表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/46

27(9月12日・木)

 今日は後輩に任せて教室だと、由美子が嬉しそうに弁当を二つ抱えて現れた。


「杉内さんのラジオやもんね。しっかり聴かんと」


 コーヒー牛乳を手に、彼女は耳を放送に傾ける。杉内直己の弾き語りが終わり、エンディングで彼が叫んだ。ライブの告知だった。


「えー! 今日ライブって! 行けんかなあ」


「夜の店だろ。高校生は無理なんじゃないか」


 すると、


「なんで?」


 その夜の店を手伝っている彼女には意味のない言葉だった。


 ラジオの放送が終わると共に予鈴が鳴る。午後の授業はいつになってもかったるい。得も言われぬだるさの中で教師の声が遠くに聞こえる。校庭で響くサッカーの声が眠気を誘う。教室という名の水槽の中で、ぬるま湯の中に浸かって溺れてしまいそうだ。


 そんな時間を二時間過ごし、教室を掃除して教科書とノートをまとめて、そして靴箱には由美子が待っている。


「ねえねえ。今日、杉内さんが唄いよらした『初恋』ってよかったよねえ。関口君知っとった?」


「いや……俺は。とにかく音楽に疎いんだ」


 今は尾崎豊以外に興味はない。またレコード屋に行って次のアルバムを買ってみようか。月一万円の小遣いとは別に、最近では昼飯代の五百円が貯まる一方なのだ。


「田口、頼みがあるんだが」


「ん? いいよ」


 まだ頼みを言ってないのだが。


「ウチ、CDプレーヤーないんだ。だから――」


「だから?」


「俺が買ったCD、テープに録音してもらっていいか」


「いいよ。で、CDは?」


 ラシャイビルへ向かうと、真っ直ぐに尾崎豊のコーナーへ向かった。由美子は、


「やっぱり」


 と笑っていた。手にしたのは『回帰線』というアルバムだ。先日の雑誌に載っていた『卒業』という曲が入っている。友人との短い家出を描いた『15の夜』と並んで、彼の代名詞的な曲らしい。


 俺は悩む間もなくレジへ向かう。


「ハンバーガーでも食べてくか。奢るぜ」


「ううん。帰って早うダビングしよう。聴きたかやろ」


 彼女の笑みがとても眩しくて、俺は頷くだけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ