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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第六章 新鮮な二日間
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第百四十八話 海鮮がいっぱい

 ほとんどの冒険者が十九時直前までダンジョンに入っていた。

 日曜日、月曜日と二日間休みだったことで体力があり余っていたようだ。

 今まで町からここまで歩いていた以上に動いたに違いない。


 みんなダンジョンから帰ってきてすぐ買取所でP交換をすませ、部屋に装備品などを置いて、十九時ぴったりにはバイキング会場へ駈け込んで来たけどな。


「おぉっ!? 海鮮だ!」


「お刺身がいっぱいある!」


「地下四階は海フィールドってことか!?」


「でも海の魔物とどうやって戦うんだよ!?」


「それより早く新鮮なお魚を食べよう!」


 そうだ、早く食べてくれ。

 肉よりもやみつきになるかもしれないぞ。


「刺身を炙ったものもあるぞ!」


「こっちは海鮮焼きだ! ホターテにヤリイッカにミズダッコだ!」


「厨房を見てみろよ!? あの焼き魚がホッケーに違いない! でけぇ!」


「天ぷらもあるぞ! エビグルマだってよ!」


「おい! マグロンの刺身の中に一切れだけトロっぽいのがあるぞ!」


「トロだと!? そんな高級品まであるのか! しかもマグロンって……」


 ふっふっふ。

 このマグロンのトロは本当にとろけるんだぞ。

 赤身の部分とトロの部分で商品を分けようとしたんだが、メロさんたちから反対の声があがったくらい高級品らしい。

 だから赤身四切れにトロ一切れという割合での提供になってしまった。


 それにしても意外に魚というか魚の魔物に詳しい人がいるもんだな。

 俺なんてメロさんやミーノがいなかったら魚のことなんて頭になかったのに。


「俺、マグロンよりこっちのブッリのほうが好きかも」


「私はこのオレンジサモンね! 脂が凄いの! ホントにとろけちゃう!」


「はぁ~、このアオサの味噌汁最高だ~」


「アサーリの味噌汁も美味いぞ!」


 そうなんだよ。

 ブッリとオレンジサモンの刺身も美味すぎるんだ。

 味噌汁もアオサかアサーリどちらにしようかつい悩んでしまう。


「エビって普通一匹丸々食べるんじゃないの? これ尻尾がないけど」


「普通のエビはそうだな。でもどうやらエビグルマってのはめちゃくちゃデカいらしい……」


「だから切り分けてるのか~納得」


「それはいいがそんな魔物と戦うことになるんだぞ……」


「……エビグルマ美味しい」


 エビグルマはララたちがいたあの第一休憩エリアから少し進んだところにいっぱいいる。

 なかなか不規則な動きをするからシルバたちも手こずってたな。


「あっ! ヒューゴさんたちが来たぞ!」


「やっぱり地下四階に行ってたんじゃないですか! さすがです!」


 まるで英雄だな。

 というよりほかがだらしなさすぎるんだ。

 まぁおかげで装備品は売れたみたいだけどさ。

 でも決して装備品を売るために魔物急襲エリアを強化したわけじゃないからな?


「いえ、ララちゃんとユウナちゃんには敵いません。あの二人がいなければこんなに早く地下四階に辿り着けてはいなかったでしょうから」


「またまたそんな謙遜を!」


 あぁ、さすがにそれは言いすぎだ。

 ララたちが先に行ったことで自分たちも少し早めに行く決心がついたってところだろう。

 次の三組目はトロッコエリアに現れることすらなかったんだから自信を持っていいと思う。


 魔物急襲エリアを突破できなかったパーティはみんな落ち込んでるのが見て取れる。

 その中でも特にティアリスさんたちか。

 いつも明るいお兄さんたちですら元気がない。

 自分たちが集めてきた地下四階の魔物を見ずに今日が終わってしまったんだからな。

 それに中級レベルの魔物の魔石を集めてきたんだから自分たちも中級レベルの実力に限りなく近いと思ってたはずだ。

 バイキング会場に出てる魚たちをどんな気持ちで食べてるんだろうか。


「ドロップ品の収穫はどうだったんですか!?」


「アジジ三匹にサババ五匹といったところでしょうか。それ以外は強くて簡単にはいきませんでしたね。あ、ちなみにドロップは一匹丸々です。どれも1メートル越えですよ」


「「「「おおっ!?」」」」


「「「「デカい!」」」」


「それでも買取額は一匹100Pなんです。まぁお肉と比べても仕方ありませんけどね」


「いえいえ凄いですよ!」


「そうですよ! マルセールには魚屋がないこともあってあまり食べないみたいですから!」


 ん?

 ……あ、そうか。

 みんなまだ魚屋がオープンすることを知らないのか。

 ここでドロップ品の買取も始めてからお肉屋とかに行くことも減ってただろうから当然かもしれないが。


 初級のアジジたちを100Pにしたのはまだ需要がわからないのと、最初だから安めに譲って町のみんなに多く食べてもらおうという意図があるんだ。

 今後の人気次第では価格が上がることだってあり得る。


「地下四階は海フィールドなんですよね!? でもどうやって戦闘するんですか!?」


 うん?

 周りのみんなが動きをとめた。

 そして聞き耳を立てている。

 そこは気になるところだろうな。


「それは……行ってみてのお楽しみにしてください。そこまでネタバレしちゃううと私が管理人さんに怒られちゃいますよ、ははっ」


 そう言ってヒューゴさんパーティは新鮮な海鮮料理を取り始めた。

 アジジの刺身、サババの炙りなどを取っているようだ。

 やっぱり自分たちが倒した敵の味が気になるよな。


 それよりナイス判断だ。

 さすがに簡単にばらしたりはしないよな。

 そうじゃないとトロッコの最後の驚きがなくなってしまうからな。

 昼食のときに言った言葉といい、あの恐怖をみんなにも味わってもらいたいだけかもしれないけど。


 でもみんなも楽しみがなくならずにホッとしているようにも思える。

 そういうところはさすがヒューゴさんだな。


「てことはさ、アジジ、サババ、アサーリ、ホッケー、ヤリイッカ、ミズダッコ、エビグルマ、ホターテ、ブッリ、オレンジサモン、マグロンの計11種類の魔物が出現するってことかな?」


「いや、ここに並んでるのは食べられるものだけだからそうとは限らないんじゃないか?」


「なるほど。俺たちも早く行ってみたいよな」


「そうだなぁ。まだ半年は先になりそうだけどな……」


 目標があればもっと早くに行けるようになると思うぞ。

 地下三階ができて実質一年近く経つんだからな。

 その間みんな地下三階の魔物急襲エリアを突破することが目標だったんだ。


 今考えればよくそれで一年近くもやってこれたな……。

 仮にも育成のためのダンジョンとして名を売ってたはずなのに……。

 それでもみんなここに通ってくれたことをありがたく思わないとな。


 さて、ララとユウナを起こしてバイキング会場に行くとするか。

 みんなより早めの十七時には帰って来たのにすぐ寝てしまったんだ。

 まだ二人は体力がそこまでないしな。

 走って山登りしただけでも相当ハードだったに違いない。

 いくら魔法で補助してるといっても疲れることには変わりないからな。


「ほら、ご飯食べに行くぞ」


「んん……腕つりそう……」


「足痛いのです……」


「そんなこと言ってもお腹は減ってるだろ?」


「今日はもうヤリイッカもミズダッコもアサーリも見たくないよ……」


「体力も魔力も空っぽなのです……エーテル飲んでも無理なのです……動きたくないのです……でもお腹は空いたのです」


 あれから戦い続けてなんとヤリイッカ2匹とミズダッコの足2本、それにアサーリ約300匹分をドロップすることに成功したんだ。

 運が良かったこともあるだろうが、それでも各10匹以上は倒したそうだ。

 もう二人は立派な中級者と名乗ってもいいと思う。

 まぁこのダンジョンの中だけの話だけど。


「じゃあ俺はマリンと二人で行ってくるからな」


「あっ! そうだった! マリンちゃん待たせてごめんね!」


「顔洗ってくるのです! 先に行ったらダメなのです!」


 ララとユウナは体が痛いのを無理して起こし、洗面所へ向かった。


「マリン、本当にバイキング会場でいいのか? ここで食べてもいいんだぞ?」


「明日の昼はここで食べるから今日はバイキングの雰囲気を味わっておきたいの」


 マリンは寂しそうな表情を見せた。

 もちろん俺だって寂しい。

 だけど俺以上にカトレアたちは寂しがってるだろうからな。


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