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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第八章 犠牲と勝利

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第百六十七話 ボワールの町からの依頼

「ピンポンパンポン……おはようございます、ダンジョン管理人です。本日は4月29日火曜日、天気はあいにくの雨。まだ七時半ではございますがダンジョン酒場よりお知らせです」


 俺、雨ってそんなに嫌いじゃないんだよな~。


「昨夜、マルセールの冒険者ギルド経由にて依頼が届きました。依頼内容は……魔工ダンジョン討伐です」


 あ、みんなが立ち上がった。

 水晶玉にはバイキング会場が映っている。


「なお、この依頼の受注はEランク以上の方に限定させていただきます。興味がある方はこのあと七時四十五分にダンジョン酒場にお集まりください。では失礼します……ピンポンパンポン」


 あ、みんな走ってバイキング会場から出ていった。

 食事のときに走るのはやめてほしいな……。


 七時四十五分直前になるのを待ち、家の廊下からダンジョン酒場へ転移した。


 おぉ~、人がいっぱいだな~。

 Eランク以外の人は遠慮して後方に集まっているようだ。

 パーティ酒場のほうのテーブルも埋まってるな。

 八時前にダンジョン酒場を待ち合わせ場所にしてるパーティも多いからな。


「ロイス君! どうやって決めるの!?」


 当然のようにカウンターに一番近いテーブルを陣取ってるな……。


「ではみなさん、適当に席にお座りください。放送魔道具使いますからダンジョン酒場内であれば離れた場所でも大丈夫ですよ。できればパーティにお願いしたいので、パーティで話せる場所にお願いします」


 こんなこと言わなくても全員パーティで座ってくれてるけど。

 Eランク以上でソロの人は今のところいないし。

 それどころか全員四人パーティだからな。


「時間になりましたので始めさせていただきます。先ほども言いました通り、当案件はEランク以上の方のみ受注可能ですのでご了承願います。Eランクに達してない方も聞いてくださる分には構いませんので、できればお静かに願います」


 初級者たちも空いてるイスに座り出した。

 受注できなくてもやはり興味はあるようだな。

 いずれは自分たちも受けることができるようになるんだから聞いておいて損はない。

 というよりも単純に魔工ダンジョンに興味があるだけかもしれないが。


「今回の依頼内容はボワールの町周辺に出現した魔工ダンジョンの討伐です」


「「「えっ!?」」」


 ん?

 ジョアンさんのほかにも何人か反応したな。

 というかみんなマルセール周辺の魔工ダンジョンと思ってたのかもしれない。

 さっきはボワールなんて言わなかったからな。


「まず依頼を受けた経緯をお話しますね。昨夜のことですが、マルセールから通ってるウチの従業員が家に帰った際にマルセールの冒険者ギルドの職員から声をかけられたそうです」


 その職員は道具屋に相談に来ていたらしい。

 もちろんヤックが帰ってくるのを知っていてのことだ。

 直接俺のところに来る勇気はないだろうからな。

 そのあとヤックと店長さんが俺のところに来たんだ。


「ボワールの冒険者ギルドはマルセールの評判を聞いて依頼をしてきたそうです。ですがマルセールを拠点にしてる冒険者は多くないですからね」


 というかいるのか?

 マルセールの冒険者ギルドは組織として成り立ってるのだろうか……。


「どうやら一か月もの間討伐されていないようです。話を聞く限り3月末にララたちが討伐した王都パルドの魔工ダンジョンと酷似していると思われます。魔王はパルドで上手くいったからそのコピーを各地に出現させたようですね」


「「「「一か月……」」」」


「「「「魔瘴は大丈夫なのか……」」」」


 うん、俺と同じ感想だ。

 まずそれが気になるよな。


「みなさんの懸念は当たっています。中級者パーティ数組に依頼したようですが失敗に終わったそうです。だからわざわざよその町の力を借りることにしたようですね。それにダンジョンに入ったっきり、一向に戻ってこない冒険者も数人確認されているようです」


 ……顔をしかめてる人が多い。

 ダンジョンから戻ってこないという意味がわかってるんだろう。


「それもあって今は完全に立ち入り禁止にしたそうです。ただダンジョン周辺は魔瘴が濃くなり拡がった影響で魔物が湧き続けているそうなので昼夜問わず冒険者たちが戦闘を続けていると聞きました。そのおかげで町の方に被害はないそうです」


 ジョアンさんはホッとしたようだ。

 そりゃ家族が心配だろうからな。


 でも元々魔物が町に入ってくることはめったにないらしいぞ。

 町とか村はそういう場所を選んで作られてるんだってさ。

 つまりマナみたいなもので多少は守られてるってことだな。


「では簡単にですがダンジョン内の構成をお伝えします。第一階層と第二階層は洞窟エリアで敵も凄く弱いです。第三階層と第四階層は草原エリアで、敵はここの地下二階程度と思ってください。そして第五階層はフロアは狭いですが敵はベビードラゴンになります」


 みんなが一瞬緊張したのが伝わってきた。

 ベビードラゴンのおそろしさはよくわかってるはずだからな。


「第六階層も同じでベビードラゴンのみのフロアです。出現数は少し増えるものと思ってください。確認されてるのはこの第六階層までですが、パルドでは第七階層までありました。おそらくここも同じフロア構成で、さらにベビードラゴンが増えると思います」


 ……お?

 やる気になってきたようじゃないか。

 みんなはもう立派な中級者なんだからな。


「ララとユウナはダンジョンに入って四時間で出てきました。ですがそれはピピ、シルバ、メタリンにウェルダンがいたからです。さすがに今回は同じ構成では行けませんし、みなさんもそれでは納得されないと思います」


 俺の魔物に頼ってたんじゃ自分たちの実力とは言えないからな。


「食料や回復アイテムなどの物資はこちらで準備します。詳細は依頼を受けられた方に説明しますね。なお、依頼達成条件は水晶玉をここに持ち帰ることです。ボワールやマルセールの冒険者ギルドには絶対に渡さないようにしてください」


 じゃないと赤字になってしまうからな。

 こっちもただ慈善事業でやってるわけじゃないんだ。

 冒険者も命をかけて行くわけだし。


「報酬は以前にお伝えしたようにダンジョン内部の構成をこちらで確認させてもらってから決めます。仮にパルドと同じ規模だとするとお一人あたり2000Pを想定しています」


「「「「2000P!?」」」」


「「「「四時間で!?」」」」


 四時間なのは魔物たちがいたからだからな。

 それにボワールまでの往復の時間も考えてくれよ。


「それと宿屋の宿泊日数は依頼に出ている間は無料で延長させてもらいます。ですのでどれだけ時間をかけていただこうが気にされることはありません。ただし、報酬はダンジョンまでの距離とダンジョンの規模によって決めますから日数が延びようと増えることはないです」


 実際のところどれくらいで帰ってくるだろうか?

 距離的にはパルドよりは少し近いらしいからな。

 さすがに一日でというわけにはいかないか。


「では依頼内容については以上になります。みなさんが行かれるところは魔王が作った魔工ダンジョンです。人も何人も亡くなってます。みなさんが無事に生きて帰ってこれる保証はどこにもありませんし、私たちが保証することもできません。それでも構わないと言う方のみ、依頼をお受けください」


 ……そんな覚悟くらいとっくにできてるか。

 初級者たちはまだそこまでの自信も覚悟もないだろう。


「……ではみなさん全員に行ってもらいます……と言いたいところですが、そういうわけにはいきません。多ければいいってわけでもないですからね。それはみなさんが良くご存じでしょう。よって依頼を受けていただくのは2パーティ最大八人までとさせていただきます」


「「「「2パーティか~」」」」


「妥当だと思う」


「統率がとれないと意味がないですしね」


「管理人さんが言うことが正しいに決まってる」


 不満はなさそうだな。


「では今からその2パーティを決めます。私が指名してもいいんですが、みなさんの実力にそこまで差はないのでここは公平にいきましょう。各パーティの代表者の方一名、前に出てきてもらえますか?」


 ここで俺の横にカトレアが来た。

 そして棒が十数本入った小さな箱を俺に渡してくる。

 ……うん、しっかりパーティ分あるな。


「クジでいきましょう。棒の先が赤かったら当たりです」


 ハズレでも文句はなしだぞ。


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