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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第六章 新鮮な二日間
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第百三十三話 絶望からの……

 もはやティアリスさんでさえも口を開こうとはしない。

 それだけ宿屋の料金設定が衝撃的だったんだろう。


「ではウサギ君たち、みなさんにお配りしてください」


 どこからかアンゴララビットが数匹やってきた。

 そして一人ずつにダンジョン案内冊子と書かれた複数ページにも渡る冊子を配っていく。

 最初からこれを配っていればもっと話は早かったんだろうがな。

 でもそれでは面白くないし。


「お手元に冊子は届きましたでしょうか? 届いてない方はお近くのウサギ君をお呼びください」


 ……うん、大丈夫のようだ。


「では最初から順番に……といきたいところですが、みなさまは既に知っておられることばかりですので宿屋のページから行きましょう。あくまでこれは当ダンジョンを初めてご利用されるお客様向けに作ったものですから」


 みんなは無言でページをめくっていく。

 もうこんなところに泊まらずにマルセールに帰りたいと思ってる人もたくさんいるだろうな。

 でも最後まで聞いてから判断してほしい。


「先ほども言いましたランクごとの料金が書かれております。ただし、先ほどは言わなかったことがいくつかございます」


 ……あれ?

 さっきよりさらに聞くのをこわがってないか?

 確かにもっとヒドイ条件があると思うのが普通か。


「まず、宿屋の一泊分の宿泊料金には翌日のダンジョン入場料も含まれております」


「「「「え?」」」」


「「「「そうなの?」」」」


「「「「……」」」」


 少し反応があったな。

 50G得したと思ってくれたのかもしれない。

 Hランクの人からしたら宿代が150Gになったと思うだろうからな。


「次に、これは驚いてほしいところなんですが……」


「「「「……」」」」


 今度はみんなが期待の目で見てくる。

 一瞬でこんなに変わるもんなんだな……。


「宿代には……食事代も含まれております」


「「「「えぇっ!?」」」」


「「「「食事代込み!?」」」」


「どういうこと!?」


「まさか朝昼夜の三食ともなの!?」


「一食30Gとしてもそれだけで90Gもだぞ!? Hランクだと宿代は実質60Gじゃないか! 採集分だけでいけそうだぞ!?」


 ふっふっふ。

 いい感じになってきたな。

 でもGじゃなくてPで話さないか?

 さすがにまだ慣れないか。


 それに採集分だけでいけるわけないだろ。

 入場料と食費がかからないってだけで宿代が安くなったわけじゃないんだからな。

 地下一階で200P稼ごうと思ったら大変だぞ?

 採集物は薬草しかないし、敵が落とす魔石のレートは半分になったんだからな。


 だが前のようにマルセールで100Gの格安大部屋もしくは寝るスペースだけしかなく、トイレや風呂は共同で洗濯にもお金がかかる宿に泊まり、ここの入場料を払い、食事も三食節約しながら食べていたことを考えたらだいぶお得には違いない。

 食事の内容を聞いたらさらに驚いてくれることは間違いない。


 移動の時間を考えても二時間を無駄にしなくてすむ。

 魔石のレートが半分になったとしてもこの二時間は体力的にも精神的にも大きい。

 それくらい宿屋の価値は高いと思ってる。


「食事のことが気になるとは思いますが、それはもう少しあとでご説明させていただきます。お金関係のことが続き非常に恐縮ですが、宿泊者していただいた方に限り、ポーション、解毒ポーション、エーテルをそれぞれ10P、20P、30Pにさせていただきますのでぜひご活用くださいませ。なお冒険者カードでの購入でのみ適用させていただきますのでお間違いなく。現金をポイントに変換することも可能ですのでご興味がある方は後ほど買取所へお越しください」


 ポーション類がそれぞれたった10P引きとはいえかなり喜んでくれてるな。

 もちろんその分ウチの利益は減ることになるけど仕方ない。

 そこは来場客数で補っていくしかないな。


 どうやらみんなすっかり魔石のレートが半分になったことは納得してくれたようだ。

 ここからさらに畳みかけていこうではないか。


「今お話させていただいたほど詳細ではありませんが案内冊子にも記載がございますので後ほどゆっくりご確認なさってください。では次は宿屋責任者から説明してもらいます」


 リョウカが真ん中まで歩いてやってくる。

 緊張してるようだから俺も隣にいることにしようか。


「え~、宿屋責任者のリョウカです。私のほうからは受付フロントでは話せなかった宿屋の設備やシステムについてお話させていただきます」


 うん、意外にいけるじゃないか。


「まず、先ほどオーナーから説明がありました通り、宿屋の利用料金はランクごとに違う設定となっております。でもこれはただ料金が違うだけじゃなくて、部屋の広さ、設備などもランクによって違ってるんです」


「「「「えぇっ!?」」」」


「「「「どう違うんだ!?」」」」


「「「「他の部屋も見てみたい!」」」」


 まだほかの人の部屋には誰も入れないからな。

 それに同じパーティの人たち同士は同ランクって人がほとんどだろうし。


「お手元の冊子をご覧いただけますでしょうか。実はそこに全て書いてあるんです。Hランクの部屋が基本の部屋とお考え下さい。そこからランクが上がるにつれて設備が少しずつ増えていくという形になります。それでは順番に説明させていただきます」


 このほうが面白いと思うんだがみんなの反応はどうだ?

 ……冊子に集中してて下を向いてるからよくわからないな。


 リョウカの言った通り、ベースとなる部屋はHランクだ。


 Hランク:200P、6畳の部屋。

 窓なし。

 シングルベッド。

 冷蔵魔道具。

 一人用のイスとテーブル。

 洗面所には洗濯魔道具と洗面台。

 シャワー室。

 トイレ。


 これが基本となっている。

 これだけ揃っていれば生活に困ることはないはずだ。

 リョウカやシンディに言わせるとこの部屋がマルセールで200Gだとお客が殺到するに違いないそうだ。


 HランクからGランクになるのはすぐだから実はHランクは非常に少ない。

 実はさっき料金を聞いたときHランクの冒険者は歓喜してたのかもしれないな。

 しかもその後に入場料や食費込みと聞いたら魔石レートのことなんかどうでもよくなったに違いない。


 すぐにランクが上がるような人たちには関係ないかもしれないが、初心者には優しくしてあげたいからな。


 Gランクに上がるとHランクの設備に加えていくつか追加されるから格段に居心地が良くなるはずだ。


 Gランク:300P、7畳の部屋。

 窓あり。

 二人掛けソファ。

 シャワー室に大浴場行きの転移魔法陣あり。


 窓があるだけで部屋の印象がだいぶと変わるんだ。

 窓から外に出ることはできないが洗濯物を干せたりもする。

 それにソファがあると嬉しいだろ。

 しかもなんと大浴場に行けたりもするんだぞ。

 既にもう見た人もいるはずだ。

 これもまた結構広めにレイアウトしてみた。

 シャワー室から裸でそのまま行けるから楽だしな。


 Fランク:400P、8畳の部屋。

 窓二つ。

 ベランダ。

 キッチン。

 冷蔵冷凍魔道具。

 収納クローゼット。

 ソファ用のテーブル。

 景色変更。


 これだけの物が揃っていればもうほかになにもいらないんじゃないか。

 キッチンは使わない人も多そうだけどな。

 冷凍の機能は氷とか作れたりするから便利だ。

 クローゼットは嬉しいだろう。

 みんな意外に荷物が多かったからな。

 それと窓の一つはベランダに出れる大きな窓だ。

 洗濯物を干すのはもちろん、日光浴をするのもいい。

 そしてなんと窓の外の景色を変更できるようにもなるんだ。

 景色は2フィールド、各2パターンの計4種類から選択可能。

 Fランクの場合は草原か山かだな。

 窓は二つあるから違う景色を設定してもいいだろう。

 Gランクは草原の1パターンで固定だ。


 おそらく冒険者のほとんどはFランクの期間が一番長くなるはずだ。

 だからこそこの部屋を本当の自分の部屋のように思ってほしい。



 Eランク:600P、10畳の部屋。

 ダブルベッド。

 ソファ二つ。

 浴槽。

 部屋に他人を呼べる。


 中級者にふさわしい広い部屋だと思う。

 ベッドはかなり大きいし。

 浴室が広くなって浴槽も設置される。

 一人でゆっくり風呂に入りたいときもあるだろうからな。

 もちろん浴室内から大浴場へも行ける。

 外の景色も地下四階フィールドの2パターンが追加される。


 そしてなんといっても目玉は部屋に誰かを呼べるようになることだろう。

 逆に言えば初級者の間は部屋に誰も呼べないんだけどな。

 まぁそこは早く中級者になれるようにもっと修行しろってことで。

 ただし、呼べる相手は予め設定しておく必要がある。

 設定されてる間、自分と相手の部屋に相互に行き来できる転移魔法陣が出現する仕様だ。


 Dランク以上はまだ未定。

 地下五階を作るときに考えようと思う。


「部屋の景色など宿屋に関します全ての設定は私が今持っているこの魔道具で行います。この魔道具は複数台ございますので、お気軽にフロントまでお声がけください。ただし、使用できる場所はフロント近くのロビーのみに限らせていただきますのでご了承願います」


 みんなの楽しそうな感じが伝わってくるな。

 早く部屋に戻って色々確かめたいんだろう。

 おそらくしばらくはこの部屋設定魔道具も取り合いになるだろうな。


「それと、シーツ交換や掃除のために週に一度月曜日の日中にアンゴララビットが部屋に入らせていただくことになります。なのでそれ以外の日に掃除がしたい方はご自身で掃除なさっていただきますようお願いいたします。掃除道具などについてもフロントまでお声がけください。なお、シーツ交換や部屋の掃除をもっと頻繁にしてほしい方がいらっしゃいましたらご要望をお受けしますのでそれも遠慮なくフロントまでご相談ください」


 宿屋なんだから毎日それくらいして当たり前らしいよ。

 でもここはどちらかというと家に近い感じを目指してるからな。

 あまり他人……ウサギに部屋に入られるのを嫌がる人もいるだろう。

 それと自主性がなくなっても困るし。

 自分の部屋くらい自分で掃除してほしい。


「個人部屋に関する説明は以上になります。なにかご質問ございますでしょうか?」


 ……え?

 誰も質問がないのか?

 リョウカの説明が完璧だったのかそれとも案内冊子がよく作られてたのか。

 いや、リョウカだな。


「では個人部屋についての質問がないようでしたら次はパーティ部屋についての説明に入ります」


「「「「パーティ部屋!?」」」」


 次のページに書いてあるのにそんなに驚かなくても……。


 でも勝手に先のページを見ないってことがわかって良かったけどさ。


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