2-25「思わぬ奇襲」♢
このままボウッとしているわけにもいかない!
私はパンッと両手で頬を叩き気合を入れる。この先何があるのかわからないのだ!ひょっとしたら既に試練は始まっていて油断して中に入るとすぐに奇襲を受けて試練失敗───なんてこともありえる。
「行きます! 」
気を抜かないように一歩一歩確実に地面を踏みしめるように洞窟に向けて歩いて行く、途端にビューっと強く風が吹いた、気分も出てきた。洞窟前で一旦止まり深く深呼吸をして洞窟に入る。
洞窟内は高さ4メートル横幅5メートルくらいと広く洞窟の両端には等間隔で松明が置かれていて明かりに困ることはなさそうだった。ただ、困ったことに曲がり角があるのか先に何があるのかまでは見通せない。
───ひょっとしたらあそこから奇襲をされるかもしれない。
私はいつ奇襲を受けても『シルド』を発動できるように気を貼って一歩一歩踏み出していく。トーハさんと話をすることはできなかった。これは彼が私のカバンに入る時に提示された条件の1つであり警告でもあって試練の会場ではいつどこで誰が聞き耳を立てているかも分からないからだった。
悲鳴を上げたら飛び出すと言ってくれたが彼の言う通り誰が聞き耳を立てているかも分からないこの場所で彼が飛び出したら途端に兵士が出てきて彼が狙われてしまうかもしれないから今回ばかりは悲鳴をあげず私1人の力で頑張ろう!と心に決めたのだった。
曲がり角が近づいてくる、ここまでは何もなかったけど奇襲を仕掛けるならここは絶好の場所だ───間合いに入る危険を少しでも減らすために左に曲がっているようだったので右端の岩肌に沿って覚悟を決めて歩いていく。
一歩─また一歩と前に進んでいく。心なしかいつもよりも歩みがゆっくりになりそれとは裏腹に心臓の鼓動がバクバクと速くなっていた。
できれば、何もありませんように───
私は祈る気持ちで曲がり角に差し掛かる最後の一歩を踏み出し即座に左向け左で向きを変え曲がり角の先をみる。
曲がり角の先には───誰もいなかった。
私はホッと安心し脱力感に襲われる。無駄に気張っていたのが恥ずかしくなった。曲がり角の先を見ると松明に照らされた大きな広間がみえた。
ここで何が行われるのだろうか?
私の意識が完全に広間に向かったその時だった。
「ようこそ、試練をご希望の方ですか? 」
ふいに後ろから声がして肩を掴まれる。
曲がり角に誰もいないことからすっかり警戒も解いたところを襲われるとは何という失態だろう。私は完全に油断をしていたところを襲われ声も出せず恐怖で足も震え尻もちをついてしまった。
「行けませんねえ、曲がり角からの奇襲を警戒したのは良かったですが曲がり角の端に人が潜んでいる可能性を見落とすとは」
兵士と同じ鎧を着ている無精ひげを格好良く整えている男性は岩の色と模様をしている岩そっくりの毛布を持ちながら私を見下ろす。
───早く逃げなきゃ!
そう思い逃げようとしても身体が震えて動かない。
震える私に男性は笑顔で手をさし伸ばす。
「ですがご安心を、これは試練の一環でもない私の老婆心故の単独行動です。貴方が冒険者となったとき相手にするのはモンスターでしょうし万が一に備えこれからは曲がり角だけではなく端にも警戒するようにしてくだされば問題ありませんよ」
男性はニコッと笑顔で笑った。
「す、すみません。こんなみっともない姿をお見せしてしまうなんて」
私は彼の手を借りながら身体を起こす。
「こちらこそ失礼いたしました。私は冒険者試練担当のレンシと申します。貴方、お名前は? 」
「私はダイア・ガーネットと申します」
「おお、ダイヤさんでございましたか。それではダイヤさん、こちらの広間にどうぞ!まずは貴方にはペーパーテストを受けていただくことになっておりますので」
私はレンシさんの後をついて広い場所へと歩いていく。ペーパーテストとは一体どんなテストなのだろうか………………ペーパーテスト!?
「あの、ペーパーテストとはつまり紙のテストということですよね? 」
私は思わず確認する。
「はい、言葉通りそのペーパーテストです」
彼は振り返ることなく答えた。




