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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十章 帝国大戦乱

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第二百三十七話 帝国民救出方法

 さっきどこまで話してたっけ?

 ……まぁいいや。


「ベンジーさん、サウスモナの左下の大陸にある国々からなにか魔工ダンジョンの情報が入ってきたりしてませんか? もしくは魔瘴が発生して困ってるとか」


「いや、特にそんな話は聞いてないが……」


「そうですか。ジェマ、ボワールの左上の大陸からは? それとラスから船で行けるっていうヤマさんの出身国がある大陸」


「いえ、ボワールの冒険者ギルドにそういう情報が入って来てたらマルセールにもすぐ届くはずです。さすがにラスの情報まではわかりません……」


「そうか。まぁラスにそんな情報があったらパルドにもすぐ伝わるだろうしな。ということは右上の大陸が一番怪しいか」


 みんなの視線が地図の右上に集中する。

 おそらく三番目に大きいであろう大陸だ。


「ララ、今のウチの冒険者なら前の中級レベルの魔工ダンジョンを討伐できるか?」


「可能性はあると思う。でも確証はないかな……。第三階層のグリーンドラゴンくらいならもう大丈夫だろうけど、マグマドラゴン級が相手だと無事にはすまないだろうし」


 みんなが不安そうな顔をする。

 ベンジーさんはグリーンドラゴンと聞いて顔を歪めた。


「了解。カトレア、船って作れたっけ?」


「小型の物であれば一覧にあった気がします」


「小型かぁ~。まぁ小型でもいいけどさ。船の知識はあったりする?」


「いえ……モニカちゃんはどうです?」


「えっ!? 私!? 知らない……でもそういやギルドで船を動かすための魔道具を研究してる部署があったかも……」


「なるほど。どうせ王都に行くんならついでか」


 また出費がかさむなぁ~。


「お兄? マイキーさんたちに説明してる途中じゃなかったの?」


 それはわかってるけどなにを話してたのかを忘れたんだよ……。

 さっきとは少し俺の意見も変わったしさ。


「先にそっちから話すか。改めましてお三方、マーロイ帝国はもう長く持たないと思います」


「「「え……」」」


「おそらく魔王の目的は魔瘴の拡大です。つまり魔工ダンジョンの討伐と魔瘴の浄化を同時にし続けない限りこちらの勝ちはありません。それにそのミランニャから船で行けるという地図右上の大陸、既に大陸中が魔瘴に覆われていてもおかしくありません」


「「「「え……」」」」


 マイキーさんたちだけじゃなく、ウチの者も何人か同じように驚く。


「まぁ推測ですけどね。でもそれが事実かどうか関係なく、帝国の人たちを国外へ避難させるという考えに変わりはありません。現状どう考えても魔王による魔瘴の拡大のほうが早いと思いますし、さっきララが言ったように中級レベルのダンジョンとなると討伐はかなり難しい。帝国に浄化魔法のスペシャリストが何百人もいるんでしたら話は変わるんですけどね」


「「「……」」」


 パルド王国でも十数人しかいないんだろ?

 ウチの回復魔道士たちを入れていいんなら倍以上にはなるだろうけど。

 でもそれじゃダンジョン討伐ができなくなる。


「それに中級ダンジョンを二つ設置できる魔力があるんならもっとレベルの高いダンジョンを一つ作ることだってできたはずです。でもそれをしなかったのは今の魔王にとって魔工ダンジョンは魔瘴を拡大させるためのツールにすぎないからなんです。もちろん自分の魔力を増やすために」


「……お兄? その考えに自信あるの?」


「あぁ。でもそのうち本気のダンジョンをこの国、俺たちの近くに作って来るはずだ。魔王は楽しみたいだけなんだろうからな。正直もう魔王をとめることはできないと思う」


「……だから今は退くのね? いつか魔王を倒すために」


「そうだ。ウチの冒険者たちに強くなってもらうのを待つしかない。今勝ち目のない戦いをして犠牲を出すにはいかないんだ」


 ときには逃げることも必要だと思う。

 例え国を失うことになっても。


「さっきお兄が言ってた少し変更っていうのは?」


「ベネットの町だけを封印魔法で守る。本当はナポリタンの町も守りたいところだが、二つも守ってる余裕がない。それにナポリタンに住む人たちは船でサウスモナや隣の国へ逃げるという選択肢もある。ミランニャは……正直かなり厳しいと思う。おそらく船の出向も不可能になるだろうし」


 ウチで封印魔法が使えるのはユウナとエマの二人だけだ。

 パルドに何人かはいるんだろうが、こんな危ないことを引き受けてくれるとは思わないから期待はしてない。


「……でもベネット以外に住んでる人たちはベネットまで逃げて来れるかな?」


 ララはベネットを封印魔法で守るという意味をわかってくれているようだ。


「もちろん伝達は誰かにやってもらうし、ベネット付近の各町村からの動線沿いはウチの冒険者たちで魔物を討伐したり魔瘴を浄化したりするつもりだ。帝都の人たちは大混乱するだろうな。ミランニャと東にある村の人たちは遠くて大変だろうが無理をしてもらうしかない」


 犠牲なしというのはまず不可能だろう。

 パルド王国に逃げることを嫌がる人たちもいるかもしれない。

 魔瘴がなにかを知らない人たちは家から出なければ大丈夫だと思う人もいるだろうし。


 町や村はマナがある場所に作られてるとは聞くが、さすがに防げないと思う。

 魔道士たちがずっと封印魔法をかけ続けることができたら大丈夫かもしれないが、町から一歩も出れないとなると今度は食料調達が困難になるだろうしな。

 いずれ暴動が起きて内部分裂するのが目に見えてる。


「俺たちも船をいっぱい作る。その船で王国へ逃げてもらおう」


「でも帝国って二十万人くらい人いるんじゃないの?」


 え……そんなにいるのか……。

 さすがにそこまで多いとは思ってなかった……。

 でもパルドの町だけで五十万人いるんだからそれに比べたら少ないか。


「……一度に五十人を乗せるとして四千往復か。百台あったら四十往復ですむな。……ん? 船ってどうやって数えればいいんだ?」


「今単位なんてどうでもいいでしょ……」


「客船などの場合は隻を使います」


 さすがカトレア、物知りだ。


「じゃあ百隻……いや操縦する人がいないか。もう少し乗船人数を増やして十隻くらいならなんとかなるか」


 百人乗れたとしても十隻だと二百往復?

 一日二往復だとしたらそれを百日間も続けるわけか。


「あの……もしかしてマーロイ帝国に住んでる人を全員パルド王国に移住させようとしてます?」


 ん?

 マイキーさんは今更なにを言ってるんだ?

 最初から案の一つとして考えていたからこそ各町から出てる船の運行情報をジェマに聞いてたんじゃないか。

 というか今なんてずっとその話をしてるのに。


「そうですけど、それ以外にいい方法あります? 中級ダンジョンを全部討伐しろとか言わないでくださいね?」


「いえ……まさかそんなスケールの大きな話だとは思ってもみなくて……」


「でも実際には二十万人のほとんどが死ぬことになるかもしれませんよ? 特にミランニャの人たちなんかベネットまで来ようと思ったらそれだけで命がけでしょうし」


「パルドからミランニャまでの船を増やしてもらうことは無理なんでしょうか? 隣の大陸への航路が使えないとするとパルドに逃げるしかないと思うのですが」


「片道九時間ですよ? 往復十八時間でようやく五十人です。それに対してベネットは往復四時間なんです。それにミランニャからも船が出てると知れば、帝都の人たちでミランニャに移動する人も増えるでしょうし。そうなったら封印魔法のかかってないミランニャで船待ちの人が大勢待機することになるんですよ? 町の外からはどんどん魔瘴が迫ってくるのに。危険でしょうがミランニャで船を待ってる時間があればその間にベネットに移動したほうがいいと思うんですが」


「でもお年寄りや子供に長時間の移動は無理ですよ……」


 それを俺に言われてもな。

 帝都の冒険者たちでなんとかみんなを無事にベネットまで連れてくるとか言ってほしいところなんだけど。

 一応三人は帝国の冒険者というより帝国代表としてここに来てるんだからさ。


「今から移動すればまだ魔瘴による被害も少ないでしょう。こちらの準備にはまだ時間がかかりそうですが、俺の魔物に頼んで手紙をすぐにゾーナさんに届けてもらいますから」


「……わかりました。私たちもすぐに戻ろうと思います」


「そうですか。じゃあユウナはエマを連れて明日マイキーさんたちといっしょに帝国に渡ってくれるか? ベネットの封印魔法だけは先にかけておこう。魔物だけを通さない封印で頼むぞ」


 木の柵はすぐに用意できるしな。

 明日午前の船に間に合うようにここを出てもらうか。

 ほかの冒険者たちにはウチの船の改良と増産、操縦員の確保ができ次第向かってもらおう。


 ただし、俺たちがすること全部が無駄なことになるおそれもあるけどな。

 帝国の王様……皇帝って言うんだっけ?

 その人がどんな反応をするかわからないし。

 帝国で有名な勇者様が助言するならまだしも、ゾーナさんたちのような知らない冒険者の言うことを鵜呑みにはしてくれないだろう。


 パルド王国に騙されてると思われても不思議じゃないよな。

 まさか戦争になったりして。

 シャルルに言って王様からも手紙を書いてもらったほうがいいかもしれない。


「私は単独行動するのです」


「よし、頼んだぞ。…………え? 今なんて言った?」


「申し訳ないのですけど、ベネットの町に封印魔法をかけたらそこからは単独行動させてもらうのです」


「なに言ってるんだ? 俺の意見に反対ならそう言ってくれよ?」


「……違うのです。ロイスさんはいつだって正しいのです。さっき言ってたミランニャの人たちのことだって、帝国のことなんだから帝国の住人がもっと行動を起こすべきなのです。ベネットまで船を出してもらえるだけでもありがたいと思わないといけないのです」


「それは……」


 マイキーさんたちは言い返す言葉が見つからないようだ。

 俺が言わなかったことをユウナがはっきり言ってくれたな。


「でもそれならなんで単独行動なんかするんだよ? ほかの町にも封印魔法をかけようとしてるのか?」


「…………帝国の右端にある村……ユウシャ村に行くのです」


「ユウシャ村……気になってたんだがユウシャって勇者のユウシャか?」


「そうなのです。勇者はこの村からしか出ないとも言われてるのです」


「勇者に会いに行くのか? さっき勇者は行方不明って聞いたぞ?」


「……どこにいるのかもわからない勇者たちなんかどうでもいいのです。それにこの危機を救えない勇者なんて勇者じゃないのです。私はただ……私を育ててくれたお爺ちゃんとお婆ちゃんを助けに行きたいのです」


「育ててくれた? ……ユウナはそのユウシャ村出身なのか?」


「はいなのです。今までなにも言わないでごめんなさいなのです……」


 そうか、帝国の出身だったのか。

 お爺ちゃんとお婆ちゃんに育てられたってことは両親はいないのかも。


 家族を助けられるのに助けにいかないなんて選択肢があるわけない。

 もしユウナが行かないと言ったらむりやり行かせてるかもしれない。

 助けたくない理由はなさそうだしな。


「わかった。じゃあユウナはミスリル馬車で向かえ。魔物も何匹か同行させる」


「……ありがとうなのです」


「私も行くわ! ユウナのパーティメンバーは私しかいないんだからね!」


「シャルルちゃん……嬉しいのです」


 こいつが行くと面倒な予感しかしないがまぁ仕方ないか。

 それがパーティだもんな。


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