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3-18「変なゴブリン」♤

引き続きスペードの視点です。

 ここが死後の世界じゃないってことはあそこに寝てるのがゴブリンで後ろを向いているのがダイヤか! ! 何のためにこんな真似をしやがった! ! !


 オレは文句の1つでも言ってやろうと立ち上がろうとして気付いた。俺の身体は縄でグルグルに縛られ横にされていた。よくみればこれは冒険者セットについているいざというとき縄梯子にするための縄だ。所々に結び目がある。


 畜生! 今時冒険者セットなんての買うばかりか本来の使い方と違うとか本当に何考えてんだ! !


「あ、良かった! 目が覚めたのですね! ! 」


 縄を解こうとうっかり物音を立ててしまい彼女が笑顔で振り向く。


「すみません、トーハさんが荒っぽくて……傷は私が回復魔法で全て治したはずですがどこか痛いところはありますか? お腹は空いていませんか? 」


 彼女に言われるまでオレは自分がボロボロにされたことを忘れていた。確認できるだけしてみると傷は1つもなかった。腹も特に減ってはいない。


「おかげさまで別に痛むところはねーし腹も空いてねーな、それよりこれは何の真似だ! 」


 オレは思わず声を荒げる。すると彼女は申し訳なさそうに頭を下げる。


「すみません、私も荒っぽくてやりすぎだとは思いました。でも、トーハさんこの世界の住人じゃないみたいでこの世界に来る前に向こうの世界で突然死んでしまったみたいで、ルイーダのこともあって死ぬことが本望だというスペードさんのことを放っておけなかったんだと思います。そのことは分かってあげてください」


 ? ダイヤは何を言っているんだ? ? 訳の分からない話ばかりだけど1つだけ気になることがあった。


「ルイーダに何かあったのか? 」


 オレは彼女の話の中で唯一知っている人物だったルイーダについて尋ねる。文脈から考えれば死んだということになるがあいつが死んだなんて考えにくい。


「ルイーダは私たちの前で…………死にました」


「ウソ………………だろ」


 オレは言葉を失った。あのルイーダだぞ? 学校で1位のルイーダが……死んだ? ? ?


「残念ながら……」


 彼女は首を振りウソではないと示した。そしてサイクロプスとの戦いを話し始めた。


「ウソ……だろ」


 今度のはルイーダの件も含まれていたがあのゴブリンがサイクロプスを倒したという話への驚きだ。ゴブリンがサイクロプスを倒したなんて信じられない、それを聞くと別の世界から来たというのも信じられなくはない話だ。


「しかし、ダイヤも大変だな。あのゴブリンは何時もあんな感じなのか? 」


「いえ、今回みたいなことは初めてでした。普段は今回みたいなことはしない優しくてむしろ慎重すぎるくらいの人なんです! それに今回もトーハさん………………ずっと泣いてました」


「は? 」


 何だ、あいつは涙を流しながらあんなことをやっていたのか? 確かにオレは顔をまともにみたことはなかったしダイヤがそんな訳わかんねえウソをつくとも思えねえ……マジかよ、本当に変な奴だ。


 オレが喋らないでいると彼女が何かに気付いたように口をひらいた。


「あっ、すみません、縄の件ですがトーハさんが明日村に帰すと言ってましたのでそれまでは……すみません」


 正直懸命な判断だった。何故か剣も横にあるしもし縛られていなかったらオレは起きてすぐさまあのゴブリンに斬りかかっていただろう。


「それで、このあとはどうする予定なんだ? 」


「………………はっ! すみません。このあとですか? 私達は魔王の手がかりを探しに船で別の国に行く予定です」


 ダイヤは一生懸命目をごしごししている。その様子をみて脱出の好機とオレはニヤリと笑った。


「もしかして眠いのか? オレは今まで寝ていたようなものだから代わりに見ていてやる。だから寝ていいぞ」


「え、本当ですか? スペードさんが見張っていてくれるなら心強いです。なんか私たちもう仲間になったみたいですね! 」


 彼女が手を合わせて喜んだあと「お願いします」といって横になった。


 なんて単純………………疑うことを知らないのか? まあ明日解放してくれると言っているのだから無理に脱出を試みる必要もないが…………


 いや、これこそが罠なのか! ? 実は今狸寝入りをしていてオレが脱出するのか確かめているのか! ?


 悩んでいるうちにトオハというらしいさっきのゴブリンがムクムクと起き上がった。思わず狸寝入りをする。


 ゴブリンは立ち上がって眠っているダイヤとオレを交互にみるとバッグから太い木の板と細い木の棒を取り出した。冒険者セットのもののようだ。あれでどこでも火を起こして付属の木切れにつければ松明の出来上がりってわけだ。


 だがこの世界では冒険者学校では炎を出す魔法を習うため卒業生でわざわざこれを使って火を熾すものはものはいない。


 しかし見た目通り奴はシャーマンでもない普通のゴブリンで魔法は使えないようで細い棒を持ち木の上に刺し両手でぐりぐりと回し始めた。この方法は慣れているものがやれば少し待つだけで着くらしいが慣れていないと長いこと火がつくのに時間がかかるらしい。


 どうやらあのゴブリンは後者のようだ。手が擦れるのを辛そうに顔をしかめるばかりか長いこと待っても一向に火がつく気配がない。


…………いくら何でも下手すぎねーか? それより何でこんな夜遅くそんな寒くもねーのに火なんてつけたいんだ?


 不審に思いながらもまたしばらく待っているとようやく煙が出てきて更に待つと火が点火した。


「おお、やったぞ! 」


 ゴブリンは思わずガッツポーズをしバッグから森で拾ったであろう木の葉や木々を取り出してその火にかけ始めた。途端に火が燃え移り大きくなりモクモクと煙があがる。


「なあ、何であんな舐めた真似したんだ? 」


 我慢できずに声をかける。するとゴブリンは特に驚いた様子もなく平然としていた。


 こいつ、オレが起きているのに気付いていたのか! ? だとしたらかなりの手練れということになる。どっちにしてもオレは本人に直接真意を尋ねずにはいられなかった。


「モンスターと戦って死ぬのは本望って言ったから、俺が想像できる限りモンスターと戦って命を落とす者がどんなことなるか体験させてみたんだ。それで、どうだった? 」


「怖くなかったぜ、最後まで誇りを持てた」


 オレは正直に答えると負けたような気持ちになるのでウソをついた。


「そっか、逞しいな。俺は怖かったよ」


 ゴブリンはさらりと言った。


 何故こうも怖かったとさらりと言えるんだ? これじゃあウソついたオレが負けたみたいじゃねえか……


「じゃあ、別の世界から来たってのは本当なんだな? 」


 ゴブリンは頷く。


「それで、これからどうするつもりなんだ? 魔王を倒せば元の世界とやらに帰れるのか? 」


「それは分からない、ただ俺は魔王を倒すしかないんだ」


 ゴブリンはダイヤのほうをみた。彼女は気持ちよさそうに眠っている。


「君はこれからどうするんだ? 」


 今度はゴブリンから質問が来て頭を悩ませる。


「これからか、考えたこともなかったな。もう家出しちまったから親父の元にも帰れねーし」


「何でそうなるんだ? 」


 ゴブリンが不思議そうにこちらをみつめる。


「だってそうだろ! オレは冒険者になるって書置きを残して家を出たんだ! 今頃はオレなんて見捨てて次の跡継ぎ探しにご執心に決まってる! ! 」


 つい声を荒げてしまったが正直な気持ちだった。ゴブリンはそれを聞いてしばらく何も答えずひたすら遠くを見つめていたがやがて「そうかな」と呟いた。


 ゴブリンがどういう意味で放ったのか尋ねようとしたその時だった。


「あそこから煙が出ているぞ! 」


「スペードだ! スペードが何とか逃げ出して助けを求めているのかもしれない! ! 」


「おおおおおおおおおおおいスペード無事かあああああああああああああああああ! ! ! 」


 親父の叫び声が聞こえた。


「じゃあ、そういうことだから! 俺たちはこれで! ! 俺が言うのもなんだけど元気でな! ! ! ほら、ダイヤ行こう! ! ! 」


 そう言ってトオハはダイヤを起こそうと揺するも彼女はなかなか起きず諦めたのか肩に担ぐ。そのまま走り去るのかと思いきやふと立ち止まってこちらを振り向いた。


「そういえば、君の剣だけど俺よく剣のことは分からないけど少しオパールさんに似ていたから将来良い剣士になると思う、それじゃあ! ! ! 」


 ゴブリンは言いたいことだけを言って彼女を担いで立ち去ってしまった。


…………オパールって誰だ?


 少し待つと親父と数人の村人が縛られているオレを発見してオレは解放された。


「馬鹿者! 」と怒鳴る親父に「悪かったよ」と何度も何度も謝罪をした。


「それにしても、攫ったのがゴブリンで良かったな、火をつけることができるというのは知らなかったがお陰で煙からお前を見つけることができた。これが盗賊とか人さらいだったらこんなヘマはしてくれなかっただろう」


 村への帰り際親父がポツリと呟いた。それを聞いてオレの頭に長い間必死で火を起こそうと木を擦っていたゴブリンの姿が浮かんだ。


 まさかあいつ………………このためにあんなに必死で?


「ハハハハハハハハハハ」


 どんだけ変な奴なんだよあいつは。


 オレは親父達が心配する中腹を抱えて笑い倒した後考える。


 御者にも生活があるからこんな真夜中に遠くに行ってはいないだろう、あの2人はまだ近くにいるはずだ! ! でもその前にやることがあるな。


 オレは立ち止まり親父のでかい背中を見つめる。


「なあ、親父、オレさ………………」


 と話を切り出した。

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