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1-5「地獄に吊るされた一本の糸」

「ギギギ、ギギギギギギギギギギギギギギギギギ! 」

【まさか、人間どもが待ち伏せているなんて! 】


「ギギギギギ? 」

【どうします? 】


「ギギギギギ!ギギギギギギギギギギギギギギギョギギギギギギ! 」

【慌てるな! 下等な人間どもはすぐに処分してやる! 】


 門を突破した先に兵士がいたことが予想外のようでゴブリンたちは慌てて作戦会議のようなものをする。作戦は簡単、実力で突破する! というものだ。この、特に参考にならないような実力行使の結論は意外な形で役に立った。


「なんだ? こいつら、ゴブリンのくせに作戦を練っているのか! ? 」


「むやみに飛び込むな! こいつらのなかにゴブリンシャーマンというものがいて今皆に作戦を伝えているのかもしれない! ! 」


「とにかくトータスの村の兵士の名に懸けてこれ以上は進ません! 」


 ────何と、向こうの兵士たちがこちらを警戒し始めて膠着状態に突入したのだ!


 この隙に兵士たちを観察する、すると何人か動揺しているような兵士たちを見つけた。門が破られることは予想外だったのだろうか? それともゴブリンシャーマンというのに警戒している?

 何にせよそれならば都合がいい! 地獄に吊るされた一本の雲の糸を見つけた! ! !


「ギギギェ! 」

【かかれぇ! 】


 先ほど同様、ボスの言葉を皮切りにゴブリンたちが突撃する。


 俺は勢いよく地面を蹴り、先ほど見つけた咄嗟の出来事に弱いような動揺しているような兵士の元へ飛び込んでいった。思えばこの兵士は先ほど威勢よく取り仕切っていた人物ではないだろうか? 土壇場で人の本質が分かるというが人の本質というのは分からないものだ。


「…………っ! 」


 フォンッ!


 幾ら一流の兵士といえど咄嗟の状態から繰り出される一撃は読みやすい! ただ対象物を仕留めることだけを考え振るわれた直線的な一閃の軌道に棍棒を差し込み剣を弾く!

 後ろも地獄という戦場ならばひたすら前へ進むしかない! ! !


 ガキィンッ!


「……しまった! ! 」


 剣を弾かれ大きく仰け反った隙に俺は村の中へ駆け出した! ! !


「ゴブリンが村へ入ったぞおおおおお! 戸締りをし武装をしろおおおおおおおおおおおお! ! ! ! ! 」」


 兵士が大声で叫んだ。


「まずい! 妻が! ! ! 」


「娘が生まれてまだ5年経ったばかりなんだ! 」


「くそ! 追うとしてもこいつら無駄に力がああああ! ! ! 手を貸してくれ! ! ! ! 」


 これで兵士ではない一般の男性は家に戻るだろう。追手の数が減るのは丁度いい、俺は人間を殺す気なんてさらさらないからだ。とりあえずどこかへ隠れてほとぼりが冷めたら逃げ出すとしよう! !


 幾つもの家屋を越え丘に差し掛かる、家屋はレンガから木材と素材が一軒ごとに異なっているという状態で統一感がないのが何だか俺の世界と似ているように思えた親近感を覚える。


 ──────恐らく俺の世界と同じく古い何代も続いているような家が木造建築なのだな。


 と推測をする。丘の上にひときわ大きなレンガの建物が見えた。


 ──────あれがこの町で一番偉い人の家だろうか? 何にせよ村全体が囲われているからか俺の世界の屋敷とは異なり塀や門も何もないのは都合がいい! この大きな建物を利用して屋根の上にでも隠れさせてもらおう! !


 勢いよく丘を登ったその時だった。


「ギーギ! 」

【おーい! 】


 大きな緑色の姿が見えた、俺にとってこれほど大きな姿が見えるのは人を除けば一体しかいない…………ボスのゴブリンだ! ボスのゴブリンがここまでたどり着いたのだ! 更によくみるともう1匹俺と同じサイズのゴブリンもいた。


 ──────小柄な俺でさえ見かけによらずパワーがあるのだから人ほどの大きさのボスだとどれほどのパワーで棍棒をふるえることだろう………………犠牲者がでたかもしれない。


「ギギ! ギギギッギギギギギ! ギギギ、ギギギギギギギギギギギ? 」

【ボス! 無事だったんですね! それで、人間をやりましたか? 】


 ボスに悟られないようにそれとなく尋ねる。


「ギギギギ? ギギギギ、ギギギギギギギギギギギギギギギギギギ。ギギギギギギギギギギギギギッギギギギギ? 」

【人間? バカ言え、お前と同じ手を取ることにしたんだ。雑魚は無視してボスを取ろうって腹だろ? 】


「ギェ……」

【えぇ……】


 どうやらボスは俺と同じようにひたすら前に進むことを考えていたようで村人に手を付けてはいないようだ、だが安心したのもつかの間


「ギギ、ギギギ! 」

【ほら、行くぞ! 】


 ボスに背中を押されてしまう。その先は──────丘の上のあのひときわ大きなレンガ建築の家だった!


 ──────しまった……! これでは変わらない! ! ボスの隙を見て逃げ出すか……何か理由を考えなければ! !


 俺が焦りこの場を去るうまい言い訳を考えようとしたその時だった!


「危険よ! お父さんは行かなくていいでしょ! 」


「それもそうだが、私は元戦士として……この村のために行かなければならないのだ! 」


 家の方向から男女の声が聞こえた。見上げるとそこには2人の男女が言い争っていた。声からして年配のようだがここからではよくみえない。


「ギギギギ! ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ! ギギギ! 」

【奴らだ! あんな大きな家に住んでいるのだからボスに違いない! 行くぞ! 】


 そういって1匹の俺とほとんど同じ大きさの小さいゴブリンは勢いよく駆け出した!


「むっ! ……お前はここに隠れていなさい! 」


 ボスの走り出す音に男が気付いたようだ、この距離では家に戻るよりも女を変に目立たせるよりは隠したほうが安心だと判断したのだろう。


 ゴブリンが大きく飛び上がり棍棒で頭から叩き潰そうとする。


「ギギェ! 」

【死ねぇ! 】


「愚かな……はあっ! 」


 ザシュッ!


「隙だらけだ、ゴブリンめ」


 しかし、その棍棒が振るわれる前にお腹の辺りから真っ二つに一刀両断された。


「次は……ほう、まだ2匹もいたか! 」


 男は俺とボスの姿にも気付いたようでこちらに目掛けて走ってきた。


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