3-15「ナンバー2の剣士」♢
「またきてねダイヤちゃん。………………必ずね」
「はい、必ずまた来ます。度々失礼しました」
魔王を倒したらまた来ようと固く決意して忘れ物の父の小包を片手に叔母さんに謝罪し家をあとにする。
こうやって魔王を倒した後にやることが増えていくのは楽しいことだ。トーハさんは何がしたいのかな?
今来た道を引き返すように駆けていく。時間帯が時間帯だからか子供たちが遊んでいるのが見えた。
それにしても着替えを忘れるなんて………………私としたことが恥ずかしい。ここが叔母さんの家で良かった。何を忘れたのか聞かなかった彼には感謝しかない。待たせるのも悪いので早く戻らないと!
森に一刻でも早く向かおうともっとスピードを速めようとした時だった。
「へーい、彼女1人? 」
「お、この子可愛いねえ」
剣を担いだ2人組に声をかけられた。男は立ち止まった私をみて続ける。
「俺たちさあ、見ての通り男の剣士2人だからさあ、君みたいな可愛い魔法使いが入ってくれると心強いんだよねえ」
軽そうな様子はともかく少し前なら願ってもない申し出だったかもしれない。でも今の私には彼がいるのだ!
「す、すみません。私既に仲間がいてその人を待たせているので! 」
「ダッセー振られてやんの」
もう1人の男性が茶化すように笑う。
「それではこれで! ! 」
そう言って立ち去ろうとしたときだった。
「待ちなよ! 」
周囲に誰もいないことを良いことに突然男に腕を掴まれる。思わず「きゃあ」と声が出てしまう。
「この先は門しかないんだぜ、門の外で誰かが待っているのかい? 」
「こんな可愛い子をわざわざモンスターが出てくる危険のある門の外で待ち合わせするなんて碌なやつじゃないよなあ、絶対俺たちのほうがいいって! ! 」
「や、やめてください」
強引に振りほどこうとするも男の力が強力で振りほどくことができない。一か八か大声を出そうとしたその時だった。
「やめろ! ! ! 」
高くも逞しさを感じさせる懐かしい声が周囲に響いた。声のした方向を見るとそこには1人の剣を担いだ人が立っていた。
「「ス、スペード! 」」
男たちが震えるような声を出した。
この声にスペードってもしかして………………
「お前らさ、嫌がってるんだからやめてやれよ」
「あ、ああ。悪かったよお嬢ちゃん。じゃあな! 」
男達は先ほどの態度はどこへやら、手を放してそそくさと立ち去ってしまった。
「大丈夫か? 」
女性がこちらに近付いてくるのがみえる。次第に近付いてきてそのものが茶髪の女性だということが明らかになる。
………………間違いない、彼女は私と同期のスペードさんだ!
スペードさんはルイーダに続く剣士志望ナンバー2の成績を収めた人だった。何度か顔を見た程度で話したことはあまりなかった。
「助けていただいてありがとうございます。スペードさん」
「あれ、もしかしてお前ダイヤか! ? 」
「私のこと知っているのですか! ? 」
お礼を言った後同期だということを話そうか悩んでいると何と彼女は私のことを知っていたようだ!思わず驚いてしまう。
「ああ、学校壊しかけたなんてやつはそうそういねえからな」
彼女はそっけなく答えた。
「そ、そうですか? 」
慌てて笑顔を作るけど顔が引きつってしまう。
「ああ、悪かったよ。その件はタブーだったな。それで、ここの生まれじゃないのに何でここにいるんだ? まさか攻撃魔法使えないのに冒険者になったのか? 」
「ええ、そのまさかです」
「マジかよ! 」
彼女が目を丸くする。
やっぱり知っているだけあって私が冒険者になるというのは驚くことなのだろう。
「まあ、家や村の評判上冒険者として旅に出なければといけない状況でしたから………………」
「家柄ってやつか、俺からすりゃ羨ましいけど攻撃系魔法がつかえないんじゃな………………お互い生まれが逆だったら良かったな」
「どういうことですか? 」
気になったので思わず尋ねる。スペードさんほどの剣士が卒業してからずっと生まれ故郷にいるというのが私としては気になるところだった。彼女は今頃冒険者として活躍しているだろうと考えていたからだ。
「うちは鍛冶屋でさ、顧客のニーズとやらを取り入れるとか言ってオレを学校に行かせたんだけどオレ自身は家業に興味はねえし冒険者にそのままなりたかったんだけど止められちまってな」
「そうだったのですか………………」
「………………というのは過去の話だ」
彼女はそう言ってウインクするとポケットから冒険者バッジを取り出した。
「じゃーん! こっそりニンビギまで行ってこのバッジを貰ってきたんだ! 部屋に書置きは残したし今からこっそり旅に出ようと思ってよ! ! 」
「ええ! ? それはちゃんと話した方がいいですよ」
「言ってもわかんないんだから仕方ねえよ。あの分からずや………………」
吐き捨てるように彼女は言った。
「そういえば、みたところ1人で旅してるのか? 」
「い、いえ………………仲間が1人います」
「へー、こういっちゃなんだが攻撃魔法使えない魔法使いと組むのは凄い実力あるやつなんだろうけどあんま良い奴ではなさそうだな」
「どうしてですか! 」
思わずムキになって問い詰めるように言葉に力が入る。
「悪かったよ。いや女1人で村歩かせるなんてさっきみたいに絡まれたらどうするんだってさ、さっきはオレがいたから何とかなったけどあのままだったら結構危なかったかもしれないぞ」
「それは…………」
実は彼はゴブリンですとは伝えられず思わず言葉に詰まる。透明になって村に入るという手段も考えたけどそれだと買い物ができないしいきなり現れても不自然だ。誰もいないと思って馬車にひかれる恐れ何かもあり、そもそも足音等で兵士に気付かれて入れないかもしれない。
トーハさんとの話し合いの末、色々考えると村に入ってから潜入したい時だけこっそり隠れて姿を消すというのが良いということになった。
「まあオレに任せろ! 組んでる仲間というやつにも興味があるし今みたいなこともあるから1人で行かせるなってハッキリ言ってやる! ! ! 」
「えっ……ちょっと! 」
戸惑う私などお構いなしというように「どこだ、森か? 岩陰か? よしとりあえずは外だな行くぞ! 」と問いただし私の手を握って門目掛けて歩いていくスペードさん、この状況をどう切り抜けようかあたふたしているとそこに剣士である男性を引き摺った女性が現れた。男性はうつ伏せで鎧は凍っていた。
「おいおいミスア! 倒れてるのはダンスタンか? どうしたんだよ! 」
「ゴ、ゴブリン………………森の入り口近くで顔に傷のあるゴブリンにやられたの! 」
「野郎! ! ! 悪いダイヤ、その件は後だ! ! ! 」
兵士がダンスタンという青年を抱えたのをみるとスペードさんは森に向かって一直線に走って言った。
助かった………………今のうちに抜け出そう。
と安堵のため息をつくもハッと気付く。
森…………? ゴブリン…………? いいや、トーハさんは氷の魔法を使えないはずだから違うはず! ! でも顔に傷があるって………………
彼ではないと良いと願いながら私はスペードさんを追いかけた。




