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36(9月22日・日)

 辿り着くと川端通り商店街はすでに人だかりだった。多くの人がカメラを向ける先には昼間からいいのかと疑いたくなる露出度の高い女性が小さなギター――確かウクレレでよく分からない歌を唄っていた。


 大きな拍手が起きた時、


「関口君! こっちこっち!」


 由美子が人混みの中で手を振った。隣には母親がいる。


「こんにちは」


 いつも会っている相手なのでそこまでの緊張はない。


「あら、外で見たら意外と背の高かとねえ。ステージのよう見えるでしょ。オバちゃんなんか背伸びせんと見えんとよ」


 温かく笑うと、由美子の隣を空けた。


「那由多さんも杉内さんも、まだやけんね」


 手に青いフラッペを持って彼女が近くに寄ってそう言った。


 露骨な衣装の女性がステージを降りると、次は打って変わって素朴な印象のオジさんだった。唄い出したが印象はそのままで、恐らくギターは上手いのだろうと感じた。が、やはり何か物足りないまま終わった。


「この次はね、仲井間さんていうてウチの店にも来てくれる人。めっちゃ声のよかとばい」


 彼女の説明を聴きながら演奏を待つと、確かに上手かった。甘い声は女性向だろう。しかしここしばらく尾崎豊ばかり聴いている俺にはどこか物足りない、というのが正直な感想だ。


「次! 杉内さん来るよ!」


 彼はステージで司会の人と談笑するように会話を続けた。そこで分かったのだが、司会は由美子が放送部でかけるラジオのDJなのだった。なので掛け合いはシナリオがあるように和やかに進んだ。


 ――では皆のスナフキン! 杉内直己のステージです!


 司会が捌けると、杉内さんはギターを弾き下ろした。


「皆さん今日は第五回オジャマジャパーティーへようこそ! 次は杉内直己で『西高東低』!」


 印象深いイントロから、抑え目の声で彼が唄い始める。しかしそれがサビになると一気に弾けた。尾崎豊の曲と重なる歌詞とメロディー。それでいて暗さはない。尾崎からあくを抜いたような歌だった。立て続けにバラードを唄い、最後に唄った『壊れているけど世界は回っている』という曲がシニカルでよかった。歌詞は所々分からなかったが、何かに行き詰まった人間には優しい曲だった。


 そのあとの日向那由多のステージでは一曲ごとに由美子が跳ねるので落ち着かなかった。彼女のステージは訥々として、皆が聴き入る曲構成となっていた。最後のナンバーは俺もよく覚えている『夕凪』だ。やはり生の演奏はCDと違い、唄い手の思惑と観客の期待がどこかでせめぎ合っているようだ。それでも割れんばかりの拍手の中でステージは終わった。

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