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3‐3「ドンカセ到着」

「トーハさんって………意外とエッチなんですね。」


 それから2時間ほど、彼女は顔を赤くしながら黙々と本を読んでいたのだが読み終わったのかポツリという。


「面目ない、返す言葉もない。」


 素直に数時間前のことを謝罪する。


「でも、ちょっと安心しました。」


 彼女が何かを呟いたが聞き取れない。


「それに、もとはと言えば私が突然大声を上げたのが原因ですし、申し訳ありませんでした。」


「そういえば、あの時何であんな大声をあげたの?」


「それはですね。」


 彼女は目をキラキラとさせながら本を閉じて俺に見せる。


「この本何と………強化の魔法や今では許可なく教わることができない小さくする魔法に眠らせる魔法魔法も載っていたんです。」


「え、それは凄い。」


「多分王様も私が攻撃魔法が使えないことを考えてこれを下さったんだと思います。」


 彼女が嬉しそうに本を抱きしめる。


 ああ、数時間前はそこに………


 と再びあの出来事が蘇るが急いで振り払った。


「それで、何の魔法を読んでいたの?」


 俺は尋ねる。


 選択肢が多いと嬉しいのだがどれから手を付ければいいのか迷ってしまうのも事実だ。


「はい、こちらの敵を小さくする魔法が便利かなとこちらを勉強していました。」


「それは心強い。」


 敵を小さくする魔法、本当に心強い魔法だ。そんな強敵も小さくしてしまえば倒すことの難易度がぐっと下がるからだ!


「ですが、まだ使えるようになるには時間がかかりそうです。」


 彼女が申し訳なさそうな顔をする。


「いやいや、そんな強力な呪文なんだから時間かかるのも仕方ないよ。」


 そんな会話をしていると御者が


「お嬢ちゃん、もうすぐドンカセだよ。」


 と丁寧に知らせてくれる。それを聞いて前方を見るとこれまで同様に壁と塀に囲まれた村が見えた。大きさで言えばニンビギよりは小さいがダイヤがいた村と比べると少し大きそうだ。


「もうすぐみたいだね。」


 俺は相談声をかけ彼女のバッグの中に入った。


「ここで良いです。」


 そのまま待機しているとダイヤが村の門の近くで馬車を止めた。


「もう少しで村なのにここで良いんか?やっぱりお嬢ちゃん変わってるね~。」


 御者の返答に笑顔で答えながら彼女はバッグを持ち馬車を降りた。


「本当にありがとうございました。」


「こちらこそご利用ありがとう、ここまでで15000ゴルドだけど冒険者バッジで半額になって7500ゴルドね。」


 彼女はバッグから巾着を取り出し銀貨1枚と銅貨2枚に紙幣1枚を取り出して手渡した。


「はい、丁度7500ゴルドのお預かりだ。まいどあり。」


 と御者は受け取りそのまま村へ次に乗りたい人がいないだろうかと村に行こうと手綱を引きかけるもふと手を止めてこちらを振り向いた。


「そういえばお嬢ちゃん、できればあそこの森には近づかないほうが良い。あそこの森には出るらしいよ………三つ首の化け物が。」


 御者が口にするのも恐ろしいと言わんばかりに震えながら伝えるも


「じゃあ、気をつけな!」


 と手を振った後に手綱を引き村の中へ入ってしまった。


「いよいよ、か。」


「はい。」


 俺たちはバッグ越しにこれから始まる戦いに向けた覚悟を決めるようにお互いを見つめた。


♥♢♥♢♥♢♥♢♥♢♥♢♥♢♥♢♥♢♥♢♥♢♥♢♥♢♥♢♥♢♥♢♥♢♥♢♥♢♥♢♥♢♥♢♥♢♥♢♥♢♥♢♥♢♥♢♥♢♥♢



 ダイヤは荒野を渡り森へ向かう、荒野には2メートルくらいの岩が点々とあってその気になれば岩陰に隠れて村まで渡ることもできそうだ。そんなことにはならないと信じたいが………。森までは600メートルほどだ、意外と距離がある。


 しかし、周りを見渡すと村へ向かうか村から出てくる馬車ばかりで森へと向かう人は見られない。モンスターがいる森へ向かうというのは珍しいのだろうな。思えばダイヤの村トータスもニンビギも森まで歩いてくる人なんていなかった。冒険者は夜は宿、移動は馬車が基本なのだろうか?バッグに揺られながらそんなことを考える。


「着きましたよ。」


 気付いたら森から入って50メートルくらいの所で彼女が立ち止まった。


「ありがとう。」


 お礼はバッグから降りた。数分ぶりの娑婆だ!うーん、と軽く伸びをする。


「それで、この後どうしますか?この村には親戚の方がいるので挨拶をしておきたいのですが………。」


「そっか………それじゃあダイヤは親戚の人に会う前か後に村で情報収集をお願い。俺は………」


 言葉を切って森を見つめる。ここの森はトータスから続いていたニンビギまでの所とよく似ている。


「………この森を探索してみるよ。」


「そんな、危険です!もしケルベロスと遭遇なんてしたら………私もいっしょに行きます!!!」


 彼女もついていこうと食って掛かろうとするのを手で制した。


「大丈夫、ケルベロスと万が一遭遇しても戦わない。それに身長は高くないだろうし木の上を移動する予定だから戦闘にはならないよ。3つ首があるやつ相手に俺一人じゃ勝てるか分からないだろうし。」


「ですが………わかりました。」


 彼女は「むう」と言いながらも納得してくれた。


「じゃあ、決まりだ。待ち合わせはここにするとして待ち合わせ時間はどうしよう………。親戚にも会うのだから明日の朝にする?泊まるの勧められたりすると断り辛いだろうし誘われなかったら宿屋に泊まればいいから。」


「トーハさんは1日どうするのですか?」


「まあこの森は広いから1日会っても足りないよ。俺は大丈夫だ。それより馬車旅で疲れただろうし今日は休んでおいたほうが良いかも明日出会って即ケルベロス討伐………なんてことになるかもしれないから。」


 冗談交じりに言う。しかしこれが本当になるかもしれないのがこの世界の恐ろしいところだ。


「わかりました、それでは今日は休ませてもらいます。明日の、ドンカセ向きで木を立ててその影が真下になったらでよろしいですか?」


 珍しく彼女からの提案だ。


「うん、それで行こう。じゃあまた明日。」


 彼女は「はい。」と頷いた。彼女が荒野を渡り村に入るのを見届けた後、俺は回れ右をして森の奥を見る。


「よし、偵察頑張りますか!」


 頬を両手で叩いて気合を入れ、俺は森の奥へ歩き出した。


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