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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第九章 魔道計画
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第百八十九話 魔導図書館

 本が届いてから約一か月が経った。

 そういやモニカちゃんが持ってきたんだよな。

 そう考えるとモニカちゃんが来てまだ一か月しか経ってないのか。

 なんだかもっと前からいる気がする。

 ウチのソファでお昼寝するくらい馴染んでるし。


 というよりソファ問題を解決せねば。

 現状では俺の居場所が完全に奪われつつある。

 一番お昼寝したい時間帯はみんな同じだからな。

 ユウナがダンジョンに入ってるときは休憩エリアで寝てくれるからまだいいんだが。


 やはり管理人室のイスをソファタイプにしてフカフカのシートを実装するしかないか。

 でも部屋が狭いから足をだいぶ曲げないといけないしな……。


 そんなことより、ようやく図書館がオープンできる。

 オープン予定がさらに一週間延びてしまったがなんとか形になったと思う。

 しかも日曜日という絶好の条件。

 実家に一時帰省中だった中級冒険者たちも全員帰ってきてるから文句は言われないだろう。


「お兄ちゃん、もうすぐ九時だよ? ソファに寝転がってばかりいないでそろそろ仕事しなきゃ」


 よくそれを俺に言えたな……。

 モニカちゃんには図書館に行ってもらってるが、今この部屋のソファは全て埋まってるんだ。

 マリンもそのうちの一人なのに……。


「ユウナ、並ばなくていいのか?」


「混雑しそうだから今日はやめとくのです。明日みんながダンジョンに行ったあとにのんびり行くことにしたのです。今うるさい人混みに行く気分じゃないのです」


「ほう? 読みたい本が誰かに借りられるかもしれないのにいいんだな?」


「む……い、いいのです。そのうち回ってくるのです。それに図書館は一人で静かにひっそりと本を読むところなのです」


「聞くところによるとそうらしいな」


「…………もしかしてここはそうじゃないのです? 」


「さぁな。だって俺は図書館なんて行ったこともなければ見たこともないんだし。でも本が置いてあるところは基本静かだと思うぞ。みんなが喋らなければだけど」


「……本が置いてないところって本を読むところという意味なのです?」


「……」


「違うのです!? うるさくしてもいいなにかがあるということなのです!? 今から並んでちょっとだけ見てくるのです!」


 ユウナは飛び起きると走って部屋から出ていった。

 静かな図書館よりうるさい図書館を望んでるのか?


「あれだけで想像ついたのかしら?」


「魔道士向けのなにかの施設があるとは気付いたようですね」


「それより九時過ぎちゃうよ?」


 そうだった。

 じゃあ俺も移動しようか。


 最近、前までカトレアの作業部屋だった部屋を転移魔法陣専用の部屋にした。

 錬金術エリアが出来てからはこの部屋は誰も使ってなかったし。

 でもこれで廊下がすっきりしたな。


 そして図書館のカウンター内へと転移する。

 モニカちゃんが座って待っていたようだ。


「準備はいいか?」


「うん! ララちゃんたちもオッケーみたい!」


「了解。ならアナウンスを入れる……ピンポンパンポン」


 この音も久しぶりだな。

 ここのところ魔工ダンジョン関連のアナウンスしかなかったからこの音を聞いてみんな緊張してるかもしれない。


「おはようございます。ダンジョン管理人です。本日は5月18日、日曜日。まだお休みの方もたくさんいらっしゃるとは思いますが、本日新たにオープンする施設についてご案内させてください」


 きっともう何人かは部屋から出てロビーで入り口を探してるはず。

 今回はユウナが並んでるからわかりやすいだろう。


「その施設とは…………図書館です。ここでは魔導図書館と名付けました」


 俺が冒険者ならガッカリしてるかもしれないな。

 本を読まない人間からしたらなにも嬉しくない。

 まぁとりあえずは見にいくだろうけどさ。


「図書館と言いましても、町にあるような図書館ほど大きくはありませんし、本の数も少ないです。ただ、当図書館ではその名の通り魔導書関連の本に特化してご用意しております。それに関しては王都パルドの図書館とも遜色ない品揃えとなってるはずです」


 町の図書館の大きさなんて知らん。

 マルセールにはないし。

 でもパルドの図書館が大きいっていうのは本当らしいぞ。


「もちろん魔導書以外の本も少しではありますがご用意しております。では簡単に貸し出しと返却について説明いたします。まず貸し出しですが、貸し出し魔道具の上に本を置いて冒険者カードをセットしていただくことで手続き完了です。貸し出しはお一人様最大三冊まで、期間は最大七泊八日とさせていただきます。返却の際は冒険者カードは必要なく、返却魔道具の上に本を置いていただくだけで完了となります」


 魔道具の使い方についてはみんなよくわかってるだろうからな。

 一応カウンター内にはウサギもいるからわからなかったらすぐ教えてくれるし。


「貸し出し手続きが完了していない本の図書館外への持ち出しは当然禁止です。また、貸し出し手続きが完了した本についても宿屋外への持ち出しは禁止とさせていただきますのでご了承ください」


 そうしておかないとダンジョン内に持っていかれてボロボロになりそうだ。

 借りたままこのダンジョンを離れて返されることがないというのも困るし。


「開館時間は六時半~二十二時までとなっております。利用料金は無料ですのでぜひ一度利用してみてください。入り口は美容院の横にあります。では魔導図書館、ただいまからオープンです。みなさま、休日をお楽しみください……ピンポンパンポン」


 そしてモニカちゃんが入り口転移魔法陣を使用可にする。

 次の瞬間、人がなだれ込んできた。

 先頭はユウナだ。

 いつもならティアリスさんなんだろうけど、既に図書館内にいるからな。


「わっ! 広いのです!」


「ホントだ! ……というか広すぎない? パッと見でダンジョン酒場やバイキング会場よりも広いことがわかるよ……」


「さっき言ってた貸し出しや返却はおそらく入ってすぐのこのカウンターでやるのです!」


「そうみたいね! 早く本を見にいきましょう!」


 やはり並んでたのは魔道士たちが多いようだ。

 魔導図書館なんて聞いたら行かずにはいられないだろうからな。


 ……と思ったら魔道士以外も続々と入ってきてる。

 さすが新しい物好きの冒険者たちだ。

 図書館は静かにするところなんてことは忘れてるようだな。

 まぁ最初だからそれでもいいけど。


 ここにいても暇そうだからユウナの後を追ってみるか。


「本棚に本があまりないのです……」


「ホントだね……。でもこのほうが密集しなくていいんじゃない? 贅沢な使い方だけどさ。ちゃんと本の上にタイトルが書いてあるし。それにこれ、貸し出し中かどうかを表示するんじゃない?」


「えっ!? ……ホントなのです! きっといつまで借りられてるかとか日付が表示されそうなのです!」


 その通りだ。


 大体五冊分のスペースに一冊がある感じにしてある。

 本が倒れないようにそれぞれの本ごとに仕切り版みたいな物もつけてな。

 だからこそ本のタイトルや返却予定日などを表示することができるんだ。


 みんなは最初ぎっしり本を詰め込んでた。

 なぜかそれを見ると本も本棚も可哀想になってしまった。

 もっと一冊ずつ注目を浴びてもいいんじゃないかと思ったわけだ。

 まぁこのほうが転移魔法陣を設定しやすいってこともあるけどさ。


「でも本棚の数は凄いのです!」


「……よく見れば本もかなり多いよね? いったい何冊くらいあるんだろ?」


「3000冊なのです!」


「「「「3000冊!?」」」」


 みんなが驚いた。


 俺だって最初はもちろん驚いた。

 だがそれは図書館を知らないせいだと思ってたが違うようだな。

 やはり3000冊は多いみたいだ。


「しかもほとんどが魔導書関連なんでしょ? それなら王都図書館の魔導書よりも全然多くない?」


「王都図書館にある魔導書はここに全て揃ってるのです! それに加えて魔道士専門店でしか売ってないお高い魔導書もたくさんあるのです!」


「「「「えぇっ!?」」」」


「それって凄くない!?」


「つまり魔導書に関してはこの国一番の品揃えってことか……」


 ふっふっふ、凄いだろ?

 それにこの国一番ってことはこの世界で一番かもしれないってことらしいぞ?


「でもこれ……いったいいくらしたんだろ……」


「しかも利用料タダなんだよな?」


「それは4…………みんながこのダンジョンを利用してくれてるからこそ購入することができたのです! だから細かいことは気にせずに本を読みまくって魔法を覚えまくるのです!」


 ユウナのやつ今40万Gって言おうとしたよな?

 そこで俺の存在に気付いてハッとした様子だったし。


 別に言っても構わないが、興味がない人にとってはそんな無駄遣いしてとか思われそうだからな。

 この図書館を作るのだって魔力を使ってるんだから、それなら魔石レートを上げてくれよとか思われても面倒だし。


 ……ん?

 ユウナが周りをキョロキョロしだした。

 ほかになにかないかを探してるのか。


「あっ! あっちの奥はなんなのです!?」


「なんだろう? 個室みたいな感じかな?」


 そのまま集団で奥に進んでいった。

 ララとティアリスさんの出番だな。


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