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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第九章 魔道計画
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第百九十四話 増える住人

 朝七時半過ぎ、王女とジェマさんはメロさんの運転するトロッコでマルセールへと出勤していった。


 ようやく静かになったな。

 よく朝っぱらからあんなにうるさくできるよ。


「このイスの座り心地はどうだ?」


「いいですね。ずっと座っていられそうです」


 今日から管理人のイスを少し豪華な物に変更した。

 頭を支えてくれる高さまで背もたれがあるのはいいな。

 手を置くところが左右に付いてるのもいい。


「大型画面の反響もなかなかだな」


「はい。昨日もでしたが今朝も盛り上がってますね」


 八時前ということもあってダンジョン酒場には多くの人が集まっている。

 その中でも特に後方真ん中の大画面、地下四階の戦闘風景にみんな釘付けのようだ。

 昨日もしくは今朝、地下四階フィールドを初めて見た人も多い。

 海フィールドとは知っていても、まさか海の中の海底フィールドだとは知らなかった人もいるだろうからな。


「いらっしゃいませ。おはようございます」


「おはようございます! あの、初めてなんですけど……」


「当ダンジョンにお越しいただきありがとうございます。新規の方向けの説明会をこのあと八時からそちらの小屋で行いますので、それまでは小屋の中でお待ちいただけますでしょうか」


「はい!」


 新規も毎週十五人ずつくらいは来てくれてる。

 おかげで宿泊者はもうすぐ四百人になるからな。


 最近は冒険者の年齢層が少し上がってきた気がする。

 今来た人もおそらく二十歳前後だと思う。

 大樹のダンジョンが中級者向けでもあると認識されてきたのだろう。


「あ、ティアリスさんが来ましたよ」


「ロイス君! カトレアさん! おは……え?」


「おはようございます。いい天気ですね」


「いやいや、いい天気だけどさ……家、改築したの?」


 やはり気付いたか。

 さすがティアリスさん、と言いたいところだが誰がどう見ても気付くよな。


「だいぶ手狭になってきてましたからね」


「六人も住んでるんだもんね~。ロイス君は私の部屋に住んでも良かったのに」


「男一人なんで肩身も狭いんですよ~。おかげで俺は二階立ち入り禁止になりました」


「さらっと流すわね……。あ、来たみたい、じゃあ行ってくる!」


 宿屋から続々と冒険者たちが出てきた。

 そして既に鍵が開いてるダンジョン入り口へと向かっていく。


 今週もいっぱい魔物を倒してきてくれよ。

 今後のことを考えるともっと魔力の循環をよくしないと困りそうだ。


「じゃあ俺も説明に行ってくるからここは頼んだぞ」


 変わったのはイスだけではなく、この部屋から外へ出るドアの向きも変わった。

 今度は小屋側にあるから出てそのまま真っ直ぐ小屋の中へ入ることができる。


 この時間でもう十四人か。

 本当にありがたいことだ。


「おい、いつまで待たせるんだよ?」


「もう八時過ぎただろ? 俺たちの貴重な時間をどうしてくれるんだ?」


「稼げるって言うからわざわざこんなところまで来てやったのにな」


「俺たち王都では中級冒険者なんだぜ? こんなショボいダンジョンで勝手に定めてる中級者なんかと同じにするなよ?」


「「「「……」」」」


 さっき受付でも思ったが、なかなかに感じが悪い四人だな。

 ほかの冒険者たちがこわがってしまってるじゃないか。

 でも王都の中級冒険者が来てくれるなんて願ってもないことだ。


「それは大変失礼いたしました。では今から説明させていただきますので、お手元の冊子をご覧ください」


「おい? なめてるのかお前?」


「なんで俺たちがこんな初心者みたいなやつらといっしょに説明を聞かなきゃいけないんだよ?」


「さっさとダンジョンに入らせろよ」


「面倒だから一番稼げる階層まで一気に行かせろよ? できるんだろ?」


「「「「……」」」」


 凄い自信だな。


「わかりました。先にご案内いたしましょう。すみませんが、ほかのみなさまはもう少しだけお待ちいただけますか? では四人はこちらに」


 四人を連れ、小屋を出る。


「指輪と採集袋を四つ、カードはなしで。地下三階第二休憩エリアに転移できるように頼む」


「わかりました」


 すぐに指輪と採集袋が出てくる。


「この指輪をはめてください。これがないとダンジョンに入ることができませんので」


「指輪? 面倒だがはめてやるよ」


「姉ちゃん、今日の夜マルセールで遊ぼうぜ?」


「あと三人連れてきてくれよ」


「おい、入場料は払ってやるよ」


 そこはちゃんと払ってくれるんだな。

 別にタダでも良かったんだけど。


「ではこちらへどうぞ」


 歩きながら指輪や採集袋について説明する。

 魔物急襲エリアを抜ければ地下四階だということも説明した。


「初級者がもう何十人も行ってるんなら楽勝だろ」


 そう言って四人は転移していった。

 王都の中級冒険者のお手並みを拝見させてもらおうか。


「みなさん、すみませんでした。ご気分を害されましたよね。お詫びに今日は入場料を無料にさせていただきます。では説明を始めますね」


 そしていつも通り説明を終えた。

 みんなは冒険者カードを作り、指輪と採集袋を受け取ってからまず宿屋に入っていく。


「ロイス君、よく怒りませんでしたね」


「そのうちああいう輩が来ることはずっと想定してたからな。だから爺ちゃんも初級者向けのダンジョンに変更したんだろうし」


「なるほど。そちらの画面の一つにさっきの人たちを設定しましたので座ってゆっくり見ましょう」


 管理人室に新しく設置したソファに腰掛ける。

 この管理人室、昨日までと比べると二倍近くの広さになったからな。

 カウンターからリビング間の幅は変わってないから横に細長くなった感じだ。


 広くなったスペースには少し大きめのソファを置いた。

 ソファの向かいの壁にはこの距離でちょうど見やすいサイズの画面が縦に3列、横に4列の計12台設置されている。


「この画面はどっちの水晶玉でも操作できるのか?」


「はい。この部屋の中であれば映像編集用の水晶玉でも大丈夫です」


「ならメロさんもここで編集したら楽だろうな」


「そうですね。ロイス君がお昼寝する時間帯とはかぶらないと思いますし」


 お昼寝か。


 昨日の改装は二階の拡張がメインだったが、やはり一階も拡張することにした。

 このままではソファのし烈な占有権争いが発生しそうだったからな。

 というわけでリビングはだいぶ広くなり、ソファは二つ増やして六つになった。


 当然ダイニングキッチンも広くなってるわけで、テーブルも十人用の物に変更した。

 最近はバイキング会場で食べることが多くなったものの、たまにララが作ってくれるからな。


 カトレアの元作業部屋で現転移魔法陣部屋は、廊下に出なくてもダイニングキッチンから行けるようにしたんだ。

 何気にこれは楽でいい。


 一年前に拡張した俺の部屋や転移魔法陣部屋、魔物部屋はなにも変更していない。

 今回はリビングやダイニングキッチンをマルセールの町側に拡張した。

 おかげでもうL字の家とは言えなくなっている。


「で、あの冒険者たちは……ん? なにしてるんだ?」


「実際に魔物急襲エリアを見てこわくなったようですね」


「あ、そう……」


 魔物急襲エリアに入ってすらないってことか。

 まぁそんな気はしてたけども。


「ウチの宿屋に泊まるかはわからないが、明日以降も来るのなら二~三日は様子見ようか。ほかの冒険者に悪影響がありそうだったら出ていってもらおう」


「わかりました。ウサちゃんを尾行させておきます」


 冒険者カードを作ってないからこのままじゃ宿屋に宿泊できないし、バイキング会場にも入れないからな。

 というよりウチに宿屋があるのを知らないのかもしれない。

 マルセールがどうたらって言ってたし。


 あ、そういや魔石のレートのことは言ってないな。

 ……ん?

 その前に冒険者カードがないとPの付与ができないじゃないか……。


「カードがない場合、魔石ってどうなるんだっけ?」


「そのまま採集袋に入ります。あの四人はパーティとして認識されていませんので最後に倒した人に入りますが」


「ん? じゃあレートは半分になってないってことだよな?」


「はい。宿屋もバイキングも利用できないんですから別にいいんじゃないですか」


 ……それもそうか。


「でもあとでやっぱり宿泊したいって言ってきたらどうするんだよ?」


「その場合、今日一日分の魔石は得したことになりますが仕方ありません。いきなりカードを作るのに抵抗がある人もいらっしゃるはずですから」


 ユウナも最初はカードを作らなかったもんな。

 でもあの四人の場合、なんかトラブルの予感が……。


「大丈夫ですよ。説明を聞かなかったあの方たちが悪いんです」


「そうだよな。とりあえずは様子見か」


 これからはもっと色んな人が来るだろうし。

 いちいち気にしてられないよな。


「で、ララとユウナは二階の改装中か?」


「はい。トイレも四つにするって言ってました。お風呂は一階と同じのを二室と、シャワー部屋を別に作ってそこからは大浴場に行けるようにするらしいです。あとは洗濯魔道具も二階に二つ置いてましたね」


 トイレも風呂も多すぎだろ……。

 もはや普通の家じゃなくなってるよな……。


「部屋はみんなあれでいいのか?」


「はい。荷物が置けて、あとは寝ることができればそれで構いませんから」


 それならもうみんな宿屋で良かったじゃないか……。

 なぜそんなにここに住みたがるんだろう。


「ロイス君、家族って温かいじゃないですか」


「……そうだな」


 確かに宿屋は一人暮らしって感じがする。

 パーティを組んでたらまた少し感じ方が変わるんだろうけど。


「でも二階だけで八人ってさすがに多くないか?」


「楽しそうでいいじゃないですか。二人もすぐに馴染んでくれますよ」


 二人ってのは王女とジェマさんのことか。


 どうせ二階を拡張するんだからジェマさんにもウチに住んでもらうことにした。

 そのほうが俺たちもうるさい王女の面倒を見ずにすむしな。

 護衛と言ってるくらいだから多少は戦闘の心得もあるんだろう。


「モニカちゃんも最近はずっと入り浸ってたしな」


「ふふっ。ララちゃんとユウナちゃん、それにマリンを見てると楽しいですからね。気持ちはわかりますよ」


 結局モニカちゃんもウチに住むことになった。

 錬金術師で一人だけ仲間外れは可哀想だからな。


「あの……誰かいるか?」


 受付の窓の外から声がした。


 ……あ。


「どうかされましたか?」


「……やっぱりさ、普通にダンジョンに入ることにしてもいいか?」


「久しぶりだから徐々に慣らしていかないとな」


「旅の疲れもあるしな」


「時間はあるから急いで地下四階に行く必要もないしな」


 諦めが早いな……。

 まぁ自分たちの実力がわかってるということでもあるか。


「もちろんですよ。ただし、説明を受けてからにしてもらえますか? 当ダンジョンについて知っておいていただきたいことが山ほどありますので」


 その後、しっかり説明を聞いてくれ、冒険者カードも作ってちゃんと地下一階から入っていった。


「……ララが一人で魔物急襲エリアに入るところを見せても良かったな」


「それはさすがに自信をなくすでしょう。これくらいでちょうどいいんですよ」


 やっぱりこれからは説明を聞いてくれない人は出禁にしよう。


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