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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第八章 犠牲と勝利
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第百七十七話 水晶玉の使い道

 昨日ドラシーと話してから色々と考えてみた。

 世界中のどこにでもダンジョンを作れるかもしれないという件についてだ。


 結論から言うと、ナシだな。

 なにより面倒すぎる。


 ドラシーみたいな主的存在がいないとなると危険も増えるしな。

 というわけで、今日はこのダンジョン内でなにかいい使い道がないかを考えることにした。

 土曜だから新規も来ないだろうし受付はすることないからな。


「おはようございまーす! いってきまーす!」


「おはようございます。お気をつけて」


 朝から元気なのはいいことだ。

 今日は一週間の締めの日だからしっかり鍛えてきてくれよ。


「おはようございます! 僕たちパーティ組んだんです!」


「おはようございます。……うん、バランス良さそうですね。言いたいことがあったらハッキリ言い合ったほうがいいですよ」


 最近パーティを組む人が増えてきたな。

 いいことなんだろうがそれはそれで少し心配にもなる。

 パーティメンバーの誰かに頼りすぎるのは良くないからな。


 ……ソロ専用のダンジョンとか作ってみるか?

 でも前衛が有利な気がするな。

 いや、別にそれでもいいのか。


 ……やっぱりダメだな。

 回復魔道士たちは面白くないだろうし、暇な時間ができてしまう。

 日曜限定の訓練ダンジョンにしてもいいが、Pを入手できないとやる気が起こらないかもしれないしなぁ。


 一度ララに聞いてみるか。


「……ってのを思いついたんだけどどう思う?」


「それって今のダンジョンとどう違うの?」


「……」


 そうだった……。

 ララは地下三階魔物急襲エリアでさえも一人で乗り込むんだもんな。

 そんなララからしたら難易度が優しくなっただけとしか思わないか。


「いや、なんでもない。忘れてくれ」


「え……」


 あまりにも普通すぎたな。

 普通というか真面目か。


「しばらくカトレア姉たちが色々実験するんでしょ? それを待ってからにしようよ」


「そうだな。今日は地下四階行かないのか?」


「だってユウナちゃんいないし。さすがに一人じゃ無理だよ」


 ユウナは六時半にここを出ていった。

 魔工ダンジョン周辺の魔瘴を浄化するためにだ。

 といってもまだ練習だけどな。

 ブルーノさんとキャロルさんに教わりながらだから問題はないだろう。


 そのブルーノさんたちは昨日ヤマさんを救出したあと、一度王都に報告に戻ったんだ。

 ついでにモニカちゃんも実家に帰った。

 そして十八時過ぎには三人ともここへ戻ってきた。

 もちろんウェルダンがいたからこそできることだ。


 ブルーノさんたちは魔工ダンジョンが討伐されるまでここにいてくれることになったんだ。

 仕事だからとは言ってたが、ウチのダンジョンに興味を持ってくれたこともあるらしい。


「誰かパーティメンバーを加えたらどうだ?」


「え~。気を遣うの面倒だもん。ユウナちゃんと二人でいいよ」


「でも二人じゃ厳しいだろ。この先は魔工ダンジョンの敵もどんどん強くなるんだぞ」


「そうだけどさぁ。じゃあ私たちにはどんな構成が合うと思うの?」


「攻撃魔道士一人に、戦士か武闘家みたいな前衛一人は?」


「う~ん。バランスは良さそうだけど、なんか普通だよね」


 バランスがいいんだから普通になって当然だと思うが。

 俺がバランスを重視する傾向にあるとも言えるけど。


「ゾーナさんたちみたいな超攻撃パーティがいいのか?」


「あれは私には無理。回復魔道士がいないと不安になるもん」


「とりあえず一人入れてみるってのは?」


「地下四階に行ける力を持った人で今ソロの人なんている?」


 それはいないだろうな。

 そもそも地下三階にいる人たちでソロの人なんて見たことがない。

 二人パーティはたまにいるが、それもすぐに四人パーティを組む人たちばかりだし。


「じゃあリス二匹とかどうだ?」


「あの子たちはお兄の仲間だからそれは反則だよ」


 誰も気にしないと思うんだけどなぁ。


「……ねぇ、お兄が入るのはどう?」


「俺?」


「うん。毎日日替わりで誰か一匹連れてくるの」


 確かに魔物使いの俺がいれば反則でもなんでもないな。


「却下で」


「えぇ~? いい案だと思ったのにぃ~」


「俺がここでのんびりしたいの知ってるだろ。それに俺が足手まといになるから戦力ダウンは間違いない」


「今から鍛えればいいじゃん!」


「無理だって。戦闘はララに任せた」


 なんでそんな疲れることしなきゃならないんだよ。

 痛いのだって嫌だからな。


「はぁ~。でもやっぱり誰か入れたほうがいいよね~」


「この際この四月から冒険者になった初心者でもいいんじゃないか? 誰か鍛えてやれよ」


「それはさすがに向こうが気を遣うよ」


「それもそうか。まぁまだ二人は子供だし、そこまで焦る必要もないか」


「子供扱いはやめてっていつも言ってるでしょ!」


 だからまだ十一歳なんだから子供なんだってば……。


「あ、じゃあヤマさんはどうなんだ?」


「え? ……あ、パーティの話? それはさすがに大人と子供の年齢の差があるよ」


 そこは区別するんだな……。


「でもなんで一人で魔工ダンジョンに入ろうと思ったんだろうな」


「魔瘴が酷かったのを見て討伐してやろうと思ったんじゃない?」


「ソロでか? それほどの自信があるならパーティメンバーに持ってこいじゃないか。ソロだし」


「……それはそうかも。でもきっと三十歳は超えてるでしょ? 私たちみたいな子供は嫌がると思うな」


 ……よくわからん。


「もう一日か。昨日まで数日ほとんど寝てなかったんだろうな」


「うん。早く元気になるといいんだけど……」


 まだ一度も食事を取らずに寝続けてるからな。

 寝てる顔自体は穏やかな表情だからまだ安心できるが。


「でも魔工ダンジョンに閉じ込められても平気だってことがわかったんだから心配事が一つ減ったよな」


「あ、そうだね。……もしかするとこれから水晶玉は勝手にここに集まってくるんじゃない?」


「ん? ……そうなるのか。でも厄介事もいっしょに舞い込みそうな気がしてならないな」


「まぁ多少はいいんじゃない? その代わりに水晶玉はもらおうよ。錬金術師ギルドにあったってどうせ無駄なんだからさ」


「それならいいな。ブルーノさんたちもギルド長とやらに言ってくれたみたいだからもらっても問題はなさそうだし」


 サウスモナの水晶玉も依頼料代わりにあっさりくれたからな。


「でも仮にあのボワールとサウスモナの水晶玉を自由に設定できるとなってもさ、結局なにかするのにも魔力が必要になるんだから、ここで使うのなら全く意味がないよね。あの階層をそのまま使っても微妙だしさ」


「そうなんだよ。違う土地でダンジョンを開いて冒険者たちから吸収するんだったらまた話は変わってくるんだけど、そんな面倒なことしたくないだろ?」


「……町の中でダンジョンを開いてみたい気持ちは少しだけあるよ?」


「え……」


「だってパルドとかで開いたらお客さんたくさん来そうじゃない? 受付もダンジョン内でやればいいんだから入り口分の土地だけあればできるしさ」


 冗談だよな?

 まさか俺に管理人として行けとか言わないよな?


「従業員がいなくてもウサギがいて魔道具があれば運営できそうじゃない? 町中だから食事の心配はしなくてもいいしさ」


「なるほど。確かにそれならアリだな」


「でしょ!? やってみる!?」


「……でもここにお客が来なくなるかもしれないぞ? 立地条件はパルドのほうがいいに決まってるんだからな」


「パルドは初級者向けの階層だけにするの! 中級者になりたいんならこっちへ来てねってことでさ! それにこっちは施設が豊富だからみんなこっちへ来たくなるに決まってるよ!」


 初級者向けだけか。

 それはいいな。


「色々考えてるところ悪いけど少し問題があるわ」


「「!?」」


 相変わらず心臓に悪い登場の仕方だ。


「えぇ~? 問題ってなんなの?」


「……おそらく今のままでは魔瘴が発生するの」


「「え……」」


 少しどころの問題じゃないだろ……。


「あ、体力や魔力の吸収をやめればきっと大丈夫よ? でもそれじゃ運営ができないでしょうからね。魔物も湧いてこなくなるし」


「ダメじゃん……。どうにかして魔瘴じゃなくてマナに変えられないの?」


「今のところは無理としか言いようがないわね。それと忘れてたけどダンジョン入り口の転移魔法陣も誰かが作らないといけないのよ……」


「あ……さすがにカトレア姉でもすぐには無理か……」


 そうだった……。

 転移魔法陣という大きな壁があるじゃないか。

 ほかの土地での運用はまだまだ先の話になりそうだな。


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