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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第一章 管理人のお仕事
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第十五話 地下二階構想案

 ドラシーはなにか考えるように腕を組んで目を閉じていた。

 そして、考えがまとまったのか、目をパッと開いて話しはじめた。


「うん、というかそれがベストなのかもしれない」


「「ベスト!?」」


「えぇ、そもそも万が一の危険がないようにアタシが全ての冒険者の安否確認を常に行ってるわけでしょ? いくら魔物が命を奪うことはないといえ、このダンジョンに限らず魔物以外にも命を落とす要因は山ほどあるもの。人工ダンジョンで命を落としたとなればこのダンジョンの存続に関わることだからね。つまりここへ来る冒険者が増えて魔力となる体力をいっぱい落としてくれるのは助かるんだけど、その分アタシが監視する目も増やさないといけないから、精神的にはキツイのよね。アタシはただの魔力の塊なんだけど」


 笑ったほうがいいのか?

 魔力の塊が精神的にキツイ状態になんてなるのか?

 ……よくわからないからスルーでいこう。

 ララも同じスタンスのようだ。


「だからその指輪のアイデアはいいなと思ってね。身体状態を計測するのは簡単なことなの。ただ魔力で体を覆う必要はあるのかしら? 指輪に設定しておくだけではダメなの? そのHPを値として判断するのは指輪なんだから」


「え? 体全体の色が変わったほうが便利じゃない? HPが半分になると黄色、四分の一になるとオレンジ色、瀕死状態になると赤色とかさ。本人もわかりやすいと思うし。周りもあの人死にそうだとかわかったら助けてくれるかもしれないだろ?」


「そんなものなのかしら? ララちゃんはどう思う?」


「そうね、お兄が言うように本人もわかりやすいのはいいと思うよ。HPの色が変わったら生き延びるためにより周囲を警戒するようになって危機意識も増すようになるだろうしね。冒険者同士の助け合いの意識も芽生えるかもしれないし」


 よし、ララいい援護だ!

 自分でも危険なことをしなくなるし、冒険者同士でも助け合って危険が少なくなる!

 そして俺の仕事も減って言うことなし!

 焼肉の片付けくらい俺が全部してやるぞ!

 あっ、小屋の横に水道あるって便利だな。


「言われてみればそうね。じゃあそれで設定してみようかしら。ダンジョン全部を対象エリアにするのは実は結構魔力使うのよ。でもそうすればアタシも普段はのんびりできるようになるから頑張ってみるわ!」


「おう、頼んだよドラシー!」


「早く魔物急襲エリア行ってみたいわね! よーし、倒しまくるぞぉ!」


「!?」


 はい?

 ララちゃんそっち側ですか?

 もしかして自分が魔物を倒したいばかりに危険なエリアを考案させたのか?

 サブでも魔物が襲ってくる襲ってこないの設定はすぐ変えれるもんね。


「……ララ、遊ぶのはいいが仕事もしてくれよ?」


「遊ぶだなんて酷いな~、確認だよ確認」


「……」


「今度の日曜の地下二階変更のときに魔物急襲エリアと指輪もいっしょに導入していいよね?」


「そうだな、でももうビラは配ってしまってるぞ?」


「今日の分はいいよ。明日からの分は今から作り直すね! ドラシーあとでコピーお願い! お兄、片付けお願いしていい?」


「……あぁもちろんだ」


 自分から片付けを言いだそうとしていたのに、半ば強制的にすることになった。

 ……片付け専門の魔物とかいないかな?

 いなくてもやらせればいいんじゃないのか?


 なんてことを考えていると目の前にいたドラシーから睨まれた。

 俺の考えてることがわかっているかのようだ。


 片付けを終え、家の中へ入るとララがテーブルで待ち構えていた。


「お兄! こんな感じでどうかな!?」


「どれどれ……」



 大樹のダンジョン 地下二階リニューアルオープン!!


 日時:四月八日(月) 九時~

 ☆地下二階のフィールドを変更! 自らの目でお確かめください!

 地下一階での大好評を受け、地下二階にも様々な設備を追加!

 地下二階でも薬草採集が可能に!新たに毒消し草を追加! (※①)

 地下二階休憩エリア誕生! 大樹の水あり! もちろんトイレ完備!

 地下二階出現モンスターを以下のように変更!

  ゴブリン、ブラックドッグ、ブラウンキャット、ワシカラス、ポイズンスライム(※②)


 ☆新エリア「魔物急襲エリア」爆誕!!

  魔物のバックアタックから増援までなんでもあり!

  その名も「魔物急襲エリア」が地下二階に新設されます!

  リアルな戦場を体験できること間違いなし!


 当ダンジョンでは皆様の安心安全をモットーに運営を行っております。

 そこで、この度さらに安全な『新システム』を取り入れることになりました。

 詳細は当ダンジョンにご来場いただきご確認願います!


 料金:お一人様 50G


 ※① 枚数制限がございます。ご了承ください。

 ※② 毒の状態異常を受ける可能性がございます。解毒ポーションは各自でご用意ください。


 今後の予定:四月二十二日地下三階新オープン

 営業時間:月~土 九時~十八時 定休日:日



 うん、なにか新しいことが満載というのは物凄く伝わってくる。

 特に魔物急襲エリアの部分が凄そうな雰囲気を持ってる。

 名前は適当に思いついたのを言っただけなんだがこれで良かったのか?

 湧き水じゃなくて大樹の水って名前にしたんだな。

 毒消し草だと?

 もう栽培は始めてるのか?

 この犬と猫ってこの間ララが可愛がってたやつらだよな?

 みんな忘れずに解毒ポーション持ってくるの?

 ん? 地下三階は一週間先送りにしたのか。


 うん、もう今日は疲れたしこれでいいんじゃね?


「お客の興味を引く素晴らしい書き方だ。さすがララだな!」


「本当!? やったぁ! じゃあ明日町で宣伝してきてね~よろしく」


「なっ!?」


 なんて人使いの荒い……。

 だがしかし、そういうこともあろうかと既に手は打ってある。


◇◇◇


 翌朝、朝の日課から帰ってきた俺はピピにお使いを頼んだ。


「ピピ、道具屋と宿屋だ。道具屋の店主にはこの紙も渡してくれ。じゃあこの間の手筈で頼んだ」


「チュリッ! (お任せください!)」


 ピピは首にビラが入ったバッグを下げ、町へ向かって飛び立っていった。

 荷物に配慮してか、いつものスピードよりかはゆっくりだな。


「お兄!? なにしてるの!? 帰ってくるの早すぎない!?」


「あぁ、ピピに頼んだ」


「ピピに頼んだって……。そんなことできるの?」


「もちろんだ。ピピは賢いからな。それに一昨日行ったときに店の店主にはピピを紹介してある」


「ふーん、それならいっか」


 いいんだ?

 意外にあっさり納得してくれるんだな。


「じゃあ受付はお願いね! 水晶玉も任せるね! 私はやることあるから! あっ、朝食まだだよね? トーストでいい?」


「うん、ありがとう」


 ララは次のリニューアルのことで忙しいからな。

 なにをするのかは知らないがなにかやることがあるんだろう。


「わふっ! (ミルク飲みたい!)」


「ん? ミルクか、わかった」


 シルバも昨日一日は小屋の前で見張りをしていてくれたからな。

 午前中はほぼ寝てただけだが。

 午後はダンジョンから出てきた冒険者に触られまくってたな。

 シルバはなんの反応もせずただ寝てただけだったが。

 つまり一日中ゴロゴロ寝てたってことだよね?


「ほい」


「わん! (ありがと!)」


 わんって言っちゃったら完全に犬じゃん。


「はいお兄焼けたよ!」


「おう」


 コップにミルクを注いで、いざトーストを食べようとしたときだった。


「わふっ! (足音がする!)」


「え? まだ八時だぞ?」


 昨日も同じことがあった気がする。

 管理人室へ行き、外を見ると一人の青年がこちらへ向かってきているのが見えたので窓を開ける。


「あっ、おはようございます!」


「おはようございます。また来てくださったんですね」


 先週来たあの感じのいい青年だった。


「もちろんですよ! 本当は昨日来たかったんですけどね」


「そうでしたか。ただすみません、九時からなんですよ」


「わかってます! 早く着いても待合室があるからって聞いたんで!」


「なるほど。では先に受付されますか?」


「はいお願いします!」


「わかりました、ありがとうございます。先週と同じ説明は不要ですよね? 新しくなった部分についてだけ説明させてもらいますね」


 説明を聞くと、よりテンションが高くなった青年は駆け足で小屋へ入っていった。

 あの人はいつもあんなに元気なのかな。

 

「わふふ! (三人来た!)」


 いつの間にか外に出ていたシルバが教えてくれる。

 向こうから三人組が歩いてきていた。

 あれは……


「いらっしゃいませ、おはようございます」


「「「おはようございます!」」」


 昨日来た新米冒険者三人組だ。

 今日も来てくれたのか。


「今日もまたお早いですね」


「えぇ! 早くダンジョンに入りたくて! 今日は地下二階にも行ってみるつもりです!」


 説明をする必要はなく、料金を払うと二人はすぐ小屋へ向かった。

 ……なぜこの女性はここにいるんだ?


「小屋へは行かれないのですか?」


「迷惑かな?」


「いえ、決してそんなことはありませんが、まだ色々と準備がございまして」


「そう言われちゃうと仕方ないよね。もう少しお話したかったんだけどね!」


 そう言うと女性は小屋のほうへ歩いていった。

 ふぅ、なんとかこの場を去ってくれたようだ。

 こっちはまだ朝食に口すらつけれてないんだぞ。


「お兄、もう少し相手してあげなよ~。せっかくお得意様になってくれるかもしれないのに」


「!」


 急に後ろから声がした。

 ララはいったいなにを言ってるんだ?

 今食べないと昨日みたいに十時過ぎまで朝食がお預けになってしまうんだぞ?

 というかいつの間にか背後にいるのは心臓に悪いからやめてくれ。


「お兄、トラブルは避けてね」


「?」


 この日は二十人と一人分の冒険者が訪れた。


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