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4-11「魔法の世界でミステリーは成立しない? 」

視点戻って主人公の踏破です。

 大きな音の後にダイヤの悲鳴、スペードのオレに向けたであろう叫び声から十数分が経過した。ダイヤに言われるがままクローゼットに隠れたオレは隙間から誰もいない部屋をずっと見つめる。


 恐らく何かがあったのだろうけれど何があったんだ? まさか……


 一番最悪のことを思い浮かべる。そうではないと良いと思いながら俺はダイヤたちを待った。


「大変なことになったぞ! 」


 それから5分後、ドアが開いて2人が入ってくる音がしてワンテンポ置いてからスペードが慌てた様子でクローゼットの扉を力任せに開いた。


「な、なにがあったんだ? 」


 スペードとダイヤを見ると2人共額に汗を浮かべていた。それをみて俺の最悪の予感が的中したことを悟る。


「殺人事件か」


「知っていたのですか! ? 」


 ダイヤが驚いて聞き返す。


「まあ、これまでのことと2人の反応をみたらね」


「それだけじゃねえぞ」


 スペードは表情を変えずに言う。そして、俺と別れてから起きたことを語り始めた。


「…………驚いた」


 全てを聞いて出た俺の言葉がそれだった。もう1体のゴブリンがこの船にいるかいないかは定かではないけれどまさかゴブリンが犯人なんて騒動になっていたなんて俺の最悪の予想すら超えた最悪の事実だった。被害にあったのが一言声をかけられただけとはいえあの老人だったというのに心が痛む。


 しかし、確かめておかなければならない点もある。


「その、ゴブリンを見たというのはどんな人だった」


「ああ、無精髭を生やしたおっさんだったかな」


 俺の質問にスペードが頭を掻きながら答える。


…………やっぱりだ、俺が間違って入った部屋に泊まっている人だ! となるとあの人がゴブリンに擦り付けるために殺したということになるけれど何のために? とにかくこのことはダイヤたちには伝えないほうが良いだろう。変に疑って彼女たちの身に危険が及んでもまずい。


「どうかしましたか? 」


 俺が黙ったのを不審に思ったのか彼女が尋ねる。


「いや、ちょっと他の人のことも知りたいなって」


 咄嗟に取り繕ったとしてはなかなか上手い言い訳をしたものだと我ながら感心する。これならあの俺と遭遇した男性の情報も詳しく聞けるということだ。


「わかった、じゃあまずはオレたちの左隣の部屋は被害者の部屋で更にその左隣の部屋がダーン伯爵の部屋だ。ぶっちゃけこの人に関する情報はねえけど事件の数十分前から食堂で食事していたっていうから問題ねえよな? 」


 俺は1人目からざっくりとした説明というスペードの余りの飛ばしっぷりに面食らいながらも頷く。


「でその左隣に泊まっているのがさっき話した髭男、ベアドの部屋だ。剃ってない髭からもわかっけど鼻をやたら掻いたり態度がデカかったりと不潔で嫌な奴だよ」


 彼女の言葉に「なるほど」と頷く。とりあえず嫌な奴だということは分かった。


「それでその左隣が冒険者3人組の部屋だ。剣士のソアド、魔法使いのウィザー、格闘家のナックの3人組でソアドは正義感強くて腕まくって筋肉を見せびらかしてた。ウィザーは大人しめで瞬きが多くて、ナックは顎を掻いてたりと何考えてるかわかんねえやつだったな、まあこの3人もオレが飛び出した時に現場にいたからどうなのかなあってことだ」


「それと、あとは3人の船員さんですね」


「ああ、忘れてた。見張りの時急に眠くなったとかで居眠りしてたガタイの良い奴と真面目そうなひょろ長いのとあと1人、これと言って特徴のない気の弱いのがいたな」


「船員に犯行は? 」


「ひょろ長いのは食堂が開いている時間だったから食堂に、特徴ないなのは今も仮眠室でぐっすりでガタイの良いのはオレが飛び出してからゴブリンらしきのが通り過ぎるまでずっと居眠りこいてたみてえだから3人とも無理じゃねーかな」


 やっぱりだ、なら犯人はあの時にあんなことをしたあの人だ!


 と俺は確信してニヤリと笑う。そう、これが俺達と同じ世界ならあの人しかありえない。しかしここは魔法の世界だ。そこを確認しておかなくては!


「物を浮かせたりとかってできるの? 」


 2人に尋ねる。するとダイヤが答える。


「そういうのは、コントロールがかなり難しいので熟練の魔法使いでも軽いものを浮かせるかどうかだと思います」


「じゃあ、念じた場所にパっと行ってパっと帰れる瞬間移動みたいなのは? 」


「それは……大賢者様なら出来るかもしれませんがそれ以外の方は……」


 どうやら大賢者様というこの世界での魔法が一番使えるであろう人にしか瞬間移動はできないということだ。犯人はあの人で決まりだ! とはいえ魔法を使ったとなると証拠を取るのも難しいし見張りを強化してくれているのならこれ以上の心配もないだろう。犯人はこの手で捕まえたいという気持ちもあるけれど、あとはこの世界の警察みたいな組織に任せて……ん?


「そういえば、この世界のこういう事件を解決する人ってどうやって事件を解決しているの? 」


 考えてみれば、魔法がある世界でこの手の事件が起こると犯人特定は困難だろう。一体どうやって事件を解決しているのだろうか


「その点は心配無用です。殺人となると魔法鑑定士の方を筆頭にどんな小さな痕跡も見逃さない優秀な方たちがいますから」


「その日調達した剣でもどの店で買っただのから調べて犯人捕まえるから悪いことはするなって親父に口をすっぱくして言われたよ」


 スペードが昔を懐かしむように口を挟む。


「どんな痕跡も見逃さない優秀な人たちか……」


 俺はそれを聞いて一安心する。しかし、あることにハッと気付き額に汗をにじませる。


「もしかして……オレがここにいることがバレる? 」


 それを聞いて2人がハッと口をつぐんだ。もうそれだけで事態の深刻さを把握できる。


 ……つまり俺達が犯人に自白させるしかないということか


 俺は頭を抱えた。

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