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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第八章 犠牲と勝利
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第百六十八話 新作馬車

 クジ引きにより、依頼を受ける二組のパーティが決定した。


 一組目はティアリスパーティ。

 ジョアンさんが見事に当たりを引き当てた。

 故郷ということもあって一際思いが強かっただろうから良かった。


 二組目はサイモンパーティ。

 Eランクになったのはつい最近だが問題ないだろう。

 戦士、回復魔道士、それに攻撃魔道士が二人と、魔法に自信を持つパーティだ。


 ほかの冒険者たちはクジが外れてがっかりした様子だった。

 一応この後の流れも確認したいようであったが、さすがにここから先は細かい話になるので二組と共に場所を移すことにした。

 みんなは二組にエールを送り、ダンジョンに入っていった。

 気持ちのいい冒険者たちだ。

 もしかするとこれが最後の別れになるかもしれないけど。


「へぇ~、小屋にこんな場所があったんだ~!」


「こういうときに備えて、出発する直前のみなさんの準備場所として最近作ったんです」


 休憩小屋の入り口から遠い側、つまりマルセールに近い側に新たに部屋を作ることになった。

 馬車も何台か新しく製作したからその保管場所も兼ねている。

 普段従業員たちが使う馬車もここに入れてもらうことにした。


 レア袋が大量にある今となっては買取した荷物を馬車に直接積み込む必要はなくなったし。

 もしカトレアが来てなかったとしても、俺がもらったレア袋を使う予定だったけどな。


「では適当に座ってください。なにかお飲み物が欲しい方はそこにある魔道具で注文してくださいね。もちろん無料ですから」


 みんなは各々好きなドリンクを注文しているようだ。

 落ち着いたところでパーティ毎に分かれて座ってくれた。


「まず最初に確認ですが、二組別々で行動されますか? それともいっしょに行動されますか?」


 二組は顔を見合わせる。

 そして最初にティアリスさんが言葉を発した。


「いっしょでどうかな?」


「そうだな。こちらとしても前が二枚も増えると助かる」


 答えたのはサイモンさん、攻撃魔道士の男性だ。

 年齢はお兄さんたちと同じだった気がする。


 ほかのメンバーも一様に頷いているようだ。


「じゃあそれで決まりですね。馬車の準備も少なくすむので助かります」


「えっ!? 馬車も貸してくれるの!?」


「もちろんです。じゃなければこんな部屋に案内しませんよ」


 そういやさっきの説明で言ってなかったな。

 もしかしてみんな馬車は自分たちで手配していくつもりだったのか?

 なのに2000Pでも納得してくれてたのか。


「馬車を引くのはウェルダンです。だからすぐに着きますよ」


「「「「えっ!?」」」」


「「「「やった!」」」」


 みんな一度は乗ってみたかっただろうからな。

 マルセールまでの帰り道では何度も追い抜かされてたはずだし。


「馬車の話は最後にするとして、まず物資をお渡しします。じゃあミーノ、頼んだ」


「はい。私がお渡しするのは食料です。こちらをどうぞ」


 この場はミーノに任せて、俺は一歩下がろうか。

 みんなはミーノがなんでここにいるかをわかっていたことだろう。

 ウチの厨房の総責任者だからな。

 ……いや、なんとか統括マネージャーだっけ?

 みんな気分で口々に役職名を付けるからよくわからん。


「え……これなに? 採集袋に似てるけど……」


「それはレア袋と言う物です。採集袋の簡易版で、外でも使える物と思ってください」


「「「「えっ!?」」」」


「「「「凄い!」」」」


 ふふっ、隣のカトレアも笑っているようだ。

 この声が聞きたかったんだろう?


「ですがこの袋に状態保存の効果はありません。なので容量だけに特化した物とお考えください。その代わり全ての料理に状態保存をかけてあります。中身のリストもお渡ししますのでそれぞれのパーティで中を確認してください」


 そしてミーノが食料リストを読み上げていった。

 もちろん食料はパーティ毎に準備してある。

 これが争いの種にならないとも限らないからな。


「これだけあればどれだけ食べられても最低三日分はあるはずです。足りなくなった場合は自分たちで調達してください。もし残った場合はお好きにしてください」


「いやいや……これ余裕で一週間分はあるでしょ……」


「だな……ありがたいが」


 それとドリンク類を袋に入れてもこぼれない蓋付きの容器を新しく開発したんだ。

 これは今後ウチのダンジョン内に持っていくときでも流行りそうな気がする。


「では食料係からは以上です。次はアイテム係のカトレアさんお願いします」


「はい。私がお渡しするのは回復アイテムです」


 そう言ってカトレアはレア袋を二組に渡した。


「ポーション50本、ハイポーション20本、エーテル30本、ハイエーテル20本、解毒ポーション20本が入っています。こちらも足りなければ調達してください。余った分はご自由にお使いくださいね。簡単ですが私からは以上です」


「……エーテル多くない?」


「というかこれだけで……2500Pだぞ……」


「町で買ったとしたら……考えただけでこわくなるからやめとこ」


 予定よりエーテルが多いな。

 サイモンさんパーティに合わせたのか。


「さて、物資は以上になります。必ずパーティ内で管理してください。余裕があるからと言ってなにも考えずに食べたり使ったりしてるとあとで困ることになるかもしれませんよ? あ、物資内容は依頼毎に変わりますので今回の内容はご内密にお願いします」


 物資を期待して依頼を受けられても困るからな。


「では次に馬車について説明させていただきます。じゃあカトレアとモニカちゃん、よろしく」


 モニカちゃんが一歩前に出た。

 カトレアじゃなくてモニカちゃんが説明するのか。


 みんなはモニカちゃんを見て不思議な顔してるな。

 モニカちゃんと会う機会なんてバイキングのときくらいだからな。

 ウチの従業員じゃなく冒険者だと思ってる人も多そうだ。


「みなさん初めまして、モニカです。カトレアとはパルドの錬金術専門学校で同期入学なんです。学校を卒業してからは錬金術師ギルドで働いていました。でも二週間ほど前からここで……」


「モニカちゃん、自己紹介はいいですから説明をお願いします」


「あ……えっと、私からは馬車について説明します」


 みんな興味津々そうだったのに。

 でも錬金術師だと知るとやはり驚くんだな。

 さすがみんなの憧れの職業ってだけはある。


「まずダンジョン入り口まではそちらのウチの従業員が使ってる物と同じ馬車で向かってもらいます。八人乗っても大丈夫です。そしてダンジョンに着きましたら、ウェルダン君の馬具を取り外してあげてください。そのあと、こちらのレア袋に馬車を収納してください」


「「「「えっ!?」」」」


「「「「馬車が入るの!?」」」」


 入るんだなこれが。


 モニカちゃんは実際にやって見せるようだ。

 そして入ったことをみんなに確認してもらい、馬車を袋から出して戻ってきた。


「この袋は今の馬車専用です。そして袋はもう二つあります」


 今ので馬車の説明は終わりと思っていただろう。


「まずこちらの袋には小さな馬車が入っています。これも実物を見てもらいましょうか」


 するとまた後ろに行き、馬車を一台出した。

 さっきいっしょにやれば良かったのに。


「「「「おぉ~!」」」」


 ふふっ、どうだ?。


「中をご覧ください。こちらは四人乗りを想定しています。四人乗りと言いましてもコンパクトさが売りですので四人全員が同時に横になって寝ることは不可能です」


 この馬車はただ小さく作っただけじゃない。

 凄く頑丈に作られてるんだ。

 360度どこから攻撃を受けてもすぐには壊れないようにな。


 だが木だけじゃなくて鉱石も使ったりしてるからその分かなり重いけど。

 馬が二匹程度じゃ引けても全く速度が出ないだろうな。

 でも新しくてカッコいい馬車だからメタリンもウェルダンも嬉しがってた。


「この馬車はダンジョン内での使用を想定して作ったものです。2パーティでの攻略だとより効果があるかもしれませんね」


「なるほど。順番に休憩することもできるわね」


「馬車の中から攻撃や回復だってできますね!」


「小さいから馬車の周りでの連携も取りやすいな」


「……というかカッコ良すぎないか?」


 そうだろ?

 なんせ光ってるからな。

 目立つと敵が襲ってくる可能性も考えて馬車全体を覆うシートもフィールドに合わせて何種類か作ったんだぞ。


「モニカちゃんさん、これなんの素材を使ってるんですか?」


「え……ちゃんさん……」


 まさかジョアンさんはモニカチャンまでが名前だと思ってるのか?

 俺が普段誰かをちゃん付けで呼ぶことなんてないからか?

 なんか知らないけどモニカちゃんの場合、モニカちゃんまでをワンセットにしたい気分なんだ。


「……まぁいいですけど。それよりどうしましょうかロイス君?」


「う~ん、まぁいいでしょう。その馬車の素材は……」


「「「「……」」」」


「……木と」


「「「「……木と?」」」」


「…………ミスリルです」


「「「「ミスリル!?」」」」


 そりゃ驚いてもらわないと困る。

 こんな馬車いったいいくらになるか想像もできないだろ?

 カトレアとモニカちゃんが何度も何度も試行錯誤して完成させた代物だぞ?

 もちろん組み立てはドラシーだけどな。


「だからちょっとの攻撃を受けたくらいでは壊れないはずなのでご安心ください。ではモニカちゃん、続きを」


 いや、みんな驚きすぎだから……。

 そんなことより早く準備しないとさ。


「では次のレア袋の馬車も出しますね」


 そしてモニカちゃんはもう一台馬車を出した。

 こっちはさっきのとは違って見た目は普通の馬車だ。

 みんなは安心したような表情を見せる。


「こちらはトイレです。男女別になっております。前半分は女性用、後ろ半分は男性用です。あ、排泄物処理は気にしなくて大丈夫です。レア袋と同じような機能が付いてますので。もちろん水も大量に積んでありますのでご心配なく。ちなみにどの馬車も連結できるようになっています。例えばこのミスリル馬車と……」


「「「「……」」」」


 ……驚きすぎて声も出なくなってしまったようだ。

 それを気にすることなく連結をしてみせるモニカちゃんもなかなかやるな……。


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