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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第八章 犠牲と勝利
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第百七十二話 パーティ選考

 この前と同じようにダンジョン酒場カウンター近くのテーブルには中級者たちが座っている。

 そして中級者たちとは少し間が空いて周りに初級者たちが座っていたり立っていたりするようだ。

 おそらくほとんどの宿泊者が集まっているだろう。


「では始めます。今朝七時前、ピピが魔工ダンジョンを発見しました。場所はマルセール東からソボク村までの道沿いで若干ソボク村寄り。第一階層に入り内部を確認したところ、山フィールドだったそうです。魔物はマッシュ村への山道に出てくる魔物の種類と似ていることから、ここでいう地下三階序盤レベルの敵だと推測されます」


「「「「山フィールド……」


「「「「いきなり地下三階レベルって……」」」」


 どのくらい危険なのかを一瞬で理解してくれたようだ。

 後ろの初級者たちは自分たちが入ってはいけない場所だということもわかってくれたはずだ。


「よって階層が深くなるにつれ中級レベルの魔物も多く出てくることが予想されます。今回は山フィールドを設定してきたことから、魔王はフィールド構成で足止めさせることを考えたのかもしれません。今まではなんの変哲もないただの洞窟フィールド、草原フィールドだけだったのですから」


「「「「なるほど」」」」


「次の階層もまた山だったりするのかな……」


「登るだけでも大変だぞ……」


 その可能性はあるな。

 せっかく次の階層に進んだのにまた一から山登りだったら精神的にキツイだろう。

 本当ならそんな面倒なダンジョンを相手にしなくてもいいんだが、ここはさっさと討伐して魔王の精神をズタズタにしておこう。

 おそらく次のダンジョンをすぐに作るほどの魔力はないだろうからな。


「つまり先が全く予想できないダンジョンです。次の階層以降に出てくる魔物の種類も想像がつきません。それでもダンジョンに向かわれる意志がある方のみここにお残りください」


 ……誰も帰らないか。

 というより初級者が見てる前で帰れないだけかもしれないが。


「今回は3パーティ合同で向かってもらいます。パーティ毎の単独行動ではなく、3パーティでの行動です。それを受け入れられない方は申し訳ありませんがマルセールの冒険者ギルドに行かれることをおすすめします」


「3パーティか……」


「単独で行っても休憩できないから賛成ね」


「ボワールの2パーティ合同でも一日かかったんだろ?」


「もっと長期戦を覚悟しなければいけないですよ」


「普段はライバルだが味方と考えると頼もしいな」


 いい冒険者たちで良かった。


「では向かってもらうパーティを決めますが、さすがに今回はクジというわけにはいきません。職構成などもありますからね。どうしましょうか? みなさんで話し合って決められてもいいですし、こちらの独断で決めさせてもらっても構いませんが」


「どうするの?」


「まずララちゃんたちは確定だろ?」


「当然でしょ。地下四階で一番進んでるのはあの二人なんだから」


「じゃあ次はヒューゴさんたちか?」


「それも決まりだろうな」


「じゃあ残り一組を管理人さんに冷静に判断してもらうっていうのはどうだ?」


「それがいい!」


「それならみんなも納得だし、選ばれたほうも嬉しいし!」


 俺が選んでいいのか?

 でもヒューゴさんたちは一言も発しようとしないな。

 自分たちが選ばれて当然と思っているのだろうか?


 ……いや、自分たちが行かねばならないという覚悟を決めたのか。

 みんなから期待されるのも大変だな。


「私としてもヒューゴさんパーティには行っていただきたいのですがどうでしょうか?」


「……選んでいただけて光栄です。ありがとうございます。みなさんの期待に恥じぬよう必ず討伐をしてきます」


「「「「パチ……パチ……パチパチパチパチ」」」」


 ちらほら拍手があがったと思ったら次第にみんなが拍手しだした。

 だが煽るような声は出ない。

 笑って送り出せるような雰囲気じゃないと悟ってるんだろう。


「残り二組も私が選ばせていただいてよろしいですか?」


 中級者のみんなは静かに頷く。


「では次は……ゾーナさんパーティ、お願いできますか?」


「えっ!? アタイたちが行っていいのかい!?」


「もちろんです。ここでの実績も十分ですし、みなさんも納得でしょう?」


「「「「パチパチパチパチ」」」」


 またしてもみんなは頷き、そして拍手を送る。

 このパーティは地下四階に三番目に到達したパーティだからな。

 でもあと一組しか選ばれないからか残念そうにしてるパーティもある。


 さて、問題はあと一組か。


 ヒューゴさんたちの構成は戦士、武闘家、レンジャー、回復魔道士。

 攻撃魔法は使えないがバランスのいい構成だ。

 リーダーのヒューゴさんがレンジャーというのもちょうどいいんだろう。

 一応欠陥品の杖を渡しておくか。


 ゾーナさんたちは、戦士、戦士、戦士、攻撃魔道士の超攻撃型パーティ。

 ちなみにゾーナさん含む戦士三人は女性。

 この三人の攻撃は破壊力抜群だからな。

 魔道士の男性はいつ見ても肩身狭そうな印象だけど……。


 この二組はララと相談してあっさり決まったんだ。

 地下四階でも着実に結果を出してるらしいし。

 間近で見てるララが一番良くわかってるんだろう。


 あと足りないのは攻撃魔道士と回復魔道士か?

 レンジャーみたいななんでも屋がもう一人いてもいいか?

 前衛はもうそこまで必要ないだろう。

 となると二組に絞られるな。


 ララに相談したいところだがここには俺しかいない。

 あと一組についても任せると言われてしまったからな。


 ……昨日帰ってきたばかりで疲れもあるだろうが、ここは実績を買うか。


「……では最後の一組、サイモンさんパーティ、お願いできますか?」


「「「「えっ!?」」」」


 え?

 ダメ?

 みんなの反応が今までと違う。

 戦士と攻撃魔道士二人に回復魔道士だぞ?

 そりゃ中級者になったのは最近だけどさ。

 やはり疲れを考慮しろってことか?


「ちょっとちょっとロイス君! ララちゃんたちは!?」


「そうだよ! ララちゃんたちが行かないのはおかしいだろ!?」


「みんなララちゃんたちだけは確定だと思ってたんですよ!?」


 あ、そういうことか。

 さっき二組発表した時点でティアリスさんが落ち込んでいたのはもう三組決定したと思ったからか。


 それよりもここまでララたちの評価が高いとはな。

 経営者やまだ子供だといった贔屓目で見てくれてないことはありがたい。


「ララとユウナは行きません」


「「「「えっ!?」」」」


「たった二人のパーティですからね。個々の能力と二人の連携は素晴らしいですが、みなさんといっしょにとなるとそれはまた別の話です。彼女たちは自由に動いてこそ力が発揮されますからね。ウチの魔物たちと組ませて行かせてもいいですが、それよりもみなさん3パーティに頼るほうが確実だと判断しました」


「「「「……」」」」


「もちろん本人たちも納得したうえです。行きたい気持ちはみなさんと同じでしょう。ですがやはり連携はそれ以上に大事になってくるんです。最後にサイモンさんたちを選んだのもパーティ構成と昨日ダンジョン討伐をした実績を考慮したからです。馬車の使い方などもおわかりでしょうし。というわけでサイモンさん、いかがでしょうか?」


「……わかった。任せてくれ」


 拍手はない。

 それほどララたちが行かないという選択をしたことが衝撃なんだろう。


「みなさんは本当に危険な場所に行かれようとしています。その決断をしたことは凄いことだと思います。なのでどうか生きて帰ってきてください。強敵に立ち向かう意志も大事だとは思いますが、無理だと思ったら迷わず逃げてください。逃げるのは恥ではありませんからね? また対策を立てて出直せばいいんです」


 3パーティだけではなく、この場にいる全員が俺の話を真剣に聞いている。


「幸いにも今までの傾向からすればダンジョン内に入らなければダンジョン周辺の魔瘴が濃くなることはありませんからね……ん?」


「「「「え?」」」」


 ピピが凄い勢いで入ってきた。

 そしてカウンターの上にとまった。


「チュリ! (ダンジョン周辺の魔瘴が濃くなってきてます!)」


「なにっ!? 本当なのか!?」


「チュリ! (はい! 魔物も出現し始めてます! 第一階層で見た魔物たちです!)」


「なっ!?」


「チュリ! (瞬殺しましたが、またすぐ湧いてくると思います!)」


「……わかった。ウェルダンが戻ってるんならすぐにララたちと向かうように言ってくれ」


「チュリ! (了解しました!)」


 ピピはまた凄い速さで飛んでいった。


「……ロイス君? なにがあったの?」


「……ダンジョン周辺の魔瘴が濃くなってきてるようです」


「「「「えっ!?」」」」


「魔物も出現し始めてます。第一階層の魔物らしいですから地下三階レベルの魔物ですね」


「「「「な……」」」」


「元々ダンジョン周辺の敵に対してはララたちを向かわせる予定でしたのでご安心を。ただずっとってわけにはいきませんからFランク以上のみなさんでの総力戦となりそうです。それよりこれでダンジョン討伐から逃げられない状況になりました。3パーティの方、重荷を背負わせるようですが、ご自身の命、仲間の命を第一に考え、ダンジョン討伐をお願いします。討伐が無理なら情報だけでも持ち帰ってきてください。次のパーティにバトンタッチしましょう」


「お任せください。必ずや全員で帰還してみせます」


「アタイたちで絶対討伐してくるからな!」


「……一刻でも早いほうがいいな。準備したらすぐ出よう」


「それと鍛冶工房とダンジョンストアは開けてありますので3パーティの方は優先でご利用ください。食料やアイテム類はこちらで準備中ですので用意されなくても結構です。では十五分後、休憩小屋の奥にあります準備小屋にお集まりください」


 3パーティはみんなからのエールを受けながら颯爽と酒場を出ていった。


「では主にFランク以上のみなさんになりますが、ただいまより新たな依頼を出します」


 急に依頼が増え始めたな……。


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