちゃんたちがくれるの~」


 フランたち防具職人組はこの二人を可愛がってるからな……。

 双子コーデがどうこう言って、売りもしない服をよく作ってる。


「バイキングに不満はないか? 食べたい料理とかあったら言っていいんだぞ?」


「ここの料理に不満なんてあるはずないよ~」


「食べたい物が多すぎて毎食悩んじゃうよ~」


 そういや今まで食事の時間には保存エリアでの仕事があったせいか、この二人とはあまりいっしょに食事をしたことがないな。


「休みも全然取ってないだろ? 本当に大丈夫なのか?」


「いつも遊ばせてもらってるようなもんだから全然いいよ~」


「イメージとしてはロイス君が自分の魔物と遊んでるだけでお給料もらえるような感じだからね~」


 なるほど。

 ってそんな簡単な仕事には見えないんだけどな……。

 ボクチク村の人たちが聞いたらどう思うんだろうか。


 まぁこの二人にしたらこれが天職ってことなんだろうな。


「うぉっ! ……戻ってきたか」


 ドックに急に船が現れた。


 ……外観からして凄いな。

 というか昨日の船よりだいぶ大きい。


「こんな船初めて見た~」


「ミスリルいっぱいだね~」


 いや、ミスリルもそうなんだが、やっぱり大きすぎない?

 何人乗れるんだ……。


 呆気に取られてると、船からララ、カトレア、ユウナ、シャルル、アイリス、ヴァルトさんが降りてきた。


「あ、お兄! 中凄いんだよ!」


 中も凄いのか……。

 まぁウチの錬金術師が絡んだ時点で凄い船が出来上がるような予感はしてたけどさ。


 お?

 どうやらもう一隻の船も戻ってきたようだ。


 ……おい?

 こっちの船のほうが大きくないか……。


 そしてマリン、モニカちゃん、エルル、スピカさん、ミランダさん、シモンさんが降りてくる。


 ララ、ユウナ、シャルルの三人以外は船の外回りの確認に入ったようだ。

 三人は俺たちのほうへ歩いてくる。


「今私たちが乗ってた船は攻撃特化にしてみたんだって!」


「攻撃特化?」


「うん! 船の近くにいる魔物をこっちからミスリルの槍で攻撃するの! 水中であろうがボタン一つで槍が凄い勢いで飛んでいくんだよ! 槍には魔道線をくっ付けてあるからまたボタンを押せば魔力で巻き取って戻ってくるみたい! だから魔力は使うけどね!」


 危ないだろ……。

 もし水中に人がいたり、近くに船がいたりしたら大変なことになるぞ……。


「で、あっちの船は?」


「あっちは防御特化ね! 魔物が寄って来そうだったら船の周りにミスリルの槍を大量に出すの! 魔物が船に突っ込んできたら勝手に槍に刺さってくれるってわけ!」


「結構普通なんだな」


「それでも船体に触れてきたら、魔力杖を仕込んであるから雷魔法を船体外側の魔力プレートに流すの! 水の中だと雷魔法がかなり有効みたい!」


 全然普通じゃなかった……。

 まさか船体外側の防御をミスリルの強度に任せるんじゃなくて魔力プレートの雷防御に任せるとは……。


「地上や上空の魔物に対してはどちらの船も仕込んである魔力杖で攻撃ができるよ! あ、でもさっきの船には上空用の槍も装備してあるからね!?」


 最初の船は完全に狩り目的で作ってるだろ……。

 まぁでもこの船なら魔物がいる場所での漁も安全にできそうだ。


「それより肝心の速度と乗船人数はどうなってるんだ?」


「あっ、そっちのほうが凄いよ! 攻撃特化の船は百人しか乗れないけど、ここからベネットまで三時間で行ける計算なんだって!」


「三時間? ……え? ここから? 早すぎないか? さすがに計算がおかしいだろ」


「だから速いから早く着くんだって! 乗ってみなよ!」


 ここからリーヌまでウチの馬車でも六時間くらいかかるんだぞ?

 そこからベネットまでさらに船で二時間だ。

 もちろん待つ時間や休憩時間も余分に考えなければいけない。


 それを三時間で行けるだと?

 とんでもない速度なんじゃないだろうな……。

 魔物のことよりも船同士の事故は絶対避けてくれよ……。


「そこまで言うんなら本当なんだろう。で、防御特化の船は?」


「あっちは五時間はかかるってさ。でもなんと三百人も乗れるの!」


「三百…………そこまで大きくして大丈夫なのか?」


「大丈夫なんじゃない? あっちも結構スピード出してたよ?」


 三時間に比べての五時間だからだいぶ遅く感じるが、ここから五時間て相当早いからな……。


「スクリューにも魔法付与できたのか?」


「みたいだね。というかカトレア姉さ、いつの間にか杖だけじゃなくなんにでも魔法付与できるようになってたみたいだよ」


「ん? でもそれは前からだろ? レア袋に状態保存かけたりしてたじゃないか」


「そういう魔法のことじゃないの! 攻撃魔法と状態保存の性質を同じにしないでよ!」


 そりゃその魔法が違うことくらいはわかるけどさ、細かい性質なんて俺にわかるわけないし。


「杖への魔法付与は入門編みたいなものらしいの! スクリューに使うような魔石に対して攻撃魔法の付与と制御ができるんならもうどんな魔力媒体にだって魔法付与できるってことなんだよ? というか船に魔法杖を仕込みまくりって聞いて魔力源のこと気にならなかった?」


「魔力源?」


 船中に魔力プレートを仕込んでるんだろうから、どこかに魔石とかから魔力を吸収する魔道具を置いてあるんじゃないのか?

 そうするだろうと思って昨日も提案したんだし。


 ……ん?


 よく考えたら魔法杖は今まで魔道士や魔力がある人たち専用だったよな。

 つまり魔力源は魔道士たち本人だ。


 もしかしてその魔力源が魔石でも可能になったということか?

 魔法杖と魔石の連動ができたってことだよな?

 というか昨日の時点ではできる確証はなかったってことか?


 もし成功してなかったら今頃カトレアはめちゃくちゃ落ち込んでたんじゃないだろうか……。

 そもそもスクリューに使ってるただの魔力源としてだけの魔石に魔法付与なんてとんでもないことを言ってたよな俺……。

 成功したからいいものの、なにも考えずに発言してしまったことを反省しないといけないかも……。


 ……ん?


 ということは俺でも杖で魔法が使えるってことだよな?

 しかもどんな魔力媒体にでも魔法付与できるって言ったか?

 もしや魔法剣の実現が可能ってことか?


 それってよく考えなくてもヤバいよな?

 もちろんいい意味でのヤバいだ。


「武器に革命が起きないか?」


「どうだろうね。カトレア姉は初級の攻撃魔法しか使えないからさ。でも魔力がない人でも使えるっていうのは大きいよ! 魔力の使用効率や補充が課題みたいだけどね……」


「いや、それでも革命だろ……。ユウシャ村の人たちみたいにマルセールの住人全員武装ってこともできるはずだし。それにララならもしかして……ってさっきからお前ら二人はなにしてるんだ?」


 ユウナとシャルルは落ち着きなくそこらへんをウロウロしている。


「ペンネはいっしょに来てないのです!?」


「ペンペンよ! シルバ! シルバはどこ行ったの!?」


「ペンちゃんだって! そういやまだ寝てるの?」


 こいつら……名前を付けると別れがつらくなるだろ……。


「海に帰った。ピピによると親らしきペンギンが西の海にいたんだってさ」


「「「え……」」」


 ほら……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=444329247&s
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ