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3-10「透明になる魔法」

「こんにちは、トーハさん」


 時は流れ木の棒の影が真下になる約束の時間、俺はダイヤとの約束通りの場所で彼女を待っていた。


「こんにちは、昨夜はぐっすり眠れたようで良かったよ。いきなりで悪いんだけど今からケルベロスを倒すことになった」


 挨拶に交えて本題を伝えると彼女は笑った。


「ふふっ………………トーハさんならそういうと思って準備しておきました! 私は何をすればいいですか? 」


 彼女がガッツポーズをする。正直、俺は彼女は仰天するものかと思っていたけど…………頼もしい限りだ。


「それじゃあ早速、悪いんだけどガソリンと匂いを消すもの買ってきてくれるかな? 」


「はい、ガソリンと…………匂いを消すものというとダッシューコで宜しいですか? 」


 どうやらダッシューコという脱臭のための粉があるらしい。


「うん、それでお願い」


 俺が言うと彼女は頷いて回れ右をして買い物のために村に戻って行った。


 数十分後、ダイヤが1つの袋と重そうに持っている缶が目に入った。缶の大きさはポリタンク1つ分ほどだった。兵士にも心配されていて、どうやら休み休み運んでいるようだ。


 …………まずい、量を伝えるの忘れてた!


 とはいえ多くあっても困らないものなので彼女に感謝をしつつ森から飛び出て彼女を迎えに行く。無論兵士にみつかるが仕方がない。


「ウギャギャギャギャギャ! 」


 俺はゴブリンになりきるつもりで声を出しながら彼女に近付きガソリンをひったくって森に帰る。


「あ~待ってください。私のお水が~~~」


 ダイヤが俺だと気付いたのか大声で盗まれた冒険者を演じてくれる。兵士はそれを気の毒に思うも持ち場を離れるわけにもいかず静観していた。やがて彼女が駆けてこちらに走ってきた。


「はあ…………はあ…………わざわざ取りに来られなくても私がここまで運んできましたのに…………」


 彼女が重いものを持って更に走って苦しいのか胸に手を当てている。


「いやいやあそこまで持ってきてくれただけで充分だよ、ありがとう。ところでダイヤ、透明になる呪文形にできたって言ってたけどちょっと見せてくれない? 」


「透明の呪文ですか! ? はい、畏まりました」


 彼女は目を瞑ってスーハーと何度も深呼吸をする。パンルに教わったコツのできるだけ溶け込むようなイメージをしているのだろう。やがてイメージっができたのか静かな声で呪文を唱える。


「『インビジヴォー! 』」


 彼女が呪文を唱えるや否やスーッと姿が消えてしまい辺りには木々のみと人がいない森のようになっていた。


「すごい、本当に見えないよ! 」


 思わず感嘆の声を上げる。


「さあ、トーハさん捕まえてみてください! 」


 気をよくしたのか彼女が素早く動き回っているようだ。姿の見えない者を捕らえるなんて不可能に思えるがどうやら透明になれるだけで匂いは消せないようだ。ゴブリンになってからやけに鼻が良くなったので匂いで彼女のおおよその位置が分かる。

 油断したところですっと手を指で叩いて驚かせよう!


 そうこちらも遊び心が出てしまいわざと気付いていないふりを続ける。


「あれ~ダイヤどこだ~~? 」


「トーハさんにも分からないなんて凄いですねこの呪文! 待っていてください、今解きますから………………きゃっ! ? 」


 すかさず俺は彼女の手のあるであろうところに手を伸ばした。途端に何か柔らかい感触に指が包まれる。


 あれ……………………? まさか……………………いやそれはないはずだ。身長差を考えたら届くかどうかは怪しいはずだ。じゃあ何故……あ、もしかして………………………………


 膠着状態でいたなか彼女の透明の魔法が解かれる。そして俺をからかおうとしたのか屈む途中だった彼女の姿が現れた。


「トーハさんって………………………………本当にエッチなんですね」


 彼女の顔は真っ赤だった。


「い、いや今のは不可抗力であって………………………………ごめん」


 当たってしまったことは変わらない、すぐさま彼女に頭を下げた。


「それで……どうしてわかったのですか? 」


 彼女がムウっとして尋ねる。また怒らせてしまいそうだが仕方がない。


「ゴブリンは鼻が良くてさ、匂いで分かったんだ」


 ほんのりと赤色位に戻っていた彼女の顔が再び真っ赤になる。


「え、匂いですか…………そんな! 」


 彼女があたふたと自分の身体の匂いを確かめるように身体を回す。


「えっ……えっ…………」


 もう泣きそうな顔になっていた。もうちょっと気を配るべきだっただろうか?


「いやいやなんとなくくらいだし嫌な匂いってわけじゃないから気にしないで! 」


 慌てて付け加える。


「本当ですか? 」


 彼女が上目遣いでこちらをみる。


「うん、本当だよ」


 力強く頷く。


「でも、姿を消してもゴブリンにバレてしまうからダッシューコで匂いを消すことが必要なんだ」


「そういうこと……でしたか」


 彼女は納得したようなしていないような複雑な顔をする。


「それで、匂いを消してケルベロスの近くにいるゴブリンをまずは倒すのですか? 」


 彼女が首をかしげる。「ううん」と俺は首を横に振る。


「ゴブリンと協力してケルベロスを倒すんだ」



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