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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第六章 新鮮な二日間
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第百四十四話 地下三階最後の難関

 ララとユウナは無事に魔物急襲エリアを突破した。


「やっぱり少し楽勝すぎたんじゃないか?」


「「「「いやいやいや……」」」」


「それよりもうすぐだね! 楽しみ!」


 マリンは地下三階から地下四階へ入るテストをいっしょにやってくれたんだ。

 地下三階までは普通に階段を下る感じだったからな。

 今回は少し変えてみた。


「少し音を大きくしていいか? この先はもっと臨場感を楽しみたい」


 現場の反応を知りたいし。



「よし! ユウナちゃん、最後ダッシュだよ!」


「はいなのです! でも少し疲れたのです……」


「……うわ~、一番は無理だったみたい……もうゆっくりでいいや」


「ごめんなのです……」


「気にしちゃダメだよ! あっちは四人もいるんだから人数で考えると私たちが一番だよ!」


「そうなのです! 二人で突破できるパーティなんてほかにいないのです!」


「そうだよ! でもさぁ、いつもより少し敵が多くなかった? それに距離も長く感じたし」


「そうだったのです? 最近あまり来てなかったから特になにも思わなかったのです」


 なんて鈍感なやつなんだ……。


「それより休憩なしの山登りは疲れるね。いつもドラシーに飛ばしてもらってたからかなぁ」


「もう二度と登りたくないのです」


 こいつらいつも楽ばかりしてるからな……。


「……あれ? さっきからなにしてるんだろ? なんで地下四階に行かないのかな?」


「休憩じゃないのです? その隙に抜かすのです!」


「さすがにそれはやめようよ……でもなにか様子が変ね」


「あそこに転移魔法陣があるのです!」


「え? ということはもう地下四階に入ったの? それとも撤去し忘れ?」


 ララたちは先を行っていたパーティに追いついたようだ。

 もう一組いたはずだが……地下四階にはまだ誰も入ってないようだからきっと全滅したんだろう。

 それよりやはりこのパーティが一番だったか。


「ヒューゴさん、どうしたんですか?」


「え? あぁララちゃん、お疲れ様。これを見てくださいよ」


「これ?」


 ララは冒険者たちがいた向こう側を見た。


「これは……トロッコって言うんでしたっけ?」


「そうです。きっと乗ると勝手に動き出すんでしょうね」


「……これで地下四階に行くんですかね?」


「やはりララちゃんも知りませんか。ほかに道はないですからそれしかないと思われるんですけど……」


「……その崖の先はどうなってるんですか?」


「……」


「ちょっと見てきます」


 ララとユウナはトロッコの線路をゆっくり歩いていく。

 そして端まで辿り着いた。


「……なにこれ」


「……歩いては行けなさそうなのです」


 崖の先は線路のレールだけが続いている。

 それも下へ向かってところどころ曲がってたりする空中に浮いたレールだけの線路だ。


「トロッコに乗って一気に山から下りろってことだよね?」


「それしかないのです。ロイスさんはきっと地下四階だから下にないと変だと思ったのです」


「別にここにあってもいいのにね」


「そういうところは妙に拘るのです」


 ……悪口を言われてるわけではないよな?

 それに理由はそれだけじゃないぞ。


「あのパーティはきっとこわいのね」


「情けないのです。……でも本当は私も少しこわいのです」


「……私も」


 これは意外だな。

 ララとユウナは喜んで乗ってくれるとばかり思ってた。

 面白いから何回も乗りたいって言うとさえ思ったのに。


 ララとユウナは足取りが重そうに戻った。


「乗らないんですか?」


「この男たち三人がこわがってるのよ。私は面白そうだと思うんだけどね。それに管理人さんが考えたんでしょうから安全性は間違いないでしょ?」


「それは大丈夫だと思います。きっとお兄は何度もテストしてるでしょうし。でもさすがにここから地下へとなるとかなりの高さになりますし、少し乗ってる時間も長くなりそうですね……」


 地下までと聞いて男三人は余計にこわくなったみたいだぞ。


「でもララちゃんも先を見てきたでしょう? レールが空中に浮いてるんですよ? 普段こわいなんて言わないようにしてますけどあれはこわいですよ……」


「そうだよ。こんなん無理だって……」


「なにか別の方法があるんじゃないか? 途中に違うルートがあったとかさ……」


 残念ながら別のルートはない。

 だってもしこれが魔工ダンジョンだったらどうするんだよ?

 こわいからって先に進まない選択肢なんてないだろ?


「どうしますか? まだ乗らないんでしたら私たちが先に乗らせてもらいますけど」


「え……いいですよ」


「いいんですか!?」


「やったーなのです!」


「「「「え……」」」」


「じゃあユウナちゃん! 早く乗ろう!」


「はいなのです! これで地下四階一番乗りなのです!」


「「「「え……」」」」


 こいつら……。

 わざとこわそうな演技をしてたのか?

 それとも単純に一番なのが嬉しくて恐怖心がどこかへいったのか?


 ララとユウナは遠慮なくトロッコに乗り込み並んで座った。

 前に二人、後ろに二人が乗れる設計だ。


「えっと、このスタートボタンを押すのね!」


 ボタンを押すと、二人の体を魔力で押さえつける安全装置が作動した。

 そしてトロッコはゆっくりと動き始めた。


「あっ! これ体が固定されましたよ! だから落ちたりしないはずです! じゃあ先に行ってますので早く来てくださいね!」


「お先なのです! 念のため兜や帽子は脱いだほうがいいかもしれないのです!」


「もし落ちても指輪がある限り死ぬことはないから安心してください!」


「それにきっとほかのルートなんてないのです! 乗るしかないのです!」


 トロッコはどんどん崖に近付いている。


 残された四人はそれを茫然として見送っている。

 先を越されて悔しい感情、安全装置があるとわかって安心した感情、でもやはりこわいという感情が相まって複雑だろうな。


「あっ! 来るよ!?」


「きゃーなのです!」


 四人からはトロッコが見えなくなっただろう。

 直後、叫び声が響き渡る。


「「きゃーーーーーーーーっ!」」


 これを聞いた四人の表情が気になるところだが今は見れない。


「きゃーーーーっ! 速い!」


「きゃーーーーなのです! ……風で……喋れ……ないのです!」


 やはり楽しんでるな。


「どうだ? 楽しそうだろ?」


「うん! 乗ってみたい!」


「これ、アトラクションとして最高だよ!」


「私はあまり好きではありません……」


「ん、楽しそう」


「俺は遠慮しとくぜ……」


 概ね好評のようだな。

 日曜日も乗れるんだぞ?

 ただし、このトロッコがあるエリアには地下四階に行ったことがある人しか行けないようにするけどな。

 そうじゃないと驚きや楽しみがなくなるからな。


「今、一回転しなかった?」


「したね! というかどこまで行くの? 本当に地下まで?」


「地下といえば地下だな。距離は長いけど速いからもうそろそろじゃないか?」


「ララちゃんたち、楽しんでますね……」


 やはり演技だったのか。

 そのうちもっとコースを増やせとか言ってきそうだ。


「あ、もうすぐだ。よく見ておいてくれ」


 トロッコは下りながら山と山の間を抜けていき、急に視界がひらけた。



「えっ!? 海だよ!?」


「海なのです! 下には浜辺が広がってるのです!」


「もう見えちゃってていいの!? 地下四階のネタバレじゃん!」


「地下四階は海の魔物との戦いなのです!」


「……やっぱりもう地下四階に入ってたのかな?」


「……ララちゃん……レールの先が……」


「え? …………えっ!? あぁーーーーっ!」


「ぎゃぁーーーーーーーーなのです!」


「大丈夫なの!?」


「「きゃぁーーーー……」」


 トロッコは浜辺を越えてもしばらく進み、急降下して海の中へ突入した。


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