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俺の天職はダンジョン管理人らしい  作者: 白井木蓮
第一章 管理人のお仕事
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第一話 十四歳のダンジョン管理人

 暇なのでカウンターに頬杖をついて外の大樹をぼーっと眺めている。

 管理人ってのんびりできるのはいいけど本当にすることないな……。


 ……おっ、出てきたか。


 数メートル先に急に冒険者の姿が現れた。

 十五歳くらいの男性二人組はやや疲れているように見える。

 だがダンジョンで魔石をいっぱい稼げたのか表情は明るい。


「あっ、管理人さん! ありがとうございました!」


「お疲れさまでした。帰り道もお気をつけて」


 二人は早々にこの場を去っていった。

 ここから最寄りの町まで徒歩で約一時間かかる。

 わざわざよく来てくれるよな。


 二人の姿が見えなくなるのを待ち、外にある洞窟の入り口の戸締りをした。


 さて、ご飯はできてるかな。

 家の中に入ると食卓にはハンバーグが用意されていた。


「おっ、美味そうだな!」


「でしょー。なかなかの自信作だよ!」


 ララはそう言って嬉しそうに胸を張った。


「「いただきます!」」


 夕食は二人揃って食べることにしている。

 犬のシルバと鳥のピピもララが用意してくれた夕食を食べはじめたようだ。


「うん、美味しい! どんどん腕が上がってくな」


「そりゃ毎日作ってればそれなりにはね」


 ララが料理上手で本当に良かった、うん。


 ロイスララは二人だけでこの家に住んでいる。

 元々はこの大陸の北部にある町に家族四人で暮らしていた。

 だが父親は八年前、母親は六年前に亡くなり、母親が亡くなってからは祖父(父方)に引き取られ、この土地で三人で暮らすことになった。

 その祖父も一か月前に病気で亡くなり、妹との二人きりでの生活が始まったんだ。


 ただ、祖父が亡くなったことで俺は一つ大きなものを背負うことになった。


 『ダンジョン管理人』という運命を。


 このダンジョンは『大樹のダンジョン』と呼ばれている。

 祖父もかつて祖父の父親からダンジョン管理人を引き継いでおり、かれこれ三十年はこの地にて管理人をしていたらしい。

 俺も普段からダンジョン運営の手伝いはしていた。

 だが手伝いといっても洞窟の鍵の開け閉めだけだ。

 祖父の仕事も家に併設されている管理人室にてダンジョンへ来た冒険者の受付をしているだけだった。


 俺がダンジョン管理人になって早一か月。

 俺はある悩みを抱えるようになっていた。

 ご飯を食べ、風呂に入り、リビングのソファでくつろいでいたがふと気が緩み思わず口に出てしまった。


「俺って一生管理人続けるのかな……」


「どうしたの急に?」


「いや、こうも日中ずっと管理人室にいるとなんだか虚しくなるときがあってさ」


「それはそうかもしれないけど……お兄頑張ってるよ? なにが不満なの?」


 十歳の妹に慰められる兄。

 ……少し反省した。


「け、決して嫌ってわけじゃなくてさ、なんかこうさ、ちょっと張り合いがないというかさ」


 ララにジト目で見られ少し汗をかく。

 だ、だめだこのままでは幻滅されてしまう。

 ララはまだ十歳、ララのためにもダンジョン管理人をやるって決めたんじゃないか。


「じゃあどうしたいの? 管理人をやりたくないってこと?」


 ララの問いかけに言葉が浮かんでこない。

 なにか考えて発言していたわけじゃないので当然答えはすぐに用意できないのだ。

 とりあえずこの場を乗り切るために適当に思いついたことを言おう。


「うーん、なにか新しい試みをしたほうがいいのかなーって思ってさ。今日だって三組しか来てないし、このダンジョンにそんなに需要があるわけじゃないってことはわかってる。ダンジョンに維持費がかかってるわけでもないから、現状維持で問題ないかもしれないけど、俺とララの将来を考えたら蓄えがあるに越したことはないだろ? だったらこのダンジョンに少しでも多くの客に来てもらわないとなって思ったりしてさ。せっかく爺ちゃんが俺たちに残してくれたダンジョンなんだからさ。結局はそれが爺ちゃんのためでも俺たちのためでもあると思うしな」


 ちらっとララを見るとぽかーんとした表情で俺を見ている。

 うん、言葉で畳みかけたのが功を奏したようだ。

 俺の真面目な回答に感動しているのか?


「……お兄、長い」


「へっ?」

 

 ララの言葉に俺は思わず間抜けな声をあげてしまった。


「このダンジョンの現実なんてお爺ちゃんが生きてるころからわかってたことでしょ? それにもう一か月経つんだよ? いい加減現実逃避するのはやめようよ。私だってもう十歳なんだからね」


「……はい。ごめんなさい」


 すみませんでした。

 ララのほうが俺の百倍はしっかりしてます。

 ヤバい、泣きそうだ……。


 俺は下を向いて本気で落ち込んでいた。


「ねぇ? アナタたちやる気あるの?」


「「!?」」


 ララの声ではない声に驚いて顔を上げると、目の前になにかがいた。

 ……襲ってきたりはしなさそうだ。


「え!? 誰!? ……小さいね」


「……妖精? 精霊か?」


 身長は二十センチくらいだろうか、黒髪ロングで顔と体は非常に幼く見た目は完全に少女だ。


「アタシのこと知らないの?」


「知りませんけど……」


「爺さんから聞いてないの?」


「爺さん? 亡くなった俺たちの爺ちゃんのことですか?」


「そう……ったくあの爺さんホントやる気ないわね。いくら孫のためだからって」


「「?」」


 俺たちはいまいち事態が呑み込めずにいた。


「アタシはダンジョンコアよ。アナタがこのダンジョンの管理人ならアタシはこのダンジョンの核、つまりダンジョンそのものね」


「「!?」」


 少女は意味不明なことを言った。

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