2-24「冒険者の試練はアトラクション!?」♢
私は冒険者になるべくニンビギから南西に向かって歩いていた。私たちの目指す場所はただ1つ───試練が行われる洞窟だ!
山岳地帯を人が通れるように舗装された道なりに沿って上りしばらく経った。傾斜なので馬車では通れず徒歩を選ばずを得ないのだがこの先に村はあれど馬車のほうが圧倒的に早いので歩いている人は私を除いて誰もいなかった。
「洞窟なんてあったら一目で分かりそうな地形だなあ」
トーハさんが私のカバンから用心深く顔を最小限に出して辺りをキョロキョロと見渡してから言った。
山岳地方は一緒に歩いていると見つかる恐れがあるため、私の発案でトーハさんにはこうしてカバンに入ってもらっている。
バレたらとか重いからとか色々と心配していたようだが、荷物検査を道端の人にされることはないのと実際に彼を持ち上げたりして納得してもらった。
「そうですね、スライムさんたちの洞窟ほど見つけるのが難しいということはないと思います」
スライムさんたちの洞窟は入り口が小さく中が広いなんて想像できなかったが入ってみるととても広い洞窟に加え隠し扉もありとかなり凝った洞窟だった。
しかし、そういう例もその件で知ることができたのでもう見渡すことはないと信じたい。
「あっ………………そういえば、鍵どうしましょう。あの時は試練とは何の関係もない物だったと知らずに持ってきてしまいましたが………………」
ふとスライムさんたちの洞窟から連想して思い出したのは鍵のことだ。あの時は試練の一環でなりきっているのだと思っていたけどあれは王様も知らない鍵だった、それを知らずに抵抗する大怪盗パンルを名乗る男から手に入れたのは心が痛む。
「確かに、無関係だったなんてあの人には悪いことしたなあ」
彼も同じように気の毒に思っていたようだった。やがて少しの沈黙が訪れる。かなり登ったのだろう。もう馬車の音も聞こえず私が歩く音と風の音がたまに聞こえるくらい静かになった。沈黙を破ったのは彼だった。
「よし!確か俺たちが出た出口はニンビギから近かったはずだからダイヤがこの試練を突破したならそれを報告してるときに返せたら返してくるよ」
彼の答えを聞いて思わず頬が緩んだ。こういう意見を聞くとちょっと心配性なところもあるけど誠実な人なんだと実感する。
「いえ、それでしたら私も行きます!元はと言えば私の試練が原因ですから!! 」
2人で取ったのだから2人で返しに行って2人で怒られる───こればかりは譲れない。
「2人一緒に取ったのですから責任も2人一緒に取りたいです! 」
「分かった、ダイヤが冒険者として認められたら一緒に返しに行こう」
彼が気まずそうに答える。
やった!、とこれから怒られに行くという話をしていたのに心の中で小さくガッツポーズをする。
何故か彼は「2人一緒」という言葉に弱いみたいだ。私はお気に入りなんだけどな……。
登り坂もいよいよ終わりのようだ、登って行くとこれまでのように登り坂が見える代わりに平らな大地と大きな岩が徐々に顔を出す。
やがて岩にぽっかり穴が開いていて洞窟だということに気付くと私は歩きながら彼に声をかけた。
「見えましたトーハさん、恐らくあれが試練の洞窟で…………」
私はそこから数歩歩いたところで信じられないものを目にして言い終わる前に余りにも衝撃的な光景に言葉を失ってしまう。
「どうした、一体何が………………」
彼もカバンから覗いてみてしまったようだ。
洞窟の入り口には───でかでかと『冒険者の試練場』と書かれた看板があった。
「これは………………アトラクションか何かなのかな? 」
「アトラクション………………? 」
アトラクションとは何だろう?そういえば───!トーハさんは自分のことをアトートーハと言っていた。その関連の言葉だろうか
「トーハさんって向こうの世界では偉い人だったんですねえ……」
私はしみじみと言った。
「何か勘違いしているようだけど……簡単に言うと遊ぶところかな? 」
言われてみると確かに看板からは楽しそうな雰囲気が伝わってくる。でも……
「冒険者の試練にしては緊張感がなさすぎますね」
「うん」
私はしばらく呆然と目の前の緊張感のない洞窟を前に立ち尽くしていた。




