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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第六章 新鮮な二日間
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第百三十五話 バイキング形式

 えっと、なんの話をしてたんだっけ?


 ……そうだ!

 食事について説明するところだったんだ!


 すっかりお得感もなにもなくなってしまった感じがするのは気のせいだろうか。

 そろそろみんなも疲れてきたのかもしれない。


「ここで一回休憩を入れます。トイレは後方にありますので。では五分後に再開します」


 俺もなにか飲んでこようか。


「はい、これ」


「お、気が利くな」


 ララがサイダーを持ってきてくれていた。


「ねぇ、なんで起こしてくれなかったの?」


「ん? 疲れてただろうからな。十九時になったら起こすつもりだったよ」


「ふ~ん。さっきのみんなの様子だとどうせ悪いところばかり先に言ったんでしょ?」


「当然だろ。落としてから上げるのが一番効果的なんだ」


「いやいや、お兄が楽しみたいだけでしょ……」


 ティアリスさんとジョアンさんの勘違いがなければ今頃もっと盛り上がってたはずなんだけどな。


 だがさっきのは確かに俺も悪かったかもしれない。

 ここで買取したP分だけ町の各店舗からお金をもらうというのを省いたのがいけなかったか。

 でも普通わかるよな?


 いや、さっきの説明だとダンジョンが買取したなんて一言も言ってないな。

 それなら町の店が直接ポイントで買取したって思うのか。

 ティアリスさんが言ったように今までは直接やり取りしてたわけだからな。

 でもそれじゃあ現金がどこかに消えたことになるぞ。

 いや、ポイントだけで全ての施設を利用できると言ったのがそもそも勘違いさせた原因か。


「お兄、もうさっきのことはいいでしょ。なんなら次の説明は私がしようか?」


「あぁ、頼んだ」


「え……いいの? 楽しみにしてたんじゃないの? 次は食事なんだよね?」


「そうだな。まだ通貨の話と宿屋の話が終わっただけだ」


「少し急がないと十九時に間に合わなくなるね。じゃあお兄は補足があったらお願い」


「わかった」


 流れ的にララに任せたほうが良さそうだ。

 しばらく黙って見ていよう。


「みなさん戻られたようですね。では再開します。先ほどは少し取り乱してしまい申し訳ありませんでした」


 休憩をはさんだことでみんなリラックスできたようだ。


「次は食事についてのお話です。冊子にも書かれている通り、朝昼夜とそれぞれ時間が決まってますのでご注意ください」


 朝食は七時~八時半。

 昼食は十一時~十三時。

 夕食は十九時~二十一時。


「三食とも食事会場での提供とさせていただきます。会場へは宿屋フロントの二つ隣の入り口からのみ移動が可能です。なお、料理の提供の都合上、食事会場をご利用することができるのは宿泊者のみとさせていただきますのでご了承願います。ただし、休憩小屋や宿屋ロビー、それとここダンジョン酒場内にも食事用の自動販売魔道具を設置いたしますので、宿泊者ではない方はぜひそちらをご利用ください」


 食事会場は宿泊者しか利用できないと聞いてもなんの文句もないのか。

 俺から宿屋の料金の話を聞いたあたりで帰る人も何人かいると思ってたんだけどな。

 不満がありながらその後も聞き続けてくれたのはダンジョンへ期待してくれてるからなのか。


 それとももしかするとみんな俺の説明の仕方をわかってきてるのか?

 毎回毎回ワンパターンだと思われてるのかもしれない。

 こっちのバリエーションも増やしていかないといけないのか。


「さて、冊子に書いてあるのは時間だけだと思います。次は料理の内容を少しだけお話します」


 みんなが期待した目でララを見る。


「朝食は今までの朝カフェメニューが中心になってます。でもおにぎりは10種類以上から選べたり、サンドイッチの種類を増やしたりもしました。ほかにも卵料理などがあります。白米と味噌汁などを選ぶこともできます。昼カフェメニューだったパンケーキもお選びできますね。あっ、あとカレーもありました。まだ言えない料理も何品かあります」


「これは嬉しいな!」


「朝からカレーが食べられるなんて!」


「でもこれ、何品選べるんだろう?」


「セットなんじゃないのか? 白米と味噌汁セットとかさ」


 気になって仕方がないだろう。

 さて、いよいよ言うのか?


「次に昼食ですが」


 あれ?

 ……なるほど、最後までためてから言うパターンか。


「こちらは今までのダンジョン食堂と麺屋モモのメニューが中心になってます。ハンバーガーやポテトもあります。もちろん新メニューもありますし、二日から出す予定のメニューもあります」


「二日からってことは地下四階の食材ってことだよな?」


「あぁ、間違いないだろう。それに朝食にも言えないメニューがあるって言ってたからな」


 すぐに察しがつくところはさすがだな。

 みんなこのダンジョンのことがわかってる証拠だ。


「昼食はどちらかというとお手軽に食べられることを意識してます。休憩は大事ですが長々と休むと気が緩みますからね。朝食については早起きの人はゆっくりのんびりした時間を過ごしてもらうこともできると思います。起きてまず朝食でもいいと思いますし、今までのようにダンジョンに入る準備をしてから食べるのもいいでしょう」


 じらすのがなかなか上手いじゃないか。

 みんなは早く夕食の話を聞きたいはずだ。


「さて、次はいよいよ夕食です。今までは昼食のメニューとほぼ同じでしたがそれを一新し、大幅に新メニューが増えました。それに最近私はお菓子作りにハマってましたのでデザート系も豊富です。ただ今日はまだ公開できない料理があるのは残念です。でもそれももしかしたら明日からはお出しできるかもしれませんね」


「楽しみすぎるな!」


「明日からのメニューはネタバレになるから仕方ない!」


「腹減った~!」


「毎日どのセットを頼むか悩むことになりそうだ!」


「セットにデザートも一品ついてくるのかな? さすがに別料金かもね」


「でもそれはそれでダンジョンのためになるから私は構わないよ!」


 いい冒険者たちだ。

 宿屋代でガッポリ儲けていることを知った後でもそう言ってくれるとは。

 まぁさっきのララの言い方だと魔石で赤字になってるという印象のほうが強いだろうけどな。


 ……それよりここで言うんだな?

 そして今日最大の歓喜に沸くということだよな?


「食事については以上になります。どんな料理があるかは実際に見るまでのお楽しみにしておいてくださいね! それでは食事についてなにかご質問のある方は挙手でお願いします!」


 え?

 終わり?

 実際に会場で驚いてもらうのか?


「ないようでしたら終わります。それでは次にダンジョン酒場のことについても私から説明させてもらいますね。冊子のダンジョン酒場のページをお開きください」


 ……なるほど。

 あえてここでは言わずに会場に入った後にみんながどう食事を注文すればいいかわからなくて悩んでいるところで言う作戦か。


「あーーっ!」


 急になんだよ。

 いきなり大声出すからみんなビックリしてるじゃないか。


「みなさん! 大事なことを伝えるのを忘れてました!」


 大事なことってまさか……


「先ほどの食事についてです! 大事なことなのでよく聞いてください!」


「「「「……」」」」


「実は…………食べ放題なんです」


「「「「……え?」」」」


「「「「食べ放題?」」」」


「「「「キャベツ?」」」」


「なにが食べ放題なんだ?」


「まさか……」


 みんなの反応が薄い。

 料理の話は終わったと思ってただろうからな。


 それよりララだ。

 間違いなくわざとだな。

 最初からこのタイミングを考えてたんだ。


「全部食べ放題なんです! 料理も飲み物も時間中であれば全て食べ放題飲み放題。もちろん好きな料理を好きなだけお取りいただけるんですよ? これはバイキング形式というものらしいです。ウチにご宿泊いただいたみなさまだけへの特典です! ダンジョンの宿屋では朝食も昼食も夕食も全てバイキング形式による食べ放題なんです!」


「「「「おぉっ!?」」」」


「「「「マジかよ!」」」」


「「「「すげぇーーーー!」」」」


「そんなことして大丈夫なのか!?」


「めちゃくちゃ嬉しいけどダンジョンの赤字が心配すぎる……」


「ダンジョンには悪いけど、俺、泣くほど嬉しい……」


「一生ダンジョンについていきます!」


「そうなるとさらに宿代が安く感じてしまうな……」


「あぁ、そのためにも俺たちができることは強くなって恩返しすることだけだろう」


 ……まぁ上手くまとまったみたいだからいいか。

 バイキングと知ってウチの宿代を高く思うような冒険者はいないだろう。

 みんなかなりの量を食べるからな。

 今まではお金のことを考えてセーブしてた状態でそれだから今後はどれだけの量になるかはまるで想像ができない。


「あ、最後にもう一点だけ! 食事会場から出るときに例え少量でも料理を持ち出したら即刻出禁にしますので!」


「「「「……」」」」


 うん、最後はピリッと締まったな。


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