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4-14「クローゼットには……」♢

「それでは行きましょうかククッ」


 伯爵を先頭に私たちの部屋へと向かう。一歩一歩が重い。


 このままつかなければいいのに……


 なんて考えていても現実は非常であり直ぐに部屋へとついてしまった。


「では失礼して、おや? 顔色が悪いようですがどうかしましたか? ククッ」


 気がつけば伯爵が私の瞳を覗き込むようにみつめていた。心なしか全てを見透かしてそうに感じて怖い。


「そりゃそうだろ! 異性を部屋に入れるばかりかもし透明人間が本当にいるなんてことになったら殺人犯の透明人間としばらく暮らしてたってことになるんだぜ」


 スペードさんが私たちの間に立ちながら助け舟を出してくれる。すると伯爵は笑いながら


「それはそれは失礼致しましたククッ」


 と謝罪なのか笑っているのか分からないことを口にした。


「どうぞ」


 どうか気付かれませんように……


 と祈りながら私が扉を開き伯爵を招き入れる。


 辺り一面に広がる白銀の小麦粉景色、見た感じ先ほど船員さんが小麦粉を撒いた時と何も変わりはないように思えた。


 伯爵は無言でキョロキョロと椅子にテーブル、ベッドと辺りを見回す。そしてクローゼットの方をみた。


「失礼ですがクローゼットの中をみても? ククッ」


 その言葉に黙って頷く。すると伯爵はクローゼットを開いた。そして持っていた杖で透明になった一般男性が隠れていると丁度お腹の辺りに当たるであろう高さで杖を軽く振ったあとクローゼットを閉じた。


「どうやらこの部屋に透明人間はおらず問題はないようですね。ククッ」


 良かった、どういう訳か知らないけれど気付かれなかったみたい。


 私はそれを聞いてホッと胸をなでおろす。そして


「すみません、それでは先に戻っていただけませんか? 」


 と伯爵に告げた。すると伯爵は出口へと向かっていた足をピタリと止める。


「ほう、この小麦粉まみれの部屋に留まりたいとはそれはどうしてですか? ククッ」


 しまった……トーハさんを連れて行こうとしたのにこれは失言だった。却って疑われちゃったかも。


 後悔するもすでに遅い。伯爵はこちらを振り向いて理由を説明するまでは帰らないという様子だ。すると


「しょうがねえからオレが代わりに説明してやるよ」


 その様子をつまらなそうに見ていたスペードさんがまたしても助け舟を出してくれるようだった。


「ほう? それではお願いするとしましょうククッ」


 伯爵の視線がスペードさんへと移る。


「さっき聞いたんだけどさ、そのクローゼットの隅にダイヤが下着を忘れていたんだとよ! 」


「ス、スペードさん! ? 」


 たちまち私の顔が熱くなる。しかしそんな私の様子などお構いなしに彼女は続けた。


「さっき思い出して小麦粉まみれになってるけどまた船員がこの小麦粉を掃除して見つかる前に回収しておきたいんだとさ。ったくデリカシーのないやつだな」


 伯爵がそれが本当かを確かめるように私の顔を見る。その話に関しては嘘なのだけれど私の顔は彼女の突然の思い付きで真っ赤になっているのが自分でも分かった。


「それはそれは失礼しました。レディにそんな告白をさせてしまうとは……ククッ」


 そういって伯爵は扉を閉めて出て行った。


「悪かったな、他に思いつかなくてよ」


 スペードさんが私に謝罪する。


「いえ、助けていただきありがとうございます」


 恥ずかしい、とはいえあの時私に他に上手い言い訳が浮かばなかったのは事実なので感謝した。そしてクローゼットへと向かう。


 トーハさんを小麦粉より小さくしたので一旦元に戻す、大きくなったトーハさんによってクローゼットに足跡が残ってしまうのでそれを払わなければならないのだけれど「下着を探すため」と言えば説明もできるだろうしスペードさんの説明は正解だったのかもしれない。


「一体何が起こったんだ、いきなり船員が入ってきたと思ったら部屋中に小麦粉をまき散らして」


 トーハさんが咳き込みながら尋ねる。私たちは彼に状況を説明した。彼は伯爵に気付かれなかったことを不思議に思っていたのだけれどスペードさんの「私の魔法は伯爵さんにも探知できないほど凄い」というのに納得したようだった。


「……というわけでトーハさんには部屋の清掃が終わるまでまた小さくなって私のバッグの中に隠れていてもらいたいのですが」


「待った……気持ちは有難いけどちょっと現場を見てみたいんだ。良いかな? 」


 彼は断ってこんなことを言った。


「でもよ、部屋の前には見張りがいるぜ? 」


 そう、現場の部屋の前には見張りの人がいる。だから見た目がゴブリンのトーハさんが潜入するのは不可能に感じる。しかし、彼は来んなことを言い出した。


「そこはさ……ちょっとダイヤには悪いんだけど」


 彼が私たちにあることを囁いた。


「でも、それは万が一下敷きになったりでもしたら大変だぜ」


「そうなんだよなあ」


 スペードさんの言葉にトーハさんも腕を組む。


 何か手は……そうだ!


「でしたら、こちらのプーテちゃんを試してみてはいかがでしょうか」


 そう言って私はウィザーさんから受け取ったプーテちゃんをバッグから取り出した。

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