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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第五章 震撼

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第百十一話 調査結果

 ピピが再びここを出てから二時間後、ララたちが帰ってきた。

 そしてすぐに会議スペースで緊急会議を行うことになった。

 初めてバックヤードに来た店長さんやヤックの弟、妹は興奮しっぱなしのようだ。


「……みんなは休憩してていいんだぞ?」


「私たちも知っておいたほうがいいと思うの!」


「そうだぜ! ダンジョン出現なんてただ事じゃないしな!」


 ……俺はまだなにも言ってないぞ?

 店長さんが話したのか?

 本当にみんなお喋りだな。


「急ぎらしいから静かに聞くように。ではララ、まずは簡単に報告してくれ」


「うん!」


 そしてララの口から調査内容が報告された。

 テーブルの上には持ち帰った水晶玉が置かれている。


「体力や魔力の吸収量はどの程度に感じた?」


「ここの地下一階とほぼ同じね」


「ふむ。敵の湧く間隔はどれくらいだったんだ?」


「倒されてから約十分後かな! 湧くポイントはかなり多いよ!」


「ふむ。洞窟から外に出ることはあったのか?」


「それはなかった! 試しに何匹か捕まえて外に投げたら消滅しちゃったし! その場合は魔石も落とさなかったね」


 ……。

 投げられたスライムのことが可哀想だと思ってしまった。

 外に出たからじゃなくて投げられたダメージで消滅したんじゃないだろうな?


「ダンジョンが消滅したのはどのタイミングだ?」


「水晶玉が外に出て数秒後だね。中にいたらどうなるかはさすがに試せなかった。でもポーションを何個か残してきたんだけどそれもいっしょに消えたみたい」


「ふむ。中にいた魔物も消滅したんだな?」


「うん! でもダンジョンがあった場所は元々畑だったっぽいんだけどただの平面の更地になってた」


 もしダンジョン内に人がいた場合も消滅すると考えたほうがいいのか?

 そうだとしたら非常に危険だ。

 水晶玉の扱いを間違えれば人が消えることになる。

 ララの言うようにテストもできないしな。


 でもウチの場合はダンジョンをリセットするときなんかはダンジョン内にいた人は強制的に外に出されるって言ってなかったっけ?

 それも設定でそうしてるだけなのか?


「で、特に怪しい人間や魔物はいなかったということでいいんだな?」


「うん! ピピとシルバが周囲を探し回ったからそれは間違いないと思う! 唯一残ってた人間のにおいを辿ったら畑の持ち主のお爺ちゃんの家に着いちゃったし。自作自演だったらわからないけど……」


 う~ん、人間がシルバの鼻やピピの目から逃げ切れるとは思えないしなぁ。

 昨日の夜に作ってたとしたらもうにおいなんか残ってないものなのか?

 畑の人は今朝洞窟にも入ってるし、自作自演を疑うべきなのかな。

 でもダンジョンを作れるほどの人が畑をやるとは思えないし。

 しかもお爺ちゃんって言ったか……。


 仮に魔物が作ってたとしてもその作った魔物が見つからないのも変だ。

 もしかしてスライムたちが作ったのか?

 最奥にダンジョンコアがあったんならそう考えるほうが自然か。


 いや、魔物のダンジョンは物理的な物質でできてるって言ってたっけ?

 それなら消滅したりしないか。


 ……とにかくこれ以上はわかりようがないな。


「店長さん、こんな感じでいいですか?」


「あぁ、十分すぎるよ。ありがとう」


「水晶玉は預かってもいいですか? 少し気になることがあるので」


「あぁ。こちらとしても調べてくれたら助かるしな」


「ロイス君、これ……」


「ん?」


 テーブルの端のほうで聞いていたリョウカが紙を差し出してきた。


「……完璧じゃないか。店長さん、これをどうぞ」


「え……おぉ? 助かるよ! ありがとう!」


 書記をしてくれてたのか。

 しかも見やすいし内容もまとまってる。

 宿屋の娘ともなると普段からお客の情報をまとめたりしてるのかもしれない


「もしまたダンジョンが見つかっても水晶玉の扱いにはくれぐれも気をつけるように言っておいてください。破壊はダメです。持ち出すときも最後に外に出る人が持っててください。不安だったら触らないようにと」


「わかった。じゃあ早速報告してくるよ。こんなに早く解決するなんて驚くだろうな……」


 緊急会議は終了となった。

 そして店長さんたち三人は町へ帰っていった。

 従業員たちもそれぞれの持ち場へ戻った。

 俺とララも家に戻り少し休憩をした。


 だが会議はここからが本番だ。


 ユウナは……地下二階魔物急襲エリアにいるようだ。

 十八時ギリギリまで帰ってこなさそうだな。

 仲間外れのようで可哀想だがユウナ抜きで始めるとしよう。


「ドラシー、どう思う?」


「…………」


「ドラシー? どうした?」


 ドラシーの様子がおかしい。

 てっきり答えが出てるもんだと思ってたが。


「……もう少し様子見ね。今の時点では人工ダンジョンか魔物のダンジョンかは判別がつかないわ」


「ドラシーでもわからないのか。そういや魔物のダンジョンにもダンジョンコアがあったりするのか?」


「そんな話今まで聞いたことないから悩んでるの。今も各地にダンジョンが残ってるのがその証拠よ。今回のは外に持ち出したらダンジョンが消えたことからダンジョンコアであることは間違いないと思うんだけど……」


「聞いたことないなら人工ダンジョンなんじゃないか? 新しい仕組みのダンジョンをどこかの錬金術師が開発したのかもしれないし。そんな錬金術師ならシルバの鼻を誤魔化すことくらいできても不思議じゃない」


 自分で言っといてなんだがそうだよな。

 例えばカトレアだったらそういうところまで気が回るだろうし。

 魔物使いがいらないダンジョンを作り出してもさすがだなとしか思わない。

 このダンジョンで色々ノウハウも学んでるだろうし。


 ……まさか本当にカトレアじゃないだろうな?


「お兄、カトレア姉はそんなことしないよ」


「え……ははっ、カトレアならもっと凄い物を作るよ」


 また顔に出てしまってたか……。

 さすがにカトレアを疑うのはよくないな。

 それにダンジョンコアをそんな粗末に扱うはずもない。


 ……大事なダンジョンコアを普通こんなに簡単に渡したりしないよな?

 実験してたとしてもその成果を持ち帰りたいはずだ。

 魔力を集めるのが目的だとしても雑魚敵相手じゃすぐに最奥に辿りつかれるし。


 もしかしてダンジョンコアを破壊させることが狙いか?

 そして破壊した人間はダンジョンといっしょに消滅する。

 やはり魔物のダンジョンと考えたほうがしっくりくるな。


 とにかくドラシーにもわからないとなってはこれ以上進展は見込めそうにないな。


「吸収してみるか?」


「え!? ダンジョンコアを吸収するの? 初めてだけど……」


「それかこれでもう一つダンジョンを作ってみるか」


「え!? どうなるのかしら……さすがに私にはそれはできないわよ?」


「そりゃそうか。ダンジョンコアが別のダンジョンコアを操作するのはおかしいもんな」


「……私ももう少し柔軟に考える必要がありそうね。長く生きてると頭が固くなって困るわ」


「ねぇ、じゃあこのダンジョンコアにはドラシーみたいな存在はいないってことなのかな?」


「だろうな。単独でダンジョンを形成できると考えたほうがいいかもしれない」


「そんなダンジョンコアを作れる錬金術師ならこんな水晶玉の一つくらいもったいないとすら思わないのかもね。おそらく魔力だって尋常じゃないでしょ?」


「小さいとはいえダンジョンを作れるんだからな。それだけの魔力があればお金にだって困ることなさそうだ。遊び感覚でダンジョンコアを作ってる可能性だってある」


 錬金術師なんて儲かって仕方ないだろうからな。

 それに錬金術師がみんなカトレアみたいにいいやつとは限らない。

 魔物を利用して人間を殺そうとするやつがいたっておかしくない。

 金や力はあるんだからなんとでもなりそうだ。


「遊びか……それに尋常じゃない魔力ね……」


 ん?

 ドラシーには思い当たる錬金術師がいるのか?


 俺がカトレア以外に知ってる錬金術師といったらカトレアの師匠くらいだ。

 ……でも、あの人はそんなことしないだろう。


「やっぱり魔物のダンジョンかもしれないわね」


「え? なんでそう思ったんだ?」


「今までに例はないけど、そんなことをしそうな魔物に心当たりがあったからよ」


「……その魔物と知り合いなのか?」


「知り合いっていうのとは少し違うわね。アナタの仲間の魔物とは似ても似つかないし」


「悪いやつなのか?」


「とんでもなくね」


「「……まさか?」」


 ララも俺と同じ考えに至ったようだ。

 そこまで言われたらもうそれしか考えられない。


「魔王が復活したかもしれない」


「「……」」


 やはり魔王か……。

 でも魔王なんて本当に実在してたんだな。


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