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2-32「お高いお店」

「なかなか他にみないようなデザインですね」


 ダイヤが馬車を見つめて言う。彼女もこの飾り用にはダイヤも驚いているようだ。


「おおう、ディール無事だったか!!どうやら下手に動かずここで待ってて正解だったな」


 彼女の声を聞いてか腕っぷしのいい黒いタンクトップを着た男が姿を現す。あれで北の国にいったのなら確かに偉いことだ。

 しかし、男は俺の姿を見るや否や声を上げた。


「あぶねえ!ゴブリンだ!逃げろ!!! 」


「まあまあ、店長、このゴブリンさんは命の恩人なんっすよ。さっき迷子になっているところを助けてもらったっす」


 それを聞いて男は店に並んでいる剣を取ろうと伸ばしていた手を止める。


「何だ、ディールの知り合いか?仮装か何か知らん紛らわしいことは確かだがディールが無事なのを見ると悪い奴じゃあなさそうだな。ディールを助けてくれてありがとうよ」


「いえいえ、俺も助けられましたから」


 頭を下げる。続くようにダイヤも頭を下げた。


「それで店長!この方たちが店についてアドバイスをくれるっていうんっすけど。あ、こっちじゃみえにくいっすね」


「何だと!?そんなことは頼んでねえ!余計なお世話だ!! 」


 と店長が怒るのも聞かずにディールは馬車に入り馬車の向きを変え車内に入る。俺たちが見ていたのは後ろ側だったようで前にも武器が並べられていたが車上販売のように会計用に窓の付近は空けられていた。


「まあまあ、品は良いものなんすから、えーっとそれじゃあまずはこれから!店の一番の自慢!あのドラゴンすらも一刀両断すると言われているという伝説の剣、『竜殺しの剣』!お値段何と100万ゴルドっす!!! 」


「高っ!!!! 」


 ダイヤから説明を聞いて円と仕組みはそれほど変わらないと聞いていたので思わず突っ込んでしまうとギロリと店長の怒りを込めた眼が向けられる。そのすぐ近くでダイヤが何やら数えながら「何とか買えそうです」と囁いてきたのも怖い…………。


「高いっすか?じゃあこれはいかがっすか?伝説の鍛冶屋が作ったと言われている切れ味もなかなかの剣、お値段やすくなって90万ゴルド! 」


 その後も何度もディールの品物紹介は続く。どれも紹介を聞くと凄いものだということは伝わるがその分値段も凄く70万を下回ることはなかった。成る程、庶民としては売れない理由は明らかだった。


「どれも品物は凄そうだけど高いよ!! 」


 正直に告げる。


「なんでえ!安い物を置いて儲けて何になる!!!女子供ゴブリンにも分からねえ……男は一発狙うもんだ!!!! 」


「それなら、こういう旅の形ではなくどこかお金持ちの勇者が集まるようなところに店を構えるべきでは?冒険者はお金がないのがほとんどでしょうから旅してまわるお店の剣は値段か場所の都合がつかずに買うことはできませんよ! 」


「うるせえ!風に当たってくる! 」


 そういって、店長は森の奥に消えてしまった。


「ごめん、商人でもないのに言い過ぎた」


「いや、あれで良いんすよ。店長は昔高い武器がたまたま売れた快感が忘れられないんすよ……はっきり言ってくれてありがとうっす。そうだ、お礼をしないといけないっすね」


 ディールは店内をゴソゴソと何かを探しているようでしばらくすると手に何かを持ってきた。それは小さな鎖が幾つも繋げられ服になった鎖帷子だった。


「他の商品が高いからかこれが一番の売れ行きの品っす。手作りでもしかするとほかの店よりできが悪いかもしれないっすが受け取って欲しいっす」


「ありがとう」


「え、私の分までもらってしまっても良いのですか? 」


 彼女は2つくれたので1つをダイヤに手渡す。


「いや、失礼したっす。ゴブリンさんには大きすぎたっすね。今度ゴブリンさんのも作っておくっす」


 1つは俺の身体が小さいためサイズが合わない。それに気付いたのか慌てて訂正する。


「いや、俺も成長するだろうしお構いなく。ありがとう」


 成人男性くらいの身長のゴブリンのボスの姿が浮かんだ、ボスのように成長したら使わせてもらうとしよう。しかし、どこにしまおうか。


「トーハさん、これ……よかったら使ってください! 」


 俺が仕舞うのに困っているのを悟ったかダイヤがバッグから小さなバッグを取り出し手渡してくれた。


「ありがとう!これはありがたく使わせてもらうよ」


 早速彼女から貰ったバッグにディールお手製の鎖帷子を収める。


「店長のことは本当にすまないっす、色々とお世話になったっす。わたくしは店長を待ってからトータスに向かうっす。本当にありがとうございました」


 ディールは俺たちにお辞儀をする。


「いいよ、気にしないで。またどこかで会えるといいな」


「ディールさん、この鎖帷子、大切に使わせていただきます。お元気で」


 俺たちは彼女に別れを告げてニンビギのほうに歩いて行った。




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