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2-23「南西の洞窟へ」♢

ここから視点が変わりダイヤ視点です。

 ♢

「ほう、試練をクリアしたのか!ブラアアアアアアアアアアアアアアアアボオオオオオオオオオオオウ! 」


「はい、今回の試練で、冒険者というのは本当に命懸けなのだと痛感しました」


 私たちは大怪盗パンルという人から鍵を取り返した後、ニンビギまで戻ってきていた。信じ難いことだけど洞窟から出てきた時は陽が昇っていたので、あれだけの大冒険が日が昇るまでの出来事だったということになる。初めて2人で来た時のあの木の所でトーハさんと別れた。せっかくだからスライムたちの所へ行くようだ。

 

 私もお別れを、と思ったのだが


「念のためはやく王様の所へ行ったほうが良い」


とトーハさんに言われたので先に王様の所へ試練の通過を伝え正式に冒険者登録を行いに来たのだ。


「ほう、それほど難しかったのか? 」


 王様が興味津々に尋ねた。私は無言で頷く。これほどの試練を突破できないとこの先厳しいということだろうか?確かに、大冒険だったがこれで音を上げていたら魔王は倒せないだろう。相手は人が及ばないような悪と呼ばれているのだから。


「すみません、私の力不足でした」


 正直に謝罪した。トーハさんは仕掛けにゴーレム、最後の大怪盗パンルと十分にやってくれた。私がもう少ししっかりしていればもっと楽に倒せたはずだ。


 ………………強くなりたい、でも攻撃系の魔法を使おうとするとあの日のことを思い出して足がすくんでしまう。このままでいいとは思っていないが自らの無力さに涙が出そうだ。こんな私と一緒で心強いと言ってくれたトーハさんには感謝しかなかった。


「………………いやいや失礼、こちらこそ余計なことを言ってしまった。それでは、試練達成の証をみせて貰えるか? 」


 王様は少し何かを考えるような顔をしていたがすぐにやんわりとした表情に変わり、私に試練達成の証の提出を促した。


「はい」と私は返事をした後に事前に持ち物検査の時に許可をもらい持ち込みの許可を得ていた鍵を取り出し兵士の方に手渡した。

 王様はその鍵を兵士から受け取りまじまじと見つめたあと目を細めた。


「………………これは一体? 」


「え? 」


 予想外の王様の反応に思わず目を丸くして無礼な返答をしてしまう。


「失礼いたしました。ご無礼をお許しください、ですが私は洞窟を探してこの鍵を発見しました。王様のおっしゃった『とあるもの』とはこの鍵のことではないのでしょうか? 」


「うーむ、努力は称賛に値するがこの鍵ではないのぉ………………これは南西の洞窟で手に入れたものか? 」


「南西ですか?私は南東の洞窟と伺っておりましたが………………」


 どういうことだろう?まさか私は聞き間違えた?だが南東と心の中で方角を間違えないように何度も反復したので間違えるはずがないのだが王様が間違えるとも思えないので自信を無くしてしまう。


「なんと!南東と言っていたのか? 」


 王様は慌てて周りの兵士に問いただす。兵士は言いにくいことのように言った。


「はい、確かに王様は彼女に南東とおっしゃっていました」


「馬鹿者!ならなぜそれを早く伝えん!いつも冒険者の試練は南西だと聞いているだろうが!! 」


「申し訳ございません。王様が彼女は特別だとおっしゃっていましたので南東にも彼女専用の洞窟を用意してあるのかと…………」


 兵士が膝をついて頭を下げた。その後少しの間沈黙が続いたがやがて王様が「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおう! 」と両手で頭を抱えるようにして大声を上げた。


「ダイヤよ、本当に申し訳ない。方角を伝え間違えていたようだ。この鍵は其方のものだ、それで手数をかけて悪いが南西の洞窟に言って『とあるものを』経ってきてくれないだろうか? 」


「はい、畏まりました」



 私は返事をした後に兵士が持ってきた鍵を受け取るとお辞儀をし回れ右をして玉座の間を後にした。

 困った、トーハさんになんて言おう。それに………………この鍵は一体何なんだろう?


 王宮を出て森まで歩いて帰る。すると待ち合わせの木の上に一体の緑色の姿が見えた。思えば緑色の身体をしているゴブリンが緑溢れる森の中にいるのを見つけるのはなかなか難しい。現に私も待ち合わせ場所でなければ気付かなかったかもしれない。


「トーハさああああああああん! 」


 人目がないのをみて手を振る、するとひょこん!と彼は姿を現した。


「ああダイヤ、早かったね」


 彼が木を丁寧に降りてくる。前回の出来事以降ぎこちないながらも彼は私のことを名前で呼んでくれるようになった。名前で呼び合う仲は本当の仲間という気分がして胸が熱くなる。


「それで、冒険者として認められた? 」


 彼が私の目を見て尋ねてくるも思わず私は目を逸らしたくなった。まだ認められてませんというのはこれで二度目だったからだ。


「実は………………」


 しかし隠していても仕方がないので事の顛末を説明した。


「王様がうっかり方角を間違えたか………………何というか困った王様だね」


 腕を組み参ったという顔で彼が言う。


「悪い人ではないと思うんですけど………………」


 実際冒険者のことを考えてこのような仕組みにしてくれているのだからたまにうっかりしてしまうだけで良い人だと思う。


「まあ王様に関してはダイヤが言うなら悪い人ではないと思うけどそれよりも………………」


 彼が言葉に詰まっていた、王様の話ではないなら何のことだろう?私は彼の視線を目で追うとその理由が分かった。

 南西の方角は森のない山岳地帯が広がっていた。このまま2人で歩こうものなら見た目がゴブリンのトーハさんを隠すものがなくあっという間に見つかってしまうだろう。


「まずいよなあ」


 彼は苦笑いをしながら呟いた。

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