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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第七章 家族だから
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第百六十五話 大量発注

 カトレアの知り合いだというので、とりあえず小屋に入ってもらうことにした。

 今日は日曜だし、もうすぐバイキングが始まる時間だからかダンジョンにはもう誰もいないしこの小屋にも誰も来ないだろう。


「で、俺にはなにも話せないのにカトレアには話せるんですね」


「いや……カトレアちゃんも依頼者みたいなものだからさ……」


「ロイス君、もうやめてください。モニカちゃんたちがこわがってますから……」


 ふん、錬金術師二人がなんで俺をこわがる必要があるんだ。

 それに俺をこわがってるんじゃなくて魔物たちをだろ。

 今も俺の肩の上にピピがいて、テーブルの上にはリスたちが寝てるからな。


「じゃああとは勝手にやってくれ」


「え……はい、わかりました。ではオスカルさん、例の物を確認させてください」


「あ、あぁ……。この袋三つだよ。中身を確認してくれ。嬢ちゃん、リストを頼む」


 モニカちゃんとやらが何十枚……いや、百枚以上はありそうな紙の束を出した。

 しかもオスカルさんが差し出してきたその袋はレア袋じゃないか。

 それを三つも使うなんていったいなにが入ってるんだ?


「モニカちゃん、信用していいんですね?」


「もちろん! みんなで一冊一冊中身も確認したからね!」


「そうですか。では確かに受け取りました。代金はおいくらでしょうか?」


「それはこっちの仕事だな。えっと……大量発注による割引をして……40万Gだな」


「40万G!?」


 なにを言ってるんだ?

 40万Gだと?

 4万Gじゃなくて?

 もしかして葉っぱか?

 そんな高い葉っぱともなるとヤバそうなニオイがプンプンするぞ……。


「ロイス君、ダンジョンのお金を勝手に持ってきましたがいいですよね?」


「はっ!? ダンジョンのお金だと!? ちょっと待て! いったいなに買ったんだよ!? ララには言ってあるんだろうな!?」


 なに勝手にダンジョンのお金でそんな高い買い物してるんだよ……。

 さすがに40万Gなんて買い物するんなら相談しろよな……。

 宿屋を建てる前だとそんな大金とても払えなかったぞ……。

 今だってみんなが急に全Pを換金するって言ったらどうするんだよ……。


「前に言ったじゃないですか? 本ですよ、本」


「本? ……あの魔道士のために買うって言ってたやつか?」


「はい。まさかこんなに早く届けてもらえるとは思っていませんでしたが」


「……いやいや、ちょっと待て。本だろ? なんで本がそんなに高いんだよ? 一冊100Gかそこらって言ってなかったか?」


「……せっかくなので少し多めに買ったんです」


「多め? 多めってお前……40万G分となると……え……嘘だろ?」


 俺の計算がおかしいのか?

 確か錬金術師がコピーするとか言ってたやつだよな?

 作業費や運搬費を含めての料金とはいえ数がおかしくないか?

 というかレア袋での運搬なんだから激安だよな?

 いや、運搬費なんてどうでもいい。

 それより作業費だ。

 いや、作業費なんてのもどうでもいい。


「いったい何冊買ったんだよ?」


「……3000冊です」


「は…………3000? ……3000冊だと? ……多くない?」


「だって図書館ならそれくらいは欲しいですもん……」


「欲しいですもんて……」


「それに王都図書館では置いてない本もかなり入手してきてもらったんです。それこそ錬金術師ギルドにしかないような本とか。あとは魔道士向けのお高いお店のとか……そういった本は一冊200G以上するものもいっぱいありますし……きっと凄く割引してくれてるんだと思います」


 ……でもよく考えると図書館ってのは本当はもっと本が多いんだよな?

 ウチが買ったのは魔道士関連の本だけだし。

 でもそれだけで3000冊もあるのか。

 魔道士ってのは奥が深いんだな。

 まぁこれでララやユウナ、魔道士のみんなが喜んでくれるなら安い買い物か。


「そうだな。3000冊が40万Gなら安いな。じゃあ支払いを頼む」


「「「「え……」」」」


「ふふっ、さすがロイス君です。では少しお待ちください」


「いやいや……」


「切り替え早すぎだろ……」


「カトレアもなんで勝手にそんな大量発注したの……」


 カトレアはレア袋から次々お金を取り出していく。

 そしてオスカルさんとオッツァさんはそれを数える。


「……確かに40万G。じゃあこれ領収書ね」


「はい。ありがとうございます。またお願いしますね」


 そういや錬金の素材とか杖とかも仕入れてもらうって言ってたな。

 それもこの人たちに頼むわけか。

 だからレア袋を渡してるんだな。


「でもなんで錬金術師の方まで来る必要があるんですか?」


「錬金術師ギルドでの決まりでして、高額の商品をご購入されたお客様のところへは納品まで付きそうことになってるんです」


 もう一人の錬金術師の人が初めて喋った。

 この人のほうがモニカちゃんより年上っぽいな。


「へぇ~。お忙しいでしょうにわざわざこんな遠くまですみませんね」


「いえいえ、こちらこそご購入ありがとうございました」


「ご丁寧にどうも。では暗くならないうちにマルセールまでお戻りください。魔物は出ませんのでご安心を」


 あ~、今日も疲れた。

 そろそろ美容院は営業終了の時間か?

 ということは夕食バイキングの時間だな。

 今日は刺身の気分だ。


「ん? どうされました? まだなにか?」


「え……いや……」


「あ、ロイス君、ここに宿泊してもらってはいかがですか?」


「なに言ってるんだよ。ウチなんかの冒険者向けの格安宿よりマルセールの高級宿に泊まりたいに決まってるだろ」


「……そうなのでしょうか?」


「いや! そんなことないからぜひ泊めていただきたい!」


「頼むよ! 俺たちは冒険者じゃないけどさ、いいだろ?」


「俺たちは冒険者だから泊まってもいいよな?」


「私もカトレアとお喋りしたいです!」


「私も噂のダンジョンの宿屋に泊まってみたいです! 魔道具にも興味があります! 明日ならスピカさんにお会いできたりしますか?」


 ん?

 本当にウチに泊まりたいのか?

 野蛮な冒険者たちがいっぱいいるんだぞ?

 それにこの人、スピカさんに弟子入りしたいとか面倒なこと言わないだろうな……。


「う~ん、本当にいいんですか? なら構いませんけど。じゃあカトレア、タダでいいからEランクの部屋七つ準備できるかフロントで確認してきてくれ」


「はい。来客用の指輪も持ってきますから少しお待ちくださいね」


 カトレアはまず家に指輪を取りに戻ったようだ。


「そのEランクの部屋っていうのは普段いくらするんだい?」


「一泊600Gです」


「「「「600G!?」」」」


 ん?

 この反応はどっちだ?

 高いってことか?

 でもこの人たちお金持ちなんだよな?

 ならそんな安い部屋に泊まらせやがってってことか?


「今はEランクが最高の部屋でして。ウチで中級者レベルに認定されると強制的にEランクの部屋に泊まることになるんです」


「冒険者に600Gが払えるのかい?」


「600Gなんて宿屋泊まったことないよ……」


「「「無理だって……」」」


「え? 高いんですか?」


「たまの贅沢だからいいんじゃないですかね?」


 高いのか。

 でも錬金術師二人は別にそうは思ってなさそうだな。

 というより宿屋の相場というものを全く知らなそうだ。

 錬金ばかりしてるとカトレアみたいになるぞ。


「お待たせしました。お部屋の準備ができましたのでこちらへどうぞ」


「え? なんでそっちから来るんだ?」


「ちょうど夕食バイキングも始まってますので部屋に荷物を置かれたらすぐロビーに集合にしましょう」


「え? バイキング?」


 みんなカトレアに言われるがまま宿屋に入っていった。


 ……やっぱり俺は家に戻ろう。

 たまには家でララがなにか作ってくれないかな。


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