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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第八章 犠牲と勝利
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第百八十七話 報酬お渡し

 翌朝の十時、ダンジョン討伐に参加したメンバー全員にダンジョン酒場に集まってもらった。

 もちろん報酬を渡すためだ。


 さすがに今日ダンジョンへ行く人はいないようだな。

 半分くらいの人は朝食にも顔を出さなかったようだ。


「ではまずダンジョンの内容についておさらいさせてもらいます。こちらのホワイトボードを見ながら話をお聞きください」


 そして第一階層から順にマップや出現モンスター情報などを説明。


 昨日の夜にカトレア、マリン、モニカちゃんの三人でこの情報をまとめてくれたんだ。

 水晶玉を自由に操作できるようになった今ではただ情報を抜き出しただけみたいなものらしいけどな。


 懸念していたのは俺を管理人登録できるかどうかだったが、それも今までの水晶玉と同じく難なくいけたそうだ。

 正直無理なんじゃないかと思ってたんだけどな。

 もしCランクの魔物が出て来てたらさすがに無理だった気がする。


「提出していただいた魔石もP変換して全員に配分いたします。ただし、先発組と後発組では当然先発組の報酬が多くなりますのでご安心、ご了承ください」


 第四階層ではウチの魔物一覧にはないなかなかレアな魔石が入手できたようだ。

 しかも最奥のボス的存在であるマグマドラゴンは一度しか出現しない設定になっていたらしい。

 それをマルセールの素材屋に売るのはもったいないからな。


「ではまず先発組の報酬から発表させていただきます。後発組との違いは先ほど言った魔石の分と、第一階層と第二階層、そして第三階層の途中までの攻略分の違いと考えてください」


 みんなはどれくらいを期待してくれているんだろうか?


「先発組の報酬はお一人様あたり…………」


「「「「……」」」」


 うん、いい緊張感だ。

 この前のボワールの魔工ダンジョン討伐報酬が2000Pだったっていうのは知れ渡ってるからな。

 でもあれは少し破格すぎたかなとも思ってる。

 だからそこまで期待はしないでほしい。


 ミスリル装備は既に回収させてもらったからな。

 ティアリスさんのお兄さんたちは凄くがっかりしてた。

 別にあげても良かったんだが、ほかの冒険者たちと差がつきすぎるしな。


 ……少しタメが長すぎたか。


「14000Pです」


「「「「……」」」」


 ……え?

 どっちだ?

 高いよな?


 わかりやすいときと全くわからないときの反応の差が凄いんだよな~。


 ん?

 なにかヒューゴさんが言いたげだ。


「えっと管理人さん……確認ですが、一人14000Pでお間違えないんでしょうか?」


「はい。あ、最後の浄化作業に参加していただいた回復魔道士のみなさんはプラス600Pですので14600Pになりますね」


「なるほど……」


 ……だからどっちなんだ?

 嬉しいのか嬉しくないのか?

 高いのか安すぎるのか?

 期待値より上なら歓声があがってもおかしくないと思うんだけどなぁ。


「では次に後発組の報酬はお一人様あたり……8000Pです」


「「「「……」」」」


 もう知らん。

 安いかもしれないがこれ以上は出せん。


「こちらも浄化に参加された方はプラス600Pの8600Pになります」


 ララとユウナの分を抜いても全部で約22万Pなんだぞ?

 特に第四階層の攻略や魔石を高く査定したつもりだ。

 それに危険手当や討伐ボーナスも考慮したんだ。


「「「「……」」」」


 ……なかなか粘るじゃないか。

 わかった。

 なら特別ボーナスを出そう。


「さらに、みなさまの宿泊期間を七泊分延長させていただきます」


「「「「……」」」」


 ……嘘だろ?

 七泊分って3600Pもするんだぞ?

 これでも満足しないのならさすがに強欲って言われても仕方ないぞ?

 そうだよな?


 隣のカトレアを見るが、カトレアは下を向いて笑っているように見える……。

 そんなんで満足するわけないでしょうって意味の笑いか?


「くっ……わかりました。ではさらに美容院の権利を今日付けで付与させていただきます」


「「「「……」」」」


 たった100Pぽっちのものなんかいらないってか?

 でもこれ以上どうしろって言うんだよ?

 査定をやり直せとでも言うのか?

 嫌だぞそんな面倒なこと。


「ロイス君、あのね、違うよ?」


 ティアリスさんが口を開いた。


「違うってなにがでしょうか? 査定金額が間違ってるとでも言いたいんですか? 安すぎるってことですかね?」


「「「「……」」」」


 また黙ってしまったじゃないか……。

 ティアリスさんでさえ喋らなくなってしまった。


「ではみなさん、報酬に納得された方はこちらに冒険者カードを持ってお並びください」


 しびれを切らしたカトレアがみんなに向けてこれで納得するように促した。


 すると、慌ててみんなが並びだした。

 これ以上ごねるともらえない可能性もあると思ったのかもしれない。


「管理人さん、高すぎるっていう驚きですから……」


「宿泊延長はなくてもいいですよ……」


「美容院は地味に嬉しいけど……」


「こんなに大盤振る舞いで大丈夫ですか?」


「さすがにこれだけの人数ともなると心配になりますよ……」


「カトレアさん、いいんですかね?」


「ロイス君……昼食いっしょに食べようね」


「アタイ……一度にこんな大金もらうの初めて……」


「俺、これでミスリルの剣買わせてもらいますね……」


「お菓子買いまくります」


 そっちだったのか……。

 そしてなぜかみんなの言葉遣いが丁寧になってる……。

 気を遣われてしまったようだ。


 カトレアはみんなに一言ずつ声をかけながらPを付与していっている。

 依頼達成時にP付与するための魔道具を新しく作ったんだ。

 まぁPを付与するだけだからめちゃくちゃ簡単らしいが。


「……みなさん、金額にお間違えはないでしょうか?」


「「「「はい!」」」」


 さっきもそれくらい元気に答えてくれれば良かったのに……。


「では裏面をご覧ください」


「「「「裏面?」」」」


「今回から高難易度の依頼達成時には日付と達成依頼名を表示させていただいております」


「「「「おぉ!?」」」」


「魔工ダンジョン難易度D討伐って書いてある!」


「やったぜ!」


「自慢できるな!」


 だからさっきもそれをだな……。


 まぁいいや。

 こういうときくらい大盤振る舞いして当然だろ。

 お金はまたすぐに入ってくる。

 幸いにもPで使ってくれる人が多そうだし。


「ではこれで解散とします。みなさま、お疲れ様でした」


 ふぅ~。

 ようやく一区切りついたな。

 一週間が凄く長く感じた。


 ……ん?

 なぜみんな出ていかない?

 なにかパーティ内で話し合ってるようだな。

 もしかしてこのあとすぐにダンジョンに入ろうとか相談してるのか?

 休養も大事だって普段から言ってるのに。


 そしてゾーナさんパーティが近付いてきた。


「アタイら、今日の昼にここを出るよ。アラナの遺体を家族の元に届けてくる。アラナはリーヌの町出身だからここから二日間はかかるしね」


「そうですか。ではウチの馬車をお使いください。きっと今日中には着けるでしょう」


「いいのか? じゃあお言葉に甘えさせてもらうよ。向こうに着いたら馬車はすぐに返すから」


「まぁご葬儀などもおありでしょうからね」


「それもそうだけど、一度ゆっくり今後のことを考えようと思ってさ。もしかしたらここにも戻ってこないかもしれない。だから悪いけどPを換金させてもらってもいいか?」


「それはもちろんです。みなさんが稼がれたお金ですから。また気が向いたらいつでも来てください」


「あぁ、ありがとうな。じゃあ悪いけど最後もまた世話になるよ」


 そうか、寂しくなるな。

 でもパーティメンバーを亡くしたんだからそんな簡単には切り替えられないよな。


 次にヒューゴさんパーティがやってきた。


「明日、一度サウスモナに帰ることにしました。今日ベンジーが来るということなのでみんなでいっしょに帰ろうと思います」


「そうですか。一度ということはまた戻って来られるんですか?」


「もちろんです。せっかく七泊分いただいたのでたまには里帰りでもしようと思いまして」


「わかりました。ごゆっくりしてきてください。もし七泊を超えるようでも延長させてもらいますからお気になさらずにどうぞ」


「ありがとうございます。でも体がなまってしまうのですぐに戻ってきますから」


 ヒューゴさんたちまでもうここには来ないって言い出すかと思ってしまった。


 そしてそのあとも故郷に帰るというパーティが二組続いた。

 帰省するだけであってまたすぐに戻ってくるそうだ。


 当然換金していく人がほとんどだ。

 そんな遠慮がちに確認してこなくてもいいんだぞ。

 堂々と全額換金していってほしい。

 換金自体は宿屋フロントや買取所にある魔道具で自分ですぐにできるから別に俺に断りを入れる必要なんてないんだけどな。


 そしてみんなダンジョン酒場から出ていった。

 ヒューゴさんたち以外は今から準備をして帰るそうだ。


 ただ、一組だけは帰らずにここに残るというパーティがいる。


「私たちけっこう長い間ラスとボワールにいたからね」


「それに僕のボワールなんてつい先週も行ったばかりですし」


「明日からダンジョンに入ろうぜ。早くもう少しPを貯めてミスリルの剣買いたいんだ」


「じゃあ俺もミスリルの大剣買うよ」


 ティアリスさんパーティだ。


「え~~~~。明日も休もうよ。明後日は日曜日だし、三連休でいいんじゃない?」


「僕はどちらでも構いませんが……」


「いや、俺は行く。早くミスリルが欲しいんだ」


「じゃあ俺も。二人は休んでていいぞ」


「じゃあそうするわ。ジョアン君も休みね」


「はい……」


 お兄さんたち元気だな~。


「ねぇロイス君。明日なにか手伝おっか?」


「いえ、大丈夫です。ゆっくり体を休めてください」


「……私がなにも知らないとでも思ってる?」


「……なにを知ってるんですか?」


「そうだね~。例えば本とか?」


「……本ですか? 本がどうかしたんですか?」


「あ~早く本が読みたいなぁ~」


 この人、知ってるな……。

 ユウナか?

 絶対そうに違いない。

 今日こそお菓子抜きだ。


 ……でも疲れてるだろうから可哀想だな。

 今回は見逃してやる。


「はぁ~。じゃあ作業手伝ってもらえますか? 最近別のこともあって進捗が悪いんですよ。もちろん給料は出しますので」


「やった! 今からでもいいよ!? ジョアン君もいっしょにやろうよ!」


「ロイスさん、いいんですか? でも本ってなんなんです?」


「近いうちに図書館をオープンするんですよ」


「「「図書館!?」」」


「はい。でも本が3000冊あるおかげで貸し出しのためのシステムへの登録作業が時間がかかって仕方ないんです。ウチの錬金術師たちも忙しいですから緊急性のない図書館の作業がどうしても後回しになってしまってるんですよ」


「やりたいです! 僕も本好きなんです!」


「じゃあ今日と明日お願いします。時間も中途半端なんでこのあとご飯食べてからにしましょうか。モニカちゃんとマリンを呼んでおきますから指示を仰いでください」


「わかった!」


「……俺たちもいいかな?」


「……たまには戦闘以外の仕事もしたい」


 どうにかして明後日の日曜日にはオープンしたいな。


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