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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第四章 武器と防具と錬金術

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第百四話 ダンジョンの休日

「……これは材料を入れて魔力を込めるだけでポーションが作れる魔道具です。ではやってみてください」


「はいなのです! ……わっ! これでもう完成なのです!?」


「……はい、完成したら瓶に入れてくださいね」


「凄い簡単なのです! これなら私でもできるのです!」


「……こちらは解毒ポーション専用の魔道具です。使い方はさっきのポーション用と同じです」


「おぉ!? ……解毒ポーションも作れたのです!」


「……あとはエーテル用とサイダー用もあります」


「自動販売魔道具の商品は全部私でも作れるってことなのです!? これで私もカトレアさんみたいに役に立てるのです!?」


「……ふふ、材料は覚えてくださいね。それにユウナちゃんは今でも十分みなさんの役に立ってますよ?」


 日曜日、俺とカトレアとユウナは物資エリアに来ていた。

 カトレアが新作の魔道具を作ったので見てほしいと言ったからだ。

 この魔道具があればカトレアの負担を一気に減らすことができるな。


「杖の魔力安定化はどうなったんだ?」


「それは任せてなのです! 十五分もあればどんなグチャグチャな魔力でも直してみせるのです!」


「本当なのか?」


「……はい、もうユウナちゃんに全部任せても大丈夫です。このまま続けていけばまだまだ時間も短縮できるでしょう」


「そうか」


 本当にできるようになったのか。

 まぁ毎日頑張ってたらしいからな。


「じゃあもう私も行っていいのです!?」


「あぁ、昼には戻って来いよ」


「わかったのです! 行ってきますです!」


 ユウナはドラシーに頼んで地下三階に転移していった。

 ララと合流したのであろう。


「せっかくだから少し見てくか」


「……はい。ロイス君が来てくれないとウサちゃんたちは寂しそうですからね」


「そんなことないと思うが……」


「……いえ、ウサちゃんたちにとってロイス君は特別なんです」


 確かに俺は魔物使いだけどさ……。

 ウサギたちがどう思ってるかまではさすがのカトレアでもわからないだろう。


 ウサギたちも今日はお休みなので自分の持ち場付近で寝転がってるようだ。

 厨房エリアのウサギでさえも日曜は完全休養の日だ。

 といってもここのダンジョンで生まれた魔物に休養なんか必要ないんだけどな。

 食事もいらないはずなのにニンジンとかあげるとなぜか喜ぶ。


「従業員が誰もいないとさすがに静かだな」


「……いつもは賑やかなのに日曜は変な感じですよね」


「ウサギたちは真夜中でもカレーやラーメンスープを煮込んでるからな」


「……みんな嬉しそうですけどね」


 俺たちはバックヤードへと入り奥に進んでいく。

 すると休憩スペースの近くにウサギがいっぱいいた。


「ウサータやウサッピもいるよな? あとは店内のウサギか?」


「……そうです。みんな仲がいいんですね。寄り添って寝てるのが可愛いです」


「……アンゴララビットの毛皮ってきれいでフワフワだよな」


「……防具にしようなんて考えないでくださいね?」


「え……、そんなこと考えるわけないじゃないか、ははっ」


 きっとダークラビットの毛皮よりも質がいいんだろうなと思ってしまったが、さすがにアンゴララビットを売る気にはならない。

 そんなことを思いながらストア店内へと入る。


「フランが持ってきた最初の服はほとんど売れたみたいだな」


「……やはり価格でしょうか。一つ100Gや200Gだったから飛ぶように売れてましたね」


「そうなんだろうな。でもこうやって商品が身近になったことでみんなの魔物を狩るペースも上がったからな」


「……先週までより魔力の溜まる量が増えたってドラシーさんが言ってましたよ。順調ですね」


「でも今のままじゃ少なすぎる。地下四階を作ったら全部使い切りそうなくらいしかないからな」


「……他になにを考えているんですか? ティアリスさんたちに頼んだ魔物を地下四階に出現させるのはわかりますが、あの魔物たちじゃないとダメなんですか? 中級レベルの魔物なら今のダンジョンコアの魔物一覧にもいっぱいいますよ?」


「ララにも同じことを言われた。ダンジョンに出現させなくても使い道がありそうだからな。興味が勝ってしまった感じかな」


「……食べるんですか?」


「もちろんだ。でもダンジョンの敵として出現させてみたいってほうが強いかな。どうなるかわからないだろ?」


「……楽しみにしておきますね」


「あぁ。そういや今週は結局ミスリル装備も鋼装備も一つも売れなかったな」


 俺はミスリルの鎧と鋼の鎧を見ながら思わず呟く。

 ミスリルは高いから売れないだろうとは思ってたが鋼さえも売れないとは。

 確かに鋼も鉄に比べたら五倍くらい高いから仕方ないのかもしれないが。


「……この鋼の鎧は3000Gもするんですよ? 初級者が簡単に買えるような物ではありません」


「そうだよな。でも欲しくならないか? 鉄より見た目もカッコいいじゃないか。あっ、デザインが違うせいもあるのか。エルルが考えたんだよな」


「……欲しくなるから買わないというのもあるかもしれませんね」


「ん? どういうこと? お金がないわけじゃないってこと?」


「……はい。例えば鋼の鎧を買いますよね? それだけで満足ですか?」


「……そういうことか。確かに一式揃えたくなる。鋼の兜に籠手にブーツ……どうせなら武器も鋼にしたくなるかもしれない」


「……はい、きっとみなさんもそう考えてるのじゃないでしょうか。セットで買うとなるととても手が出ませんからね」


「一つずつ順番に買ってくものだと思ってたけど、オシャレ的な面で見ると鉄装備と鋼装備が混在してると少し違和感を感じるか。もしかしてエルルも頭からブーツまで装備することを意識して作ってるのか? てっきり部位ごとに独立した物と考えていたがそうやって見るとデザインも統一されてるな」


「……もちろんですよ。エルルちゃんはフランちゃんと話し合いながら細かく設計してましたからね。鉄から鋼に買い替えてもらうためにはただ防御力が上がるだけじゃなく、見た目も少し違うものにしなければならないということでしょう」


「なるほどな。鎧が簡単に売れないのをわかってたからあの在庫数で大丈夫って言ったのか」


「……おそらくそうだと思います。でも昨日の鉄の売れ行きには驚いていたようですよ? 明日からもエルルちゃんは鎧に兜に籠手にブーツと大忙しです」


 昨日の夕方からダンジョンストアは人でいっぱいになり、商品が飛ぶように売れた。

 一週間貯めたお金で買い物を楽しんだのであろう。

 そして今日は休みだから買ったばかりの新しい商品を眺めているはずだ。

 明日から新装備で気分一新ってわけだな。

 ということは明日の朝はみんないつもより早いかもしれないな。


「エルル一人で大丈夫かな? 今週はこの一か月で作った分があったから良かったんだろうけど」


「……急激に冒険者が増えない限り大丈夫だと思いますよ? そんなにすぐ買い替えるものでもないですしね。今はオープン特需というやつだと思います」


「それもそうか。でも今後のためにもエルル専属のウサギを何匹かつけたほうがいいな」


「……今後のためですか……鋼の鎧が売れなかった理由は他にもあるかもしれませんね」


「他?」


「……はい。つまり地下三階には鋼を装備してまで戦うような敵はいないということです」


「!?」


 そうか、敵が弱すぎるのか。

 ……いや決してそんなことはないと思うけど?

 でも今までは鉄の鎧すら装備してない人がほとんどだったんだよな。

 それからすると鋼は過剰装備にも思えるのは確かだ。

 武器も鉄装備で対応できてるわけだしな。


 ということは地下四階ができれば鋼装備が売れるようになるのか?

 みんなも早く鋼装備にしたくてウズウズしてるはずだ。

 いっそのこともう地下四階を作ってしまうか?

 ……いや、それはリスクがありすぎるな。

 魔力がスッカラカンになるのはマズい。


「とりあえず鎧に関しては一式で買うと安くなるセット装備価格を導入してみるか。そういえば町の防具屋ではこれをやってた」


「……そうなんですか? ならなんでフランちゃんやホルンちゃんはそうしなかったんでしょう?」


「え……それは俺が一度に全部買い替えるような冒険者はいないと思うって言ったからかな……。単純に高額になるからとしか考えてなかったからさ……」


「……そういうこともありますよ。でも気付けたからいいじゃないですか」


「そうだよな。カトレアもここの冒険者たちにはまだまだ魔法付与の装備は必要ないってこともわかっただろ? だからゆっくりしてくれていいんだぞ?」


「……そう……ですね」


 その後、休憩スペースから家に戻った。

 そしてソファに座り一息つく。


「ついでにカフェラテ入れてきたらよかったな」


「……そのくらいならウサちゃんたちも気にしませんよ」


「そうなのか」


 俺は遠慮なくテーブルの上にあった注文魔道具でホットカフェラテボタンを二回押した。

 ……すぐに物が転送されてきた。


「本当だな。寝てると思ったらそんなことないんだな」


「……みんな休憩中でも持ち場の近くで常に気にしてますからね」


「律儀だな」


「……そうですよ、だからたまには挨拶してあげてくださいね」


「ん、わかった」


「……」


 ……まったりだな。


 俺はいつもなんだがカトレアはこんなにのんびりする日曜なんて久しぶりだろうな。

 ララとユウナは最近日曜でも関係なくダンジョンへ行ってしまうからな。

 今日は魔物たちもゲンさん以外はララについていったようだ。

 まぁ魔物たちは散歩気分で行ってるんだけどな。

 あいつらからしたら地下三階くらいの魔物じゃ相手にならないらしい。


「あの……ロイス君」


「うん?」


「……お話があるのですが」


「話? なに?」


「…………ここを出ようと思います」


「……」


 カトレアの言葉を頭の中で懸命に整理する。


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