19(8月1日・木)
「花火行こう! 大濠公園であるけん!」
アパートへ着くなり彼女が叫んだ。別件を抱えている俺としては出ばなを挫かれた形になった。
「まずは宿題だろ」
「だけん、終わったら行こう!」
今日もまたヒュウガナユタの流れる和室で、ふたりで宿題へ向かい合う。
「その――田口に渡したいものがあって」
シャーペンを止めずに言うと、
「ん? なに? 何なに?」
本気で驚かれた。仕方ないのでバッグを開ける。店員には妹へのプレゼントだと言っておいた。
バッグから包みを取り出してテーブルへ置くと、まだ彼女は固まっている。
「その……いつもメシ食わせてもらってるし。ま、そうなるとお母さんにも何かしなきゃいけないんだけど」
彼女は呆然とした顔で包みを開ける。そして出て来たものを見てさらに驚いた。ひまわりの柄が鮮やかに目へ飛び込む。彼女は恐る恐る中身を手に取った。
「これ……私に?」
両手で広げたひまわり柄の向こうに、最大限の驚きを見せた彼女がいた。
「きれい……」
「俺あっち行ってるから着てみろよ。何となく選んだサイズだから、合わなかったら変えてもらえばいいし」
そう言うと、
「ううん、私があっち行ってくる!」
言うや否や、廊下へ走り出した。
何をドタバタとやっているのかと思うと、急に静かになり、キッチンの陰からそっと足が出た。
「似合っとるかな……」
おずおずと姿を見せる彼女ははにかみながら言った。思った通り、今までのどんな彼女より彼女らしい。黄色いひまわりのプリントが彼女を完璧な少女に変えていた。
「似合ってるよ」
何とかそう言うのが精いっぱいで、こちらの方が照れた。
「関口君ありがとう! ぴったりばい!」
緩んだ顔でひと回りすると、裾が広がって彼女の細い脚が見えた。
「じゃあじゃあ! これで花火大会行く!」
どうやら決定事項だ。一度ここへ戻って来る約束で荷物は置いて出た。玄関を出たところで、
「田口、まだそれタグがついてるぞ」
「えー、関口君切って切って! ハサミハサミ」




