とんぼとボク
今日もね、お空いっぱいにとんぼが飛んでいるんだ。だからね、今日も外に出て、遊ぼうと思うんだ。
外に出ようと思ったら、お母さんが、帽子をかぶりなさい、と言って、ボクに麦わら帽子を被せたんだ。
「今日はおじいちゃんと遊んできなさい」
「は~い」
ボクは虫網を持って、外に出たんだ。じぃじ、ボクのことを外で待っていたんだ。
するとね、じぃじがいてね、待っていたぞ、さあ、とんぼを取りに行くぞ、と言ったんだ。
じぃじはとんぼを取るのが、とっても、とっても、うまいんだよ。
ボクとじぃじは近くの公園に行ったんだ。トンボがたくさん飛んでいるよ。
するとね、ボクが虫網でとんぼを取ろうとしたらね、じぃじが、網で取ったら、とんぼの羽が傷つくぞ、見ててごらん、と言ったんだ。
じぃじはね、そっととんぼに近づいてね、やぁととんぼの羽を捕まえたんだ、一発でだよ、ボクはびっくりしちゃって、じぃじすごい、と言ったんだ。
「とんぼも生きているからな、大切にしてあげないといけないぞ」
じぃじはボクにとんぼをくれたんだ、でもね、ボクね、もらうのうまくできなくて、とんぼが飛んで行っちゃったんだ。
「じぃじ、ごめん」
ボクは泣いちゃった。
「いいさ、とんぼはまだまだたくさんいるぞ」
ボクはじぃじに教えてもらいながら、とんぼをたくさん取ったんだ。ねえねえ、すごいでしょ。
その日からね、じぃじ、ボクに会いに来てくれなくなったんだ。もう一週間もだよ、だって、2日に1度は会いに来てくれたのにだよ。ボクはね、変だなぁ、じぃじ、お腹でも痛くなったのかって思ったんだ、だってね、じぃじ、時々お腹痛そうだったもん。
「じぃじは?」
お母さんに聞いたんだ。
「ちょっとお腹を壊しちゃって、会いに来れないって」
「なんで、なんで」
「すぐに元気になって会いに来てくれるから、我慢しよ」
「嫌だよ、じぃじととんぼを捕まえる約束したんだもん」
「おじいちゃんも約束は忘れていないわよ。必ず会いに来てくれるわ」
お母さんが悲しそうな顔をしたから、ボク、これ以上聞くのをやめたんだ。
だってね、お母さんが悲しそうな顔をするの、いやだもん。
今度ね、じぃじが元気になって会いに来てくれたらね、とんぼを優しく捕まえられるようになったよ、と言おうと思うんだ。そしてね、いっぱい、いっぱい褒めてもらうんだ。