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11(6月14日・金)

 三年になって初めての試験が終わった。「ああ~」と情けない声で机までやって来るのは彼女だ。


「あと試験何回あるとかなあ。もう受験の時だけでよかあ」


「秋に二回。あとは本番だ」


「二回かあ。まとめて一気にやってくれんかな」


 そんなことを話していると、クラス委員の斉藤知恵が近づいてきた。その顔は笑みを湛えている。


「ちょっといいかしら」


 博多弁を喋らないクラスメイトもいたのだと、それが驚きだった。


 彼女は俺と田口の間に割って入り、


「明日の土曜日、お暇ってあります?」


 土曜といえば彼女のアパートが定番だ。だからといって必須ではない。


 俺は由美子の見ている前で、


「別に。用事はないけど」


 そう答えた。


「よかった。明日の帰り、天神にお買い物に行きたいんだけど、ママが一人じゃダメって言うの。頼りになるボディガードが欲しくてね。ご飯くらい奢るわ」


 彼女の目は真っ直ぐにこちらを見つめる。俺は目をそらしながら、


「ボディガードになれるか分かんないけど、別にいいぜ」


「よかった。帰り、一緒にしましょ」


 それだけ言うと、彼女は自分の席へ戻って行った。


「関口君て、基本的にモテるキャラよねえ」


 いつもの土曜日が不意になったというのに、由美子がニヤニヤしながらこぼした。こういう時、彼女にとって俺は何なのかと考えてしまう。二人だけの秘密の時間。それがなくなっても彼女に変わりはないのだ。




 土曜日の授業が終わり、由美子より先に斉藤知恵がやってきた。甘い花の香りはどこから漂うのか、見れば見るほど一般的な女子高生だった。その容姿がトップクラスだったとしてもだ。


「ね、お腹空いてない?」


 天神へ向かう道すがら、長いポニーテールの彼女が振り返りつつ訊ねてくる。


「いや……別に」


「じゃあ、先にラシャイビルに行こうか」


 彼女が向かったのは大きなファッションビルだった。そこを一階から五階までグルグルと回った。立ち寄るのはもちろん女物の店で、俺は手持ち無沙汰にその前で突っ立っている。


「ねえ関口君――」


 名前を呼ばれて振り返ると、スカートを二着手に持った彼女がやってくる。そして当然の言葉を投げかけてくる。


「どっちがいいと思う?」


 右手には薄い黄色――レモン色で膝丈のプリーツスカート。左手には水色のフレアスカートが握られていた。


「どっちもいいと思うよ」


 すると少し機嫌を損ねたようで、


「もう、ちゃんと見てよ」


 面倒臭いなと思いつつ、


「トップスの問題だよ。黄色の方はボタンをしっかり留める白かクリーム色のブラウスなら似合うんじゃないか。それもフリルとかの装飾の多いヤツ。そっちの青い方は……そうだな、楽に着こなせるシャツで裾のラインが真っ直ぐだったら似合うと思うよ。緩めに着こなすTシャツでも合うだろ。斉藤みたいに素材がよければなんでも似合うんだよ」


 思いがけない言葉だったのか、彼女は顔を赤くしてレジへ向かった。


 その後はご機嫌で、結局二着買ったスカートを手に、一階のバーガーショップへ向かった。


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