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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第七章 家族だから
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第百五十三話 葉っぱマニア

「ヤバいでしょこのエリア……」


「前より敵増えてませんか……」


 スピカさんとカトレアは地下三階魔物急襲エリアの様子を見ていた。

 そういえば地下四階についても海フィールドってことしか知らないんだよな?

 それならこのまま見てもらおうか。

 マリンは二人の様子をニヤニヤしながら見ている。


「お兄ちゃん、カフェラテ飲む?」


「ん? じゃあ頼もうかな」


「うん! ホットでいいよね!? 師匠もコーヒー飲む?」


「うん、お願いね」


「マリン、私にもカフェラテを」


「うん!」


 といってもボタンを押すだけだけどな。

 そしてすぐに届いた。

 マリンはいつも通りバナナジュースを頼んだようだ。


「ねぇロイス、このエリア明らかにこないだのパルドの魔工ダンジョンの第六階層超えてるわよね?」


「そうなんですかね~。俺は直接見たわけじゃないですけど」


「まだこのエリアにいるってことはこの子たちみんな初級者なんだよね?」


「そうですよ。この程度に苦戦しているようじゃ中級者とは呼べません」


「そうなのかな……パルドの中級者ってなんだったのかしら……」


「師匠、気にしたら負けです。勝ちがあるわけじゃありませんけど」


 あ~カフェラテ美味しい。


「ここを突破できたんならあの第六階層くらい楽勝よね」


「あの、さっきから第六階層って言ってますけど、第七階層まであったらしいですよ?」


「「えっ!?」」


 やはり知らなかったのか。

 人間が入った形跡がないってシルバたちの見立ては正しかったんだな。


「まぁフロア自体はほとんどコピーだったみたいですけど。ベビードラゴンの数は一番多かったって言ってましたね」


「「……」」


「お兄ちゃん、ララちゃんたちのは見ないの?」


「今は二人に地下四階までの道を見てもらおうじゃないか。せっかく俺とマリンでテストもしたんだからさ」


「そうだね! ティアリスさんたちもうすぐ突破しそうだし!」


 そう、今見てるのはティアリスさんパーティだ。

 今日は既に1パーティがここを突破して地下四階に入っている。

 だから意地でも今日中に行きたいだろうな。


「この女の子が持ってる杖があなたの錬金したもの?」


「はい。初級雷魔法のようですね」


「……杖の持ち替えが多いわね」


「あの杖で補助魔法や回復魔法を使っても攻撃魔法を使ったときと同じように耐久度が下がりますから……」


 確かに面倒そうだな。

 そりゃみんなユウナの持ってる杖を羨むはずだ。


 でもティアリスさんが攻撃できるようになったことでほかの三人の負担が減ったことは確かだ。

 今までよりも進むペースが早くなってる。


「あ、これ行けるわね」


「はい。良かったです」


 二日目で突破できたんだから凄いじゃないか。

 しかも4パーティ目だ。


「これで地下三階は終わりなの?」


「はい。この先に転移魔法陣があるはずです……ほら、見えてきました」


「本当ね。でもその先にあるのはなに?」


「あれは…………トロッコとかいうやつでしょうか?」


「うん! あれに乗って地下四階に行くの!」


「へぇ~。面白そうじゃない」


「……ティアリスさんたちはそうは思ってなさそうですけど」


 やっぱりみんな崖の向こうを見に行くんだな。

 だから余計こわくなるんじゃないのか?


「ん? ……これは意外だな」


「なにがですか?」


「ティアリスさんがこわがるとは思わなかった。ほかの三人は楽しそうじゃないか」


「崖の向こうはどうなってるのよ?」


「それはこの後のお楽しみです。なぁマリン」


「うん! お姉ちゃんは見ないほうがいいかもね!」


「そのようですね……でも見てみたいという気持ちも少しあります」


 カトレアは苦手そうだな。

 スピカさんは喜びそうだ。


「あ、でも意外にすんなり乗ったな」


「目を瞑って乗ることにしたようですね」


 そしてトロッコは出発した。


「……なによこれ!? 最高じゃない!」


「でしょ!? 今度いっしょに乗りに行こうね!」


「いやいや、これはダメですって……とんでもない高さとスピードですよ……」


「見た今!? 一回転したわよ!?」


「きゃーっ! 楽しそう! 見てるだけでも臨場感が伝わってくるね!」


「ロイス君、いったいなにを考えてこんなの作ったんですか?」


「え? だって楽しそうじゃないか? それに地下に行かないと雰囲気出ないし」


「今更誰もそんなこと気にしませんよ……でもこれ、乗れない人いるんじゃないですかね……」


 なんだかんだ今のところ全員乗ってるからな。


「海よ! きれいね!」


「海と浜辺を上空から見下ろすのもいいよね!」


「確かにきれいです」


「もうゴールかしら!? …………え」


「きゃーっ! まさか海の中に行っちゃうの!?」


「嘘ですよね……」


 マリンは楽しそうだな。

 やはり家族はいっしょにいたほうがいいんだろう。

 心なしか俺の中でのスピカさんの印象もこの前一人で来たときとは少し変わってきた。


「う…………」


「息できるの!?」


「……」


 あ……お兄さんたちとティアリスさん、気絶してないか?

 ティアリスさんは海が見えてからようやく目を開けて喜んでたのに。

 ジョアンさんの顔色も悪い気がする。

 あ、倒れた……。


 ……まぁすぐウサギが飛んでくるだろう。

 なにかあったら俺に連絡が来るはずだ。

 でもとりあえず、初級者卒業おめでとうと言っておこうか。


「どうでしたか?」


「……心臓に悪いわね」


「……」


「営業時間外とか日曜日に乗っていただけますのでいつでもどうぞ」


「……見ておいて良かったわ。次は楽しめそう」


「……」


 カトレアは見てただけでもダメなのか。

 そういや初めてメタリン馬車に乗ったとき後ろで気絶してたっけ。


「あ、そうだ。スピカさんはどの分野が得意なんですか?」


「分野? 錬金術のってこと? それなら薬草学ね。得意というか好きなだけかもしれないけど」


「なるほど。魔道具系は好きじゃないんですか?」


「そんなことないわよ。私これでも色んな販売権利持ってるのよ? 私に苦手分野なんて存在しないの。この子たちにできることで私にできないことはないわ! ……とはもう言えないけどさ。まぁなにかしてほしいことあったら遠慮なく言っていいわよ。私も少しはダンジョンに貢献しないとね」


「そうですか~」


 カトレアとマリンだけじゃなくその師匠であるスピカさんも加わったんだ。

 やりたかったことを適当に呟いておけば誰かがそのうちなんとかしてくれそうだな。


「師匠……そんなこと言わないほうがいいですよ……」


「そうだよ……お兄ちゃん絶対ヤバいこと考えてるって……」


「え、そうなの……私も寝れなくなっちゃうのかしら……」


 まずはやはり魔工ダンジョン関連だな。

 色々備えておくことに越したことはない。


「スピカさんは魔法付与できないんですよね?」


「え……できないけど……」


「わかりました」


「なにがわかりましたよ? ……この子なに考えてるの?」


「それがわかれば苦労しませんって……」


「お兄ちゃんが考え事してるうちに離れたほうがいいよ……」


 でもスピカさんも自分の研究があるんだよな。

 それならあまり頼ることはできないか。

 薬草学が得意ってことは研究も薬草を使ったポーション系か?


 ……そういやドラシーがなにか言ってたな。


「そうだスピカさん……あれ?」


「用事を思い出したようです……」


「ごめんね……」


「そうか。薬草かどうかはわからないが気になることがあったんだけどな」


「え? なんでしょう?」


「そういえばカトレアも薬草好きだっけ。物資エリアの真ん中に植えた木のことなんだけどさ、あれ元々な、木工職人用の素材のための木のつもりで植えたんだよ」


「へぇ~、そうだったんですか~」


「あぁ。まだ植えてから一か月も経ってないけどもうあんなに大きくなってるんだ」


 ある程度まですぐ成長するのは予想通りだ。

 ここからはゆっくり時間をかけて太くなっていくらしい。

 ゆっくりといってもすぐなんだろうけど。


「あ、その木で作った杖ならカトレアの魔法付与も上手くいくかもしれないな」


「確かにダンジョン産の木であれば品質は問題なさそうですし、魔力伝達も上手くいくかもしれません」


「まぁその話は杖を作ってもらってからだよな。今は木じゃなくて、葉っぱのことなんだ」


「葉っぱ?」


「あぁ。ドラシーがさ、葉っぱも使わないともったいないわよって言うんだよ。でも薬草でもない葉っぱの使い道なんて俺にはわからないし。ドラシーもそれ以上教えてくれないしさ。そこでスピカさんならそんな葉っぱの使い道知ってるんじゃないかと思ったってわけだ」


「う~ん。ドラシーさんが言うんでしたら一度見てみましょうか。でも素材用の木なんですよね? いったいなんの木を植えたんですか?」


「え? 大樹だけど?」


「大樹? …………大樹って大樹ですか?」


「うん。そこにある大樹。挿し木で植えたんだ。……あ、違うぞ? 勝手に折ったりしてないからな? ドラシーにもらったんだからな?」


「…………ドラシーさんはその木の葉っぱを使ってもいいとおっしゃったんですよね?」


「ん? 木を使ってもいいんだから葉っぱならどれだけ使ってもいいんじゃないのか?」


「……師匠~! 師匠~!?」


 カトレアは大声をあげながら部屋を出ていった。


「急にどうしたんだよ? 本当に葉っぱが好きだな……」


「なんだろう? 私は薬草にはあまり興味ないからね……」


 ほかにやってもらいたいことがいっぱいあるのに。


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