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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第八章 犠牲と勝利
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第百七十一話 緊急アナウンス

 いつも通り六時半に起きた。


 そして魔物たちが散歩に行くのを見送った。


 そのあとはバイキング会場に移動して、仕事前のミーノ、オーウェンさん、シエンナさんといっしょに朝食を食べた。


 七時前にはバイキング会場を出て家に戻ってきた。


 するとピピが凄い勢いで管理人室に帰ってきた。


「チュリ! (緊急事態です! 緊急事態です!)」


「なにっ!? どうした!? その前に落ち着け」


 ピピが羽をバタつかせている。

 よほどの事態に違いない。


「チュリ(ふぅ~。マルセールからソボク村寄りの道沿いに魔工ダンジョンと思われるダンジョンが出現していました。中に入ってみましたがいきなり山フィールドです。まるでマッシュ村への山道とそっくりで、出現する魔物も似たような種類でした)」


「……確かにそれは緊急事態だな」


 久々に来たか。

 マルセール周辺に作ってきたということはよほど自信があるんだろう。

 マッシュ村への魔物ということはウチの地下三階序盤レベルということか。

 それがいきなり第一階層に出現するとはな。

 ウチの冒険者をターゲットにしてるのは明らかだ。

 そこらの貧弱な冒険者だとそんなところこわくて入れないだろうからな。


「チュリ? (私はどうしましょうか?)」


「一応ほかにダンジョンが出現してないかマッシュ村近くまで見てきてくれ。ダッシュで頼む」


「チュリ! (了解しました!)」


 ……うん、速い。


 さて、こっちはどうしようか。

 本当なら南のサウスモナの町周辺の魔工ダンジョン討伐の依頼を出すつもりだったが、それどころじゃなくなったな。


「おはよ~。なにかあったの?」


 ララが起きてきたようだ。


「マルセール東に魔工ダンジョンが出現した」


「えっ!? 本当!?」


「あぁ。しかも第一階層から山フィールドで、敵も地下三階レベルだったらしい」


「えっ!? それヤバくない!?」


 ヤバいな。

 第一階層でそれだともっと深い層はどうなってるんだろうな。


 いったん落ち着いて話をするためにソファに座ろう。

 すかさずララがカフェラテを注文してくれた。

 食後のカフェラテがこれまた美味いんだ。


「どうする? 行くか?」


「……」


 え?

 行かないの?

 二つ返事で行くって言うかと思ったんだが……。


「行きたい人がいるならとりあえず我慢する」


「え? なんでだ?」


「だって中級者になったみんなのパーティと私とユウナちゃんだけのパーティとではやっぱりみんなのほうが強いもん。四人での連携って大事だし、複数パーティでの連携ともなるとさらに大変だし。私とユウナちゃんが行っても連携を乱して足手まといになる可能性の方が高いよ……」


 そんなこと考えてたのか……。

 最近元気がないのは地下四階の壁にぶつかってるからかと思ってたが。

 もしかするとみんなと同じようにあと二人パーティメンバーが欲しいのかもしれない。

 ほかの冒険者からしたら地下四階の魔物相手に二人で立ち向かうってのがありえないんだけどな。


「……わかった。でもパーティ選考は手伝ってくれ。さすがにクジで決めるわけにはいかない。これは俺たちの仕事だ」


「うん。まずみんな起こしてくるね。ユウナちゃんには私から言うから」


 ララは寂しげな表情で二階に向かった。


 でも実際のところララとユウナと組むとなるとどんなメンバーがいいんだろうな。

 魔戦に回復魔道士だから、レンジャーと攻撃魔道士か?

 ララが攻撃魔法を使えるから戦士や武闘家を二人入れるのもありか?

 もう一人回復役を入れたらユウナは負担が減って補助魔法役に回れるか。


 ……というかこの二人、誰とでも組めそうな構成だな。


「おはようございます。何事ですか?」


「おはよ~」


「朝っぱらからなに? まだ七時じゃない」


 カトレア、マリン、スピカさんも起きてきたようだ。


 そしてすぐに事態を説明した。

 もちろんララとユウナが行かないことも。


「では私はモニカちゃんとミーノちゃんに伝えてきます。とりあえず食料は倍にしてもらいますね。マリンは昨日準備した回復アイテムを三倍にしてきてください。あっ、行くパーティも増えるかもしれませんからもう一つ分多く用意してください」


「うん、わかった!」


 カトレアとマリンはすぐさま部屋を出ていった。

 ララとユウナはまだ二階にいるようだ。


「各地のダンジョンが一か月もこんな状態だと当然の結果なのかもしれないですね。もっと早く潰しておくべきでしたか」


「仕方ないわよ。勝手に討伐するわけにはいかないもの」


 でもまさに今日勝手に討伐しに行こうと思ってたんだけどな。


「何組のパーティを向かわせるべきだと思いますか?」


「……3パーティじゃない? それか4パーティにして二手に分かれてもらうとか」


 俺もその二つの案で悩んでいたところだ。

 だが二手に分かれるとなると馬車を引く魔物も二匹必要になる。

 それに一組が休憩するとしてもう一組だけで守れるか不安もある。


「3パーティにします。念のためあの研究中のポーションも持たせていいですか?」


「もちろんよ。すぐに準備してくるわ」


 スピカさんもマリンがいる錬金術エリアへ向かった。


 ここでようやくララとユウナが下りてきたようだ。

 ……この様子だとユウナはすぐには納得しなかったんだろう。

 というかまだ納得してない感じだ。


「ユウナ、おはよう」


「……おはようなのです」


 うん、機嫌が悪い。


「話は聞いたか?」


「……聞いたのです」


「どうする? 行きたいか?」


「……やめとくのです。こないだみたいにピピちゃんたちといっしょに行きたいですけど、魔物さん頼りと言われるのも嫌なのです」


「なら今はここの従業員としてサポート側に回ってくれるな?」


「……はいなのです」


 悔しいのはわかるが今はわがまま言ってる場合じゃない。

 最短での討伐を目指すならララとユウナとピピたちに任せるのがいいのかもしれないが、確実性を取るのであれば中級者3パーティに任せるほうがいいだろう。

 それに俺がいないと万が一のときに連携が取れないおそれもある。


 ……俺がいっしょに行けばいいのか?

 いや、無理だな。

 さすがに俺が行っていいようなところじゃない。


「ララはメタリンのご飯を何日分か余分に作ってくれ。ユウナはアイリスたちにこの件を報告。もう少ししたらアナウンス入れるから」


「はいなのです!」


 うん、ユウナも気持ちを入れ替えてくれたようだ。


「お兄、今日は私とユウナちゃんでダンジョン周辺の見張りするね」


「いいのか? 初級者を交代で向かわせようかと考えていたんだが」


「とりあえずはね。魔瘴が濃くなって出現する敵の強さとかも見ておきたいし。おそらく最低でも第一階層レベルの敵が出てくるでしょ?」


「そうだな。もしかすると元々魔瘴が薄い場所には弱い敵しか出ないのかもしれないが、最悪の事態を想定して動くべきだからな」


 もしFランクレベルの魔物が次々と湧いてくるとなると非常に危険だ。

 あの道はただでさえ交通量が多くなってるのに。

 馬車に護衛の冒険者が乗ってるとはいえ、数に対しては対処できないかもしれない。

 マッシュ村付近の道にはたまに出るくらいだけらしいからな。


「リスのみんなも三匹ずつ交代でどうかな?」


「そうしようか。じゃあ今日はとりあえず十八時まで頼む。現地休憩用に馬車を一台置いておこう。いや、トイレ馬車の予備も持っていこうか」


 長期戦を覚悟しておかないとな。


 ララはメタリンのご飯の準備に入ったようだ。

 さて、アナウンスを入れるか。


「ピンポンパンポン……おはようございます。ダンジョン管理人です。早朝から失礼します。本日は5月1日木曜日、天気は快晴です。突然ですがダンジョン酒場より緊急依頼を出します。マルセール東にて新たな魔工ダンジョンの出現が確認されました。難易度は今までよりも格段に上がっているものと推測されます。このあと七時半よりダンジョン酒場にて緊急依頼の説明をしますので興味のある方はお集まりください。なお、覚悟を持ってお集まりください……ピンポンパンポン」


 二日前の依頼とはわけが違うからな。


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