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2‐31「他の国の話」

「トーハさあああああああああああああん! 」


 彼女が再び大声でこちらに呼びかける。


「あれ、女の子がなんか名前のようなものを叫びながらこっちに来るっすね、トーハって誰っすか? 」


 何か面倒なことになりそうだと予感がするも彼女の疑問には答えず手を振った。


「あれ、彼女が言うトーハさんってゴブリンさんのことっすか!? 」


 彼女があんぐりとした表情で尋ねる。


「ああ、言ってなかったけど俺の名前は阿藤踏破っていうんだ。そういえば、君の名前は? 」


「アトートーハ……ああ、わたくしの名前はディールっす! 」


 よっぽど意外だったのか機械的にこちらの質問に答える。そこに彼女がやってきた。


「あれ、トーハさんともう一人………………あなたは? 」


「この子はディールって言うんだ。迷子になっていたみたいで……」


 俺の言葉が届いたのかは定かではないがダイヤは不思議そうにディールを見つめる。


「うっ……そんな純粋な目で見つめられると困るっす」


 ダイヤの目を合わせて純粋な丸い目で覗き込むように見つめられると何か胸が痛くなる、というのはよくあることなのでディールに同情する。無表情でしばらく見つめていたがダイヤはふっと


「そうでしたか、私はダイヤ・ガーネットです。ディールさん、よろしくお願いします! 」


 彼女はお辞儀をする。


「こちらこそよろしくおねがいするっす。お二人はどういう関係で……ってえ!?そ!それは冒険者バッジ!? 」


 ディールの視線がダイヤの胸のペガサス模様のバッジに釘付けになる。


 あれが冒険者バッジなのか……ということは─


「冒険者として認められたんだね、おめでとう! 」


「はい!トーハさんのお陰です」


「えええええええっ……2人って一緒に旅をしてるんすか!?一体どういう関係で? 」


 会話から俺たちの関係を読み取ったようでディールが驚きの声を上げる。


「さっき話した通りで………………」


「話せば長くなるんですけど実は………………」


 俺の言葉を遮ってダイヤが喋り始めた。先ほどの俺の話とほとんど同じだが、たまに攫われたときの恐怖と言った感情が含まれていて申し訳なくなる。それにしても、いつもより多少前のめりな気がするのは気のせいだろうか?


「ほとんど、そこのゴブリンさんと同じっす……ということはゴブリンさんは本当に巨人と言われているサイクロプスを倒したんっすか!?すごいっす!!! 」


「いやあれは俺だけの力じゃないんだけどね」


 ディールが歓喜の声を上げたので慌てて訂正する。


「でもそのあともトーハさんは色々と本当に頼りになるんですよ! 」


 彼女はそれからのことも話し始めた。仕掛けやゴーレムにパンルの霊がいたパンルの洞窟でのことだ、我ながらよくあれを抜けられたと思う。本当に奇跡の連続だった。


「はあ~本当に冒険者になる前から大冒険してるんっすね~そんな大冒険、冒険者の方の話を聞いてもなかなかないっすよ」


 全ての話を聞き終わった後、ディールが感嘆の声を上げた。どうやら信じてくれたらしい。重要な話だったので立ち話になったが、ここでいつまでも立っているわけにも行かない。今もあの馬車は無人なのかもしれないのだ!


「じゃあ、お互い自己紹介も終わったしそろそろディールの店の馬車に向かおうか! 」


 そう切り出してディールの馬車まで歩いて行った。1列になって歩く。勢いよく切り出したがディール、ダイヤ、俺の順で俺が殿だ。案内人の彼女が先頭で、デイールとダイヤの間が空いていたら不自然なのでゴブリンの俺が見つかりにくいように一番後ろを歩いた。3人で森の中を見つからないように歩く。ディールはサイクロプスを倒したのだから大手を振って道路を歩けばいいと言ってくれたが見た目がゴブリンなのでというと納得してくれた。


「ディールさん、私色々な旅の話を聞きたいです」


 ダイヤは期待を声に込めてそう言った。


「そうっすねえ……旅の話と言っても国によって特色があるんすよねえ。ここスウサは真面目で堅実で平和なものっすけど東の国トーイスでは冒険者のギルドやコロシアムとお金が激しく動いてて北の国スーノは寒いところと寒くないところが極端なんす。防寒対策を怠って偉い目にあったっす。西の国エウストは………………店長が危険って言っていてまだ行けてないっす」


 それから馬車まで向かうしばらくの間はディールの話を聞いた。国を渡って各地を旅していたようで色々な話を聞いた。幸運にもゴブリンでギャンブル関係は縁がないので北の国の防寒対策を怠らないようにと心に留めておこう。それにしてもオパールさんといい西の国には一体何があるというのだろうか?


 じゃあ、オレ達はトーイスかスウサに行くか。


 オレが木々を見つめながらそう考えてときだった。


「あ、見えたっす! 」


 やがてさっき見た武器が所狭しと飾られているディールの馬車が目に留まった。

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