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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第九章 魔道計画
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第二百十話 ユウナとララの関係

 今日は三日連続での隣村訪問の最終日。

 例のごとくメロさんとカトレア、そしてアグネスとアグノラはボクチク村へ出発していった。


 アグネスたちも家族に会えるのが楽しみだろう。

 大家族の末っ子だから兄や姉にも会いたくて仕方ないんじゃないのか?

 ってあの二人に限ってそれはなさそうだな。


 この前の会議のとき、アグネスたちのお父さんも出席してたから当然ここで再会もしてる。

 約二か月振りの再会だったにも関わらず、なんかあっさりしてたらしいぞ。

 お父さんじゃなくてもちろんアグネスたちのほうがな。

 それを見てたミーノはお父さんに同情したくなったそうだ。


「あっ! ユウナちゃん! 新しくパーティメンバー入ったって本当!?」


 ダンジョンの開場には少し早いがティアリスさんが小屋から出てきた。

 今日は久しぶりに俺とユウナの二人で受付をしている。


「冒険者に成りたてのソロの方のお手伝いをしてるだけなのです。前にやってた助っ人業務みたいなものなのです」


「な~んだ。ここ数日間地下二階で採集をしてるところを見たって情報があったからもしかしてと思ったけど違うのかぁ。まぁ今さら初級者を入れたりしないよね」


 ティアリスさんはそれだけで納得したのか、あとは世間話をしてから開場とともにダンジョンに入っていった。


「シャルルが来てもう十日間くらいか? 今まで気付かれなかったのが不思議なくらいだよな」


「さすがのティアリスさんでも地下一階や地下二階のことまでわからないのです。地下四階での戦闘は疲労も半端ないのです」


 ティアリスさんたちは地下四階の第二休憩エリアを目指してる。

 というより今地下四階へ進んでる冒険者のほとんどはそこでとまってると言ってもいい。

 ヒューゴさんたちもベンジーさんがいなくなってからはずっと三人パーティだからなかなか先には進めないようだ。


「どの魔物が厄介なんだ?」


「まずはエビグルマなのです。ララちゃんでも動きが全く読めないって言ってたのです。マグロンとオレンジサモンとブッリは単純に速いのと攻撃が重いのです」


「ふ~ん。俺はみんながここまで足踏みするとは思ってもみなかったんだけどな。まだ誰も出会ってないもっと奥の魔物たちは暇そうにしてるよ」


「地下三階までと魔物の強さが桁違いすぎるのです。だから今はみんな新しい装備を買うためにお金貯めてるのです」


「ミスリル装備か。そういやティアリスさんのローブも新しかったな」


「あれ先週出たばかりの新作なのです。カミラさんの刺繍が好評なのです」


「しかも結構いいやつだよな。お兄さんたちは後回しにされて可哀想だ」


 結局まだミスリルの剣と大剣も買えてないようだからな。

 地下四階ではまだ鋼装備でも通用すると思ってたが、先に進めてないところを見ると厳しいのかもしれない。

 もちろん本人たちが未熟な面もあるだろうが。


「杖職人はどうなってるのです?」


「木工職人って言うらしいぞ。パルドから来てる行商人のオスカルさん知ってるだろ? あの人にミニ大樹の枝を何本か渡したんだけどまだなんの報告もないんだよ。パルドの木工職人たちにコンタクトはとってくれてるはずなんだけどさ。まぁあえて詳しい説明はしないようにお願いはしたけど」


「なるほどなのです。あの木をそこらへんの木と同じと思うような職人じゃ意味がないのです」


「俺は別に木工職人ならどんな人でもいいと思うんだけどな。カトレアがミニ大樹をあまり市場に出すなってうるさいから仕方なくそう言っただけだぞ」


 カトレアとスピカさんはミニ大樹といえど大樹のことになるとやけにうるさくなる。

 そりゃあの二人にとって貴重な実験素材ってことはわかるけどさ。

 今となっては葉っぱだけじゃなく枝も魔力プレートの素材として様々な可能性を秘めてるし。


「今日は新規は来ないかもな。だからもうここはいいぞ」


「じゃあそっちで地下四階の様子を見てるのです」


 ユウナは管理人室内のソファへと素早く移動した。

 そして慣れた手つきで水晶玉を操作し、見たい中級冒険者たちを次々と画面に設定していく。

 やはりほかの冒険者の様子が気になるんだな。


「なぁ、しばらくの間ヒューゴさんパーティに補助魔道士として加入したらどうだ? 短期間でもきっと快く受け入れてくれるぞ?」


「……最低でも一か月間はシャルルちゃんの面倒見るって決めたのです」


 シャルルのことはほっといていいからって言っても聞かないんだろうな。

 なんだかんだ言いながら気にはしているようだ。

 夜のシャルルとシルバの訓練をこっそり覗いたりしてるみたいだし。

 シャルルは気付いてなくてもシルバはすぐに気付くからな。


「そうか。ならシャルルとユウナは一か月後……あと約二十日間か。地下三階の第二休憩エリアまで到達してみるってのはどうだ?」


「え……さすがに無理なのです。せいぜい第一休憩エリアまでだと思うのです」


「まぁ午前の四時間分は大きいからな。なら第一休憩エリアまででいいや。それが達成できなきゃシャルルとジェマはウチから退去な」


「え……責任重大なのです……」


 ユウナがいっしょなんだから最低でもそれくらいの条件は突破しないとな。

 シャルルの成長を見てララもやる気を出してくれるかもしれないし。


「ん? そういや地下二階の休憩エリアでララも仲間になるんだっけ?」


「その話はなくなったのです。ララちゃんはやることいっぱいみたいなのです……」


 もうすぐ実際に到達しそうだからか。

 これは相当重症なようだ。

 一度真剣に話す必要があるな。

 ……カトレアに頼もうか。


「お兄~あのさぁ~、あ……ユウナちゃんもいたんだ」


「「……」」


 ……気まずい。


 このララとユウナの距離感、まるで喧嘩中のようだ。


「どうした?」


「え、うん。木を植えるって話なんだけどさ、そのときに封印魔法もいっしょにかけたらどうかなって思ってさ」


「封印魔法? 魔物が寄ってこないようにってことか?」


「うん。木や魔道プレートにいたずらされるかもしれないしさ。マナが溢れてくれたら問題ないことかもしれないけど」


「そうだな。その封印魔法って人間にも効果あったりするのか? どちらかというと魔物より人間に土を掘り返されないかが心配なんだが。木に魔力が満ちてたらそれこそ枝を切られたりしそうだし。花を取られても嫌だしさ。魔道プレートになにかあったら大変だから常に警戒はしておくつもりだったけど」


「魔物対策のみの封印魔法よりは高度になるけど可能みたい。でもユウナちゃんならできるよね?」


「え……確かにキャロルさんから才能はあるかもって言われたのですけど、魔法までは教わってないのです……。ブルーノさんもキャロルさんも専門外とかで……」


「この本に載ってるこの魔法が役に立つと思うよ。ドラシーが地上の大樹エリアに張ってる結界の元になってる封印魔法らしいからさ」


「その本って……」


 そういうことか。

 ララが地下室で調べてたのは封印魔法についてだったんだな。

 錬金術の本っていうのもこのダンジョンに関する本だったわけだ。

 ドラシーと話してたのはその魔法について詳しく聞いてたからか。


「どうだユウナ? その封印魔法とやらを覚えてみてくれるか?」


「はいなのです! 私に任せるのです!」


 ユウナの元気な声を久しぶりに聞いたな。


「あ、お兄、もしかすると従業員が一人増えることになるかもしれないけどいいよね?」


「従業員? いいけどさ、厨房の人が足りてないのか?」


「ん~とね、この先ユウナちゃんだけに浄化や封印魔法を任せるとなると大変でしょ? 必要なときにはみんな手伝ってくれるだろうけど、ウチにも専門がいたほうがいいと思ってね。あ、ユウナちゃんの役割を奪うんじゃなくて負担を減らすって意味だからね!? ユウナちゃんが魔工ダンジョンに入っちゃったら外が心配でしょ!? 封印魔法だってユウナちゃん一人じゃ大変すぎるからだからね!?」


 ユウナが一瞬悲しい顔をしたが、ララのフォローが早かったおかげでなんとか持ち直したようだ。


 それより浄化魔法と封印魔法の専門って言ったよな?


「どこからそんな人材を引っ張ってくるんだ?」


「エマちゃんってわかるでしょ?」


「エマちゃん? …………あのカトレアの友達の?」


「そう! そのエマちゃん! お兄と同い年でこの四月からここに来た新人冒険者のエマちゃん!」


「……」


「ここしばらく見てたんだけどさ、ここに来てもう二か月経つのに攻撃魔法、回復魔法、補助魔法のどれ一つも使えないなんておかしいと思わない? 魔力はちゃんとあるし、勉強もそれなりにしてるっぽいのにさ。それに魔力量だけならベルちゃんよりも多いのに」


 それを俺に聞くのか……。

 二か月で魔法が使えるようになるんなら……ってシャルルはもう使えてるよな。

 でもシャルルの場合は長い間封印魔法を使い続けてたからかもしれないし。


 ん?

 封印魔法?

 そうだ、シャルルならその封印魔法を簡単に使えたりするんじゃないのか?

 なんとなく勝手にコツが身についてそうだ。


「お兄!? 聞いてる!?」


「え? あぁ、もちろん。で、そのベルちゃんがなんだって?」


「ベルちゃんじゃなくてエマちゃん! 浄化魔法か封印魔法に適性があるかもって思ってね」


「まだ二か月だろ? なのに浄化魔法や封印魔法を専門で学ぶってことは冒険者の道を諦めることになるんじゃないのか?」


「もちろん選ぶのはエマちゃんだよ。でもこのままずっとカトレア姉の魔法杖頼りってわけにもいかないでしょ? それならほかに魔力を活かせる道を探したほうがいいと思うの。もし魔法が全く使えなくてもウチなら魔力を活かせる仕事がいっぱいあるし」


「う~ん、俺としては納得いくまで冒険者を続けてみたほうがいいと思うんだけど。別に魔道士以外の職業もあるんだし」


「私はララちゃんの意見に賛成なのです。エマちゃんは魔法が使いたいのであって、戦士や武闘家になってまで冒険者になりたいわけじゃないのです」


 いや、エマちゃんのそんな事情まで知らないし……。

 魔道士は横の繋がりが広いんだよな~特に女性魔道士。

 新人魔道士が来たらすぐにティアリスさんが話しかけにいくからな。


 というかカトレアのエマちゃん贔屓がバレちゃってるじゃないか。

 あれだけ魔法杖を使ってるのは明らかにおかしいからな。


「でも仮にエマちゃんに封印魔法か浄化魔法の適性があったとして、ウチの従業員になるとしたらその相方のベルちゃんはどうするんだよ? 二人パーティで親友なんだぞ?」


「ベルちゃんは攻撃魔道士として将来性があるからすぐに誰かとパーティ組めるよ」


「むしろベルちゃんのためにもなるのです。いまだに二人パーティなのはきっとエマちゃんに気を遣ってるからなのです」


 ララとユウナはついさっきまで気まずい関係じゃなかったのか?

 なんでこんな急に意気投合してるんだよ。


「じゃあララに任せるから好きにしてくれ。もし本当に従業員になったらユウナがちゃんと魔法教えてやるんだぞ」


 ララのことは心配だが、ユウナが完全に元気になっただけでも良しとしようか。


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