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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第六章 新鮮な二日間
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第百四十九話 マリン送別会

「「「「いただきます!」」」」


 アイリス、フラン、ホルン、エルルを加え、バイキング会場でまず八人での食事会が始まった。

 マリンの送別会だ。

 厨房組はまだ働いてるから後での合流になる。


「やっぱりお刺身って美味しいね! 魔力もたっぷり!」


「今マリンちゃんが食べたヤリイッカ、結構強いんだよ……」


「槍がおそろしいのです……もし私が前衛だったら体に穴が開いてたかもしれないのです……」


 でもそんな魔物相手によく二人でやってるよな。

 そろそろほかに仲間を見つけてもいいんじゃないかと思うんだけど。


「それはこわいね……じゃあミズダッコはどうだったの?」


「ミズダッコは……気持ち悪い」


「ララちゃんなにも考えずに無心で片っ端から足を斬ってたのです」


「そうなんだぁ……でも美味しいよ!」


 それにしてもティアリスさんたちはよくこんな10メートル級の魔物を海で倒すことができたよな。


 船に乗って沖まで出たとか言ってたけど、まずその船が心配になるぞ。

 でもジョアンさんがいれば船からの遠距離攻撃が可能か。

 ティアリスさんの補助魔法で攻撃力を上昇させたんだろうな。

 船に襲いかかってきたならお兄さん二人の出番だし。

 なんだかんだバランスがいいんだよなあのパーティは。

 惜しむなら攻撃魔法が使える人がいないってことか。

 五人目に攻撃魔道士を入れたらいいのに。

 でも五人のパーティなんていないんだっけ。


「お兄ちゃん!? 聞いてる!?」


「え? ……なんだっけ?」


「もぉ~! 今度から毎月ピピちゃんにお刺身も届けてもらっていいかなって話!」


「あぁ、もちろんだ。翌月食べたいものをリストに書いて渡せばいい。それよりピピのあのレア袋、ウェルダン用にも作ってくれないかカトレアに頼んでくれないか? 馬車が入るくらいの容量な」


 なんとカトレアはピピ用サイズの袋を作ってピピに持たせてたそうだ。

 状態保存の効果はないが、中身の容量はそれなりに入るからなにも問題ない。

 それと袋っていうのも味気ないので、レア袋と呼ぶことにした。

 カトレアのレアと貴重って意味な。


「わかった! でも誰にも言っちゃダメだからね!? 販売権利はお姉ちゃんにあるから問題ないけど、タダであげてることがわかったらお姉ちゃんのところにみんな殺到しちゃうんだからね!?」


「あぁ、たぶん大丈夫」


「たぶんじゃなくて絶対じゃなきゃダメなの!」


 かなり貴重な物らしい。

 販売権利とかのことはよくわからないが、カトレアがくれるんだから問題ないだろう。


「ねぇマリンちゃん、次はいつ遊びに来る?」


「学校の前期が終わってからだからたぶん早くて八月とかかなぁ? 今度からは夏休みも二か月近くあるの! お店の仕事が忙しかったらすぐには来れないかもしれないけど絶対また来るからね!」


 夏休みだけじゃなくて春休みも二か月近くあるらしい。

 マリンが今度から行く学校だけじゃなくて専門学校はどこもそうなんだってさ。

 ということは年間八か月しか学校に行かないわけだ。

 みんな休みの間は遊ぶんだろうな。

 その期間中にウチのダンジョンに稼ぎに来ればいいのに。


 でもマリンがまた来てくれるのはありがたい。

 だから次の地下五階オープンは九月を目標にしようと思う。

 ただもうほかはやりつくした感があるよなぁ。

 逆に言えば不足してるものはないってことなんだろうけど。

 今後みんなの驚く顔が見られる機会が少なくなるのは寂しいな。

 その分地下五階に全力を尽くせってことか。


「なぁ、王都には魔道士向けの学校だってあるんだよな?」


「うん! ここに来てる人だってそこの出身者何人かいるみたいだよ!」


「そこも三年行くんだよな? となると普通に卒業したとしてウチに来るのは十九歳になる年からか。それなら三年早くここに来て独学で勉強しながら実戦経験を積んだほうが効率的だと思うんだけどなぁ」


「お兄ちゃん、効率効率って師匠にそっくりだね……」


 だってマリンだって錬金術専門学校に行くのは無駄だって言ってたじゃないか。

 スピカさんも効率的だからこそ凄腕の錬金術師って呼ばれるようになったんじゃないのか?


 でもここで独学っていうのも難しいよな。

 十六歳からここに来てる魔道士はほとんどがここに来るまでに少しは魔法を使えるようになってるし。

 冒険者の道に進もうと早くから決めてたからできることだ。


 今日来たカトレアの知り合いの魔法が使えないっていう子はどうやって覚えるんだろうか?

 回復魔法ならユウナに聞いたりするのか?

 それとも本を読んで覚えるのかな。


 ……あれ?

 ほかの魔道士はここでどうやって新しい魔法を覚えていってるんだ?

 剣術などとは違って戦えば上達するってわけでもないよな?


「ララ、どうやってあんな魔法を覚えたんだ?」


「え? 今ご飯中なんだからそんなの後でいいでしょ。それより私はカトレア姉に食べてもらう海鮮料理を考えてるんだからね。ただのお刺身じゃ私の料理じゃなくてもいいわけだし」


「それなら来週から出す予定のアジジの南蛮漬けやサババの味噌煮でいいんじゃないか?」


「あれはハナちゃんが作ったやつだもん。それにあれ以上の味をオリジナルで出すっていうのも難しそうだし」


「じゃあヤリイッカそうめんは? あの細く切ったやつ。あれ食べやすくて俺は好きだぞ」


「細く切っただけじゃん……でもお兄が好きならそれも来週からここで出そうかな」


「ならマリンが言ってたタコヤキってのは? パルドでは路上で売ってたりもするらしいぞ」


「それならカトレア姉は知ってるってことじゃん……まぁ今度作ってみるけどさ」


「あ、そういや魚屋のおじさんが言ってたけど、エビチリってのはどうだ? エビマヨってのもあるらしいぞ」


「え、なにそれ? 作り方聞いてるの? ならあとで教えてね!」


「お兄ちゃん、まだここの料理増やすつもりなの……明日までに魔道具追加しとかなくっちゃ……」


 そういえば色んな魚料理を教えてもらったんだった。

 忙しすぎて頭の中のレシピが全然整理できてないけどな。


 魚屋の三人はウチの地下四階魔物リストを見てかなり驚いていたんだ。

 その中でもマグロンとエビグルマだな。

 色んな調理に使えるらしいから大人気間違いなしだそうだ。

 ドロップできればの話だが。


 カトレアは俺が海フィールドを採用しなかった場合を考えてあまり期待させても悪いと思ったのか、魔物名を五種類ほどしか言わなかったらしい。

 魚屋の三人はよくそんなんでここに来る気になったもんだ。


「ねぇお姉ちゃん、今度は私がパルドまで遊びに行ってもいいかな?」


「ん、ダメ。仕事があるでしょ」


「えぇ~~~~」


 …………ん?

 エルルがなにか懇願するかのように俺を見てきてる……。

 仕方ない、今度の会議で話そうかと思ってたが今言うか。


「……まだみんなには話してなかったが、今年度は三か月に一度くらい一週間の長期休暇を取得可能にしようと思う」


「「「「えぇっ!?」」」」


「もちろん給料は出るぞ。ただし、休暇はみんな交代でな。ダンジョン全体を一斉休暇にしてもいいんだが、そうするとお客が戻って来なくなるかもしれないからそれは避けたいんだ」


 従業員にはしっかり休暇も取ってもらわないとな。

 そうしないとそのうちみんな同じ仕事に飽きたり嫌気がさしてくるって言ったた。

 もちろんララが。


「てわけなんで休みたいときにはいつでも言ってくれ。そのときの仕事具合を確認してからになるから早めだと助かる」


 みんな喜んでくれているようだ。

 早速休暇の使い道を話し合ってる。

 ストアなら一週間くらい誰もいなくてもウサギたちでなんとかなるか。

 ウサータやウサッピの腕も上がってきてるみたいだし。


 この休暇案はきっと厨房組も喜んでくれることだろう。


「お兄ちゃん、ここ待遇良すぎない? お給料も聞いたけど、パルドの錬金術師の初任給と比べても遜色ないよ……」


 ん?

 初任給と同じってことか?

 それならこっちはもっと良くしていかないとダメじゃないか。


 ……いや、錬金術師と同じってことはいいってことか?

 少なくとも悪くはないってことだよな?

 パルドは物価も高いだろうし。


「ウチみたいな森の奥にある個人経営のダンジョンで働いてもらおうと思ったらほかよりも待遇を良くしないとな。じゃないとすぐに辞められてしまうんだ。だから少しでも気分よく働いてもらうために職場環境を整えることは大事なんだ」


 ってララが言ってた。

 経営者の鏡だな、うん。


「いやいやいや、みんなどう見ても満足してるでしょ……」


 そうなのか?

 ここにいる職人連中なんかほかからもっといい条件で引き抜かれるかもしれないんだからな。

 一人でも欠けたらそれだけでピンチだ。


「マリンも学校を卒業した後の進路候補としてウチを考えてくれてもいいんだぞ? って自分の店で働くために錬金術師になるんだもんな」


「うん……」


「ならなにかここで使えそうな新しい魔道具を開発したら格安で譲ってくれよな」


 マリンとカトレアがいればなんでも作れそうだな。

 スピカさんはポーション系が好きみたいだけど。

 なんでもウチの薬草や毒消し草の大半を買い取ってくれてるらしいからな……。

 販売用のポーション以外になにか研究にも使ってるみたいだ。


「……やっぱりもう少しここにいようかな」


 ……ずっといてくれていいんだぞって言いたいところだが、それはララに怒られたからな。


「夏休みなんてすぐに来るさ。それに案外学校も楽しいかもしれないぞ? 年上とはいえ新しい友達もできるわけだからな」


 これでいいんだよな?

 とばかりにララを見るが、ララはどこか違うところを見てるようだ。


「ララ?」


 ララはギョッとした表情をしている。

 なんだ?

 なにかあったのか?


「お兄……あれ……」


 俺もその方向を見ようとしたところでララが言葉を発したので再びララを見る。

 そして今度こそララの視線の先を追ってみた。


「ん? ………………あ」


 見覚えのある顔が向こうから近付いてくるのがわかった。


これにて第六章は終了です。


よろしければブックマーク、ポイント評価等していただけると嬉しいです。


また、第七章は近日中にスタートです。

よろしくお願いします。

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