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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第十章 帝国大戦乱

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第二百三十六話 マーロイ帝国の基礎知識

 昔、マーロイ帝国は四つの国に分かれていたそうだ。

 それぞれの国と国の間はどこも険しい山々と大きな川があり、船でしか往来ができなかったらしい。

 その川に橋を架け、むりやり一つにまとめあげてできたのが今の帝国なんだそうだ。


 地図を見る限り、確かに橋がなかったとしたら別大陸とは言わないまでも国が分かれていても不思議じゃないな。

 横に長い大陸のようだが、険しい山の部分が川だったとしたら四大陸に分かれていたかもしれない。

 というか真ん中は山がなくて完全に大きな川で分断されてるし。


 ん?

 リーヌとベネットってこんなに近いのか。

 地図だとマルセールとソボク村の距離くらいに見える。

 でも船ってどのくらいの速度が出るんだろう?


「帝国の基礎知識はこのくらいにしましょうか」


 ジェマが丁寧に説明してくれた。

 ジェマだけじゃなく錬金術師たちも勉強が得意だからこういう分野には非常に強い。

 だが食べ物に関しては非常にうとい。


「船のルートはリーヌ⇔ベネット間だけなのか?」


「いえ、ベネットより西にあるナポリタンの町⇔サウスモナのルート、それと大陸北東部のミランニャの町⇔王都パルドといったルートもあります。帝都マーロイへは陸路でしか辿り着けません。なのでベネットから東に行くか、ミランニャから南下するしかないということです」


 ナポリタンってあのナポリタン?

 って今はそんなこと聞いてはいけない気がする。


「サウスモナからも行けるのか。船だとどのくらいかかる? 乗船人数は?」


 サウスモナ⇔ナポリタン間は約五時間。

 リーヌ⇔ベネット間は約二時間。

 パルド⇔ミランニャ間は約九時間。


 馬車よりは早い速度のようだ。


「リーヌ⇔ベネット間は一日に二本、ほかの二ルートは一日に一本だけ運行しています。乗船人数は最大五十名ほどだと思います」


 運行数も乗船人数も少ないな。

 あまり需要がないんだろうか。

 物資を運んだりもしてないのかな。


「このサウスモナの左下の大陸、ナポリタンの町からそこへも船が出てるのか?」


「はい。サウスモナからも行けますよ」


 サウスモナってそんなに他国と繋がってたんだな……。


 マルセールの北にあるボワールも左上の大陸と船で往来してるみたいだし、やはりマルセールは凄くいい位置にあるということがよくわかる。


「この北東部の町、えっと、ミランニャか。そこから右上の大陸へも船で行ける?」


「はい。そちらならパルドまでの半分の時間で行くことができます」


 ミランニャの町の南東、帝都マーロイより東に一つ小さな村。

 そしてベネットより南南東にも小さな村が一つ。

 帝国には全部で六つの町村しかないのか。

 どこも結構離れてるから移動に時間がかかるだろうな。


「マイキーさん、魔工ダンジョンの位置を地図に書き込んでもらってもいいですか? 大体でいいので」


「はい。……マーロイ周辺はこんな感じです。そしてベネット周辺は……このあたりでしょうか」


 ん?

 町周辺って言うからもっと町に近いかと思ったらそうではなさそうだな。

 この配置だと町の近くに出現したというよりもまるで…………。


「……よし、帝国の地理もなんとなくわかったし、救援方法を考えていこう。まずは俺の意見から聞いてくれ」


 みんなが緊張した面持ちで俺を見てくる。


「ベネット、ナポリタン、ミランニャの港から帝国の人たちを他国へ避難させよう」


「「「「えっ!?」」」」


「「「「……」」」」


 はっきり言ってこれしかないと思う。


「ダンジョンを討伐してくれるんじゃないんですか!?」


「助けに来てくれるんじゃないんですか!?」


「見殺しにするんですか!?」


 三兄妹に糾弾される。

 ウチの者は誰もなにも言ってこない。

 俺がさっきからジェマに質問しまくってたときからこう言うであろうことを予想してたのかもしれない。

 意外にもベンジーさんもなにも言ってこないようだ。


 というか見殺しって酷くない?

 避難させようって言ってるのに……。


「落ち着いてください。理由はいくつかあります。ふざけてるわけではありませんのでまずは座ってください」


 三兄妹は立ち上がり今にも殴りかかってきそうな勢いで……というところまではいかないが、怒りがこっちまで伝わってくる。


「もちろんご家族やご友人などが心配でしょう。俺もお三方の立場なら全く同じ行動を……いや、同じ行動は取らないと思います」


「「「え……」」」


「話が進みませんのでとりあえず座ってもらえますか?」


「……はい、すみません……」


 どうにか座ってくれたようだ。

 ダンジョン討伐をしてくれるものと思ってこんなところまで来たんだろうから怒る気持ちはわかるんだけどさ。


「最初に出現したダンジョン、あれは帝国のみなさんへの挨拶みたいなものでしょう。あのレベルだと別にゾーナさんたちがいなくても討伐できたと思います。問題はそこから立て続けにダンジョンを作ってきたことです。一つ目を簡単にしておくことで冒険者たちを誘い出そうとする魔王の魂胆に違いありません。それに第一階層が初級ダンジョンだからって最深層まで初級とは限りません」


 魔工ダンジョンのことを知らない冒険者ならすぐに飛びつくだろうからな。


「それに出現してるダンジョンの数が六つじゃない可能性が高いことです。マーロイ周辺には既に中級ダンジョンが二つも出現していますし、まだほかに中級ダンジョンが出現していてもおかしくありません。一つ目の初級ダンジョンレベルだと思って入ると第一階層で死ぬ可能性だって大いにあります」


 勇者なんてのがいる国だからもしかしたらこの国の冒険者より平均して強いのかもしれないが。


「気になるのはダンジョンの出現位置です。ウチの国の場合、冒険者をおびき寄せるためにどれも町や村の近くに出現してたのに、帝国の場合はやけに町から離れてる。まるで冒険者を分散させようとしてるみたいに思ってしまうんです」


 ……いや、違うか。

 冒険者どうこうじゃなく、魔瘴を万遍なく拡げようとしてるって考えたほうが自然かもしれないな。

 魔瘴が拡がると魔王の魔力が増えたりするのか?


 そうだとすると魔瘴を発生させるために魔力を使ってたとしても浄化されない限りはマイナスにはならないってわけだ。

 濃い魔瘴は勝手に土地を侵食してどんどん拡がっていくってドラシーも言ってたし。


 もしかしたら魔王にとって魔工ダンジョンはただの魔瘴発生装置みたいなものなのかもしれない。

 魔瘴がない場所にでも簡単に魔瘴を発生させられるんだから楽だもんな。


 つまり魔王は魔力を増やすためにはダンジョン内での冒険者からの体力・魔力吸収よりも、魔瘴を拡げるのが一番効果的だって考え直した可能性もある。


 となるとこちらも対応方法を根本的に考え直さなければならない。


「ロイス君?」


「……」


 カトレアに声をかけられたが、今は集中したい。


 ……もう一度整理し直すか。


 そもそもこの半年もの間、魔工ダンジョンがこの大陸に出現しなかったのは今のままではウチの冒険者に勝てないと思ったからだよな。


 そして最近になって帝国での連続出現。

 しかも全て魔瘴発生タイプで、さらに二つの中級ダンジョン設置。

 どこかの大陸で魔力を溜めてたと考えたほうがいいよな?


 今も帝国で魔瘴を拡げるために魔力を使い続け、魔工ダンジョンを作り続けるほどの余裕があるとしたら、そのどこかの大陸が丸ごと魔瘴に覆われた可能性も考えないといけないか。


 人口は俺が住むこの大陸が世界で一番多く、次に多いのがマーロイ帝国の大陸。

 それ以外の大陸の人口はもっと少ないんだから冒険者の数もより少なくなるだろう。

 だから俺の中では、魔工ダンジョンができたからといって入る冒険者の数が少なければたいした魔力吸収にはならないわけだからそこまで魔瘴が拡がると思っていなかったこともある。

 魔王だって魔力が少なければダンジョンを作るだけで精一杯で、魔瘴なんかとても発生させられないだろうと思ってたからな。


 よく考えると、最初にドラシーから魔王が復活したと聞いたとき、ドラシーはこれから世界各地で魔瘴の活性化が始まると言っていた。

 だがこの大陸で魔王が発生させた魔瘴は魔道士たちによって全て浄化されたはずだ。

 魔力が全く増えないとなるとほかの方法を考えるのが普通だよな。

 その方法が一旦この大陸からは手を引くということだったのか。


 魔王も最初は魔工ダンジョンを作るのがただ楽しかっただけかもしれない。

 俺の意見も素直に聞いてくれてたりしたからな。

 それにドラシーも、魔王は自分が作り出した魔物と人間が戦うのを見て楽しむとも言っていた。


 楽しむだけじゃ気がすまなくなったのは、やはりあの5月に出現した中級レベルの魔工ダンジョンからか?

 本気で魔瘴を拡げにきてたもんな。


 ……いや、結局は楽しむために今も魔力を溜め続けてるのか。

 俺だって地下四階が攻略されたら地下五階はもっと難易度を上げようと思うもんな。


「ロイス君、そろそろ……」


「……よし、少し変更する」


 魔王のことを考えるよりまずは帝国を救うのが先か。


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