4-5「トラブルメーカー」
無精髭を伸ばした小太りの長髪の男が入ってくる。
自然と目が合う俺とその男。
「ゴブリンだあああああああああああああああああ! ! ! ! ! 」
しばらくの沈黙の後男が叫び部屋から出て行った。仲間を呼びに行ったのだろう。
「クソ! あの沈黙は一目ぼれによる恋の始まりじゃなかったのか! 」
そんな冗談を口にしながら再び窪みを手すり代わりにぶら下がる。
「どこだ! ゴブリン! ! 」
俺が部屋から出て数十秒で係員は駆け付けた。恐らく武器を持っているだろうしこのままではまずい! 今は部屋の中を探しているようだが見つかるのは時間の問題だ!
みると窪みは隣の部屋らしき窓までは繋がっていないのだが、窓と窓の間隔は狭く手を伸ばせば向こうの窪みまで届きそうだ。
筋肉で競う番組じゃないんだから…………
俺はぼやきながらもゴブリンになってしまったものの人間時よりもパワーがあるのは不幸中の幸いと右手を離しそのまま手を隣の窓に伸ばして掴む! 今度は左手で同じことをして隣の窓に飛び移った。念のため更にもう1往復して更に隣の窓に移動する。
そこから指だけではみつからないことを祈ってさっきのようにぶら下がった。そのまま固唾をのんで先ほど侵入した窓に視線を向ける。
見つかる、もしくは俺の体力が尽きたらゲームオーバーとかなりの難易度だ。
「なんだどこにもいないじゃないか! 」
「ありゃ、そうだ窓! 窓から逃げたんですぜ! 」
そんな会話が聞こえるとともに筋肉質な船員が窓から顔を出した。そして夕陽に反射され眩しいくらいに美しい海を見下ろした。
「どうやらあんたにびっくりして窓から出た拍子に落っこちちまったみたいだなあ」
「あ、ああ……」
そう頷きながらもキョロキョロとしているもやがて2人共踵を返し部屋へと戻っていった。
「危なかった。まさかダイヤたちのほかにも窓を開けている人がいたなんて…………黄色い布でもぶら下げて目印にしてもらうべきだっただろうか? それに窓から窓へ移れるなんて助かったとはいえ何というセキュリティが固いんだか緩いんだか…………いや、こんなぶら下がって飛び移るなんてするのはそれこそゴブリンくらいか」
再び登り一息つく。正直もう腕が限界だった。これ以上の騒ぎは御免なので更に右側に進んでいくと窓が開いている部屋が目に入る。
そこまで先ほどのように移動して突入の前に念のため軽く中を伺う。
「トーハさん遅いですね」
「ああ、なんかやべえことが起きたのかもな」
ダイヤたちだ! それを確認すると俺は勢いよく部屋に飛び込む。
「お待たせ! 」
スタっ! と部屋に着地する。内装は散らかっていること以外は先ほど見た男の部屋と同じだった。
「おう、無事だったのか! 」
「余りに遅いのと先ほど船員さんがゴブリンを見なかったか? なんて聞いて回っていたもので心配しちゃいました」
「それは、悪かったよ。実は……」
そう言って今までのことを話した。話を聞き終わってスペードがまず口を開いた。
「そりゃ、いきなりの大冒険だったな」
「うん、今回ばかりはゆっくり船旅ができると油断していたよ」
「しかし、問題起こすのがダイヤとどっちなのか悩んでいたけどこれではっきりしたな! ダイヤも大変だな」
スペードがからかうように笑いながらダイヤのほうをみる。
「ここまでトラブルメーカーだったとは面目ない」
オレもダイヤの方へ視線を移して謝罪をする。すると彼女はにこやかに笑いながら答える。
「いえ私は大冒険のほうが楽しいですよ。ゴブリンの件は誤魔化せましたしとにかく少なくともこの船にいる間は問題はないと思います」
「まあな、どうせなら冒険より大冒険のほうが楽しいよな! 」
スペードも同調するかのように力強く言い剣を構えた。
なんだ、責められていたわけではなかったのか。頼もしい仲間たちだ。
俺は2人を交互に見つめ小さく笑った。




