表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/46

19(8月1日・木)

「花火行こう! 大濠公園であるけん!」


 アパートへ着くなり彼女が叫んだ。別件を抱えている俺としては出ばなを挫かれた形になった。


「まずは宿題だろ」


「だけん、終わったら行こう!」


 今日もまたヒュウガナユタの流れる和室で、ふたりで宿題へ向かい合う。


「その――田口に渡したいものがあって」


 シャーペンを止めずに言うと、


「ん? なに? 何なに?」


 本気で驚かれた。仕方ないのでバッグを開ける。店員には妹へのプレゼントだと言っておいた。


 バッグから包みを取り出してテーブルへ置くと、まだ彼女は固まっている。


「その……いつもメシ食わせてもらってるし。ま、そうなるとお母さんにも何かしなきゃいけないんだけど」


 彼女は呆然とした顔で包みを開ける。そして出て来たものを見てさらに驚いた。ひまわりの柄が鮮やかに目へ飛び込む。彼女は恐る恐る中身を手に取った。


「これ……私に?」


 両手で広げたひまわり柄の向こうに、最大限の驚きを見せた彼女がいた。


「きれい……」


「俺あっち行ってるから着てみろよ。何となく選んだサイズだから、合わなかったら変えてもらえばいいし」


 そう言うと、


「ううん、私があっち行ってくる!」


 言うや否や、廊下へ走り出した。


 何をドタバタとやっているのかと思うと、急に静かになり、キッチンの陰からそっと足が出た。


「似合っとるかな……」


 おずおずと姿を見せる彼女ははにかみながら言った。思った通り、今までのどんな彼女より彼女らしい。黄色いひまわりのプリントが彼女を完璧な少女に変えていた。


「似合ってるよ」


 何とかそう言うのが精いっぱいで、こちらの方が照れた。


「関口君ありがとう! ぴったりばい!」


 緩んだ顔でひと回りすると、裾が広がって彼女の細い脚が見えた。


「じゃあじゃあ! これで花火大会行く!」


 どうやら決定事項だ。一度ここへ戻って来る約束で荷物は置いて出た。玄関を出たところで、


「田口、まだそれタグがついてるぞ」


「えー、関口君切って切って! ハサミハサミ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ