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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第一章 管理人のお仕事
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第二話 人工ダンジョン

「ダンジョンコアってわかる? 聞いたことない?」


「初耳ですね」


 俺は爺ちゃんから聞いたダンジョンのことを頭をフル回転させて思い返してみた。

 だがそれに当たる言葉はなかった。


「はぁ~。どこから説明しようかしら」


「……すみません」


 ダンジョンコアはとても面倒臭そうにしながらも説明はしてくれるようだ。


「まずダンジョンには大きく分けて二種類あってね、一つは魔族や魔物が管理してるダンジョン、もう一つは人間が作り出して人間が管理してるダンジョン。もちろんアタシたちのダンジョンは後者ね。で、その人間が作り出したダンジョンは人工ダンジョンと呼ばれてるの」


「人工ダンジョン?」


「えぇ。人工ダンジョンは人間の魔道士が魔力によって生み出したものなのよ。つまりダンジョンコアであるアタシはただの魔力の結晶体ってわけね」


 ダンジョンコアの説明自体は理解できている。

 だがこのダンジョンが魔力でできているということが実感できずにいた。

 俺が首を傾げていると、隣のララはなにか納得したようにダンジョンコアへ尋ねた。


「このダンジョン全てが魔力でできてるってこと?」


「そうね。ダンジョンを構成している壁やら道であったり魔物までの全てが魔力でできているわ」


「つまり地下に存在していると思っていたダンジョンは魔力による空間にあって、実際には地下にはなにもないってことでいいの?」


「あら、アナタ理解が早いわね」


「となるとダンジョンコアであるあなたがダンジョンの構成を決めてダンジョンを作成しているということだよね?」


「それは少し違うかな。アタシがダンジョンを作成しているのは合ってるけど、構成を考えるのはアタシではないわ」


「……なるほど。今までの話とあなたがこの場に現れたことから推測すると、ダンジョンの構成を決めるのはダンジョン管理人の仕事ってことね」


「さすがね。説明が省けていいわ」


 ……うん、俺も理解したよ。

 さすが我が妹、説明が丁寧でわかりやすい。

 本当に十歳だよね?

 理解していないと思われるのも癪なのでここらで口を開いておこう。


「じゃあダンジョンを作り直すこともできるってことですよね?」


「えぇ、ただしそれ相応の魔力を消費するけどね」


「魔力はコアさんの魔力を使うんですよね?」


「そうだけど、魔力を溜めるのはアナタたちの仕事よ?」」


「「!?」」


 魔力を溜めるのが俺たちの仕事?

 つまり管理人の仕事はダンジョンの構成を決定することであり、それを実行するための魔力を溜めること?


「……すみません、魔力の溜め方について教えていただいてもよろしいでしょうか?」


「それはさすがに説明しないとわからないわよね。まず手っ取り早いのはアタシに直接魔力を吸収させる方法。アナタの魔力をくれてもいいし、魔石をくれてもいいわ」


「なるほど」


「ただそれよりもダンジョンにやってきた冒険者から頂くほうが効率的よ」


「冒険者からですか?」


「このダンジョンに入った冒険者はダンジョンに体力を徐々に吸収されてるのよ」


「「!?」」


「それを魔力に変換してるの。ただこのダンジョンは初心者向けだから吸収量は少なめに設定されてて初心者でも一日程度は潜ってられるでしょうけど。これは人工ダンジョンの常識よ」


「……知りませんでした」


「まぁあまり人が来ないからたいした量は溜まってないけどね」


 そうか、ダンジョンコアが爺ちゃんのことをやる気のない爺さんって言った理由がようやく理解できた。

 冒険者が来ないから魔力が溜まらない。

 つまりなにもしなかった爺ちゃんはダンジョン構成を変更する気がないだけでなく魔力を溜める気すらないと思われても仕方のないことだ。


「それと冒険者を呼ぶメリットは他にもあるのよ」


「なんですか?」


「冒険者は魔物を倒しにくるでしょ? 倒された魔物はどうなると思う?」


「うーん、魔石を残して消滅するでしょうか? あっ、素材はとれるか」


「うん、正しくは倒された魔物は一定時間後に残骸全てをダンジョンに吸収されるの」


「それは魔力を吸収するためってことですか?」


「えぇ、それで吸収された魔物はその魔力……マナって言ったほうがわかりやすいかな? マナの循環によってまたすぐ新たに生み出されるの」


「そんな仕組みになってるんですか」


「それがダンジョン内のマナの活性化につながって結果的に魔力を溜めやすくしているのよ」


 マナとは空気中に存在している瘴気のことだ。

 マナの中でも紫色をした禍々しい瘴気のことを魔瘴とも言う。

 魔物は魔瘴の濃い場所から発生しやすいと言われている。


 つまりここではマナと魔力を上手く利用して魔物を効率よく生み出しているということか。

 合ってるよね?

 うん、そういうことにしておこう。

 ララをチラ見すると、なにか考え込んでいるようで腕を組んで視線は上のほうを向いている。


「ダンジョン側のメリットはわかりましたが、冒険者側のメリットはなんですか? 今の話だとダンジョンに体力を奪われてただデメリットしかないように思えますが」


「それはこの人工ダンジョンの目的が冒険者の育成だからよ」


「育成ですか?」


「えぇ、冒険者たちもアナタが言ったデメリットは理解してここに来てるわ。この条件下で戦うことが自身のレベルアップに繋がるのよ。その上で安定して魔石や素材を得ることができて金策にもつながるでしょ?」


 なるほど、魔物を倒しても少し待てば湧いてくるから確かに経験値稼ぎとしても金策としても安定してるな。


「さらに言えば、危険が少ないことが一番のメリットなのよ」


「危険が少ない? 体力がなにもしないで減っていき魔物も次々湧いてくるのにですか?」


「ここでは階層ごとに出てくる魔物が決まってるのよ。それに各階層に転移魔法陣があるから危なくなったらすぐに戻ってこられるしね」


「出現する魔物も決められるということですか? もしかして数や頻度も?」


「あら、アナタもわかってきたじゃない」


 ダンジョンコアはにっこりと笑う。

 さすがに俺でもある程度のことは理解できてきたさ。

 でも知れば知るほど疑問も生まれてくる。


「……魔物たちのダンジョンはなにを目的に作られているんでしょうか?」


「それは単純に人間を殺すためよ。あとは自分たちが住むための家ってところかしら」


 なるほど、人間にとっても魔物にとっても命がけだ。

 それに比べてこのダンジョンは危険が少なく、育成が目的といった理由も理解できた気がする。


「そのダンジョンは魔力で作ったわけじゃないんですよね?」


「作るのは魔力を使って作るけどダンジョン自体は物理的な物質でできてるわね。わかるかな? ただマナ……この場合は魔瘴? 魔瘴が濃い場所にあることが多いわ。やつらもバカじゃないから自分の有利な条件下で人間を殺そうとしているのよ」


 とここで、しばらく黙っていたララが口を開いた。


「人工ダンジョンは他にもたくさんあるの?」


「うーん、最近の世界の事情はあまり情報が入ってこないせいでわからないことが多いんだけど、そんな簡単に作れるような代物ではないし、仮に作れても管理者になれる人間がきっといないわね。アタシが知る限りこの大陸ではここ以外に存在してるって話聞いたことがないわ」


「じゃあなんでこのダンジョンにはあまり人が来ないの?」


「そりゃあ二階層しかなくてしかも敵も弱いときたら本当に駆け出しの初心者しか来ないでしょ? あとは世界の情勢も関係してるかもね。魔物の数もずいぶん少なくなったし、冒険者の数自体も減ってるのよ」


 まぁ確かに俺なら近くにでもなければ一度も行くことはないだろうなって思ってしまった。

 というか俺は冒険者になりたいなんて思ったことないから近くにあっても行かないか……。

 

「なんでお爺ちゃんは二階層しか作らなかったのかな」


「それは……まぁ理由は色々あるでしょうけど、素質があまりなかったことも関係してるわね」


「素質?」


「そうよ。それに維持するだけなら今の構成が一番楽だもの。その点ではアナタは問題なさそうね」


 ダンジョンコアが話していたララではなく俺を見て言った。


「俺がですか?」


「えぇ、アナタは現在のダンジョン管理人として既に設定することができているし、今のダンジョンを維持できてるから少なくとも最低限の能力は持っていると言えるわね」


「……能力って経営手腕のようなものですか?」


「それももちろん必要なことだけど、アタシが言ってるのはこのダンジョンを運営する上での管理人としての能力のことよ」


 俺には言葉遊びにしか思えなかったが、ララも同じようなものらしく首を傾げていた。


「ダンジョン管理人になるにはなにか条件があって誰でもなれるわけじゃないってこと? 私じゃなれなくてお兄ならなれるってこと?」


「えっ、もしかしてそれがなにかこの流れでわからないの?」


「「……」」


 二人して黙り込んでしまった。

 俺とララで違う素質のようなもの?

 全然わからん。

 ララも同じようで諦めた表情をしている。


「はぁ、期待外れかもしれないわねぇ。まぁいいわ。ダンジョン管理人になるための条件はただ一つよ」


 俺たちは固唾を呑んでダンジョンコアの次の言葉を待った。


「魔物使いであることよ」


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