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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第一章 管理人のお仕事
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第十九話 セーフティリング

「つまりこちらのHPが0になっても死なないようにするために、最初に体力を10残しておいたわけですね」


「おお!」


「そういうことか!」


「それなら安心だ!」


「凄い!」


 俺は急遽、表を作成し体力ゲージを指しながら説明をしていた。

 するといつもやけに親しげに話しかけてくる女性魔道士が質問してくる。


「でも受けるダメージが残しておいた体力でも足りないほどのダメージだと死んじゃうんじゃないの?」


「素晴らしい質問ありがとうございます。その点につきましてもご安心ください。この指輪は優れものでして、HPが0になる瞬間にかなり強めの魔力防壁を張るように設定してあります。ダメージカットというやつですね。つまり残りHP10の状態で50のダメージを受けたとしても、そのうちの40のダメージ分はカットするようにできています」


「それは凄いね!」


「おお!」


「安心だ!」


「凄い!」


 この点は死なないようにするためには絶対必要なことであった。

 ダメージカットするダメージが増えれば増えるほど魔力を消費することになりダンジョンの魔力としてはマイナスだ。

 だが現状そこまでのダメージを出せる魔物は配置していない。

 それに色が変わったら無理をする者も少ないだろうからそれが必要になることも少ないであろうとの考えもあった。


「先に説明しました通り、HPが赤になりますと最寄りの休憩エリアもしくは地上に強制的に転移される設定となっておりますので、よほど無理をされない限りこのダメージカット機能は使うことにはならないと思います」


 先ほどとは少し順序を変えて説明をしていた。

 まず、魔力膜が赤になったら安全のために強制転移がされることを説明していたので今回はみんなすんなりと理解してくれたようである。


 でもこの安心安全と思われる指輪と強制転移のシステムにも懸念事項はあった。


 一つは冒険者の体力が高すぎる場合。


 例えば体力100と1000の場合を比べると、前者は残り体力が30で黄色になるが後者は300で黄色になる。

 そして、後者は残り体力50で赤色となり強制転移させられるが、前者が残り体力50のときはまだ色の変化すら起きていない。

 これには体力値のラインについて条件付けをすることも色々考えた。

 だがあくまで自分がわかりやすくするためであり、このダンジョンではしばらく問題にならないだろうとのことからとりあえずこの仕様でいくことにした。


 二つ目は冒険者の体力が低すぎる場合。


 例えば体力10の冒険者が、体力を奪われ続けるこのダンジョンに入った場合、少しダメージを受けただけもしくはしばらく歩いただけで地上へと強制転移させられることになるだろう。

 今まではドラシーがそういった冒険者に対して体力の吸収を止めたり、敵と遭遇してもいっさい手を出させないようにしたりと、陰ながらフォローしていたこともあり問題にはならなかったが。

 HPの色次第で吸収を止めたら? という案もあったが、さすがにそれは過保護すぎるのと、ダンジョンのためにはならないこと、赤になって強制転移された先の休憩エリアでは吸収を止めてるんだから大丈夫といった意見などがあり却下となった。

 最終的には安全のためだから仕方ないという結論になったのだ。


 今日からは見回り巡回モンスターであるアンゴララビットに冒険者たちが装備してる指輪の位置やHPの状況を把握できるように設定してあるが、それも運用を始めてみて様子を見るしかないか。

 そもそも魔物にそんなことまで本当に設定できるのかどうかもいまだ疑問でしかない。


「管理人さん! 次の説明に進んでもらっても構わないですよ!」


「またなにか考え事しちゃってるのね。まぁでもそこも可愛いんだけど」


 おっといけないいけない、またいつもの悪い癖が出ていたようだ。


「あっ、すみません! ダンジョンから帰る際には採集袋はいつも通りあちらの回収箱へ、指輪はその隣にある小さな回収箱にお入れください」


 ふぅ、ようやく最後の説明か。

 思ってた以上に時間がかかったな。

 八時二十分か、早く来てくれて助かったかもしれない。

 おかげで次は表を使ってすんなりと進みそうな気がする。


「では最後に新エリアとなる魔物急襲エリアについてご説明させてもらいますね」


「おお!」


「よっ! 待ってました!」


「楽しみ!」


「凄い!」


 楽しみなの?

 大量の魔物が襲ってくるんだよ?

 この人たち戦闘狂ってやつか?

 それともマゾってやつか?


「こちらは魔物の行動パターンが通常エリアの魔物とは全く異なっております。遭遇した魔物からの先制攻撃はもちろん、背後から急に攻撃を受ける場合もございます。地下二階には鳥モンスターも出現しますので当然頭上から奇襲を受けることもございますし、なにより敵がピンチだと感じた場合に増援が現れるといった場合もございます。他のエリアよりも魔物が沸く頻度を高くしているので、急に目の前や背後に魔物が複数出現することもございますので十分にご注意ください。そしてこのエリアですが、わかりやすいように木の柵を周囲に設置し入り口を数か所設けております。低い柵なので入り口を利用せず乗り越えていただいても構いません。なおかつ魔力で天井まで少し色を付けてエリア全体を覆っております。休憩エリアの色とは少し違いますのでこちらもご自身の目でご確認ください。自信がないようでしたら絶対木の柵の中へは入らないでくださいね」


「……おお!」


「……早く行ってみたいな!」


「……凄い!」


 俺の再三の脅しに冒険者たちは一瞬怯んだものの、すぐさま好奇心が勝ったようであった。

 まぁ敵はそこまで強くないんだけどさ、数の暴力って言葉があるでしょ?

 舐めてると簡単に死んじゃうよ?

 ここでは死ぬことはないんだけどね。


「……以上になりますがご不明な点やご質問はございますか?」


「いえ、大丈夫そうです! ただ、この休憩小屋なんですけど、少し変わりました?」


「あぁ、気付かれましたか。少し大きくしました。テーブルの数は同じですがベンチの数とトイレの数、外の水道の数を増やしたんです」


「へぇ凄いですね! でも一昨日来たときはなにも変わっていなかったような……」


 そうか、まさかこの小屋も魔力でできてるなんてことには気付くわけがないか。

 そもそもこの地上もダンジョンのエリアの一部ってことにも気付かないだろうからな。


 ん? もしかしてダンジョン内部のベンチやトイレも本物と思ってる可能性もあるか?

 ……いや、もしかしなくても魔力で家具を作れるなんて想像もしないだろうからな。

 適当に誤魔化しといたほうがいいか。


「凄腕の職人さんに頼みましてね」


「なるほど!」


 間違ってはないよな?

 ドラシーは凄腕だもんね!


「ではお先に入場料金をいただいてもよろしいでしょうか?」


「はい! お願いします!」


 料金と引き換えに採集袋と指輪を渡していく。

 早速指輪をはめ、大きさが変化することに声をあげているようだ。

 その後それぞれ小屋へ向かい、小屋の中やトイレ、外の水道を確認しているようであった。


「ねぇ、今日は先週以上にお客さん来ると思うよ」


「そうなんですか? そうだと嬉しいですね」


「うん、昨日も今朝出てくるときも宿屋とか道具屋でここのダンジョンの名前が出てたもん」


「へぇ~、ビラ効果かもしれないですね」


「……ねぇ? いい加減その他人行儀な話し方やめてくれないかな? なんか気を遣っちゃうよ」


「それはすみません。でも今は仕事中ですし、それに俺のほうが年下ですしね」


「はぁ、ロイス君は十四歳なのにしっかりしすぎなんだよね。ララちゃんはもう少し気楽に話してくれるのに」


「そう言われましても……」


「そういや私の名前言ってなかったよね? 私はティアリス。年齢はあなたより一つ上の十五歳。呼び捨てでいいからね?」


「ティアリスさんですか。いいお名前ですね」


「もぉ~っ。まぁいいわ。まだしばらくは通うからね。ちなみにあっちの二人は私の兄で、二人は双子よ。歳は私より一つ上ね」


「双子!? 兄!? ご兄妹三人組だったんですか!?」


「え? そこに驚くの? 私たちを見てて気付かなかったの?」


「いや、全くですね。普通に仲間パーティとしか考えてなかったものですから」


「変なところが抜けてるわね~ロイス君は」


 ……このティアリスさん、なんかドラシーと話し方が似てるな。

 というよりか世の女性はみんなこうなのかもしれない。


「チュリリ! (続々と来てます!)」


 空から周辺を見てきたピピが教えてくれる。


「了解。忙しくなりそうだな」


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