2-17「金色の鍵」
「とにかく、ゴーレムは倒したんだから扉は開いたはずだ!行ってみよう!! 」
2人一緒ですから……そう言われて恥ずかしく感じた俺は強引に話を変えることにした。その様子を暗闇で見えないのだが彼女は穏やかな目で見つめている……気がする。
邪魔するものは動けなくなっているので何事もなく扉の前に辿り着いた。
「これで、最後なのでしょうか。 」
「だといいね……ゴーレムを倒したんだしこれでどうか勘弁してもらいたいなあ。 」
ゴーレムを倒したからいいだろう、というのは冒険者としてはいけない慢心なのかもしれないが試練の一環としては十分すぎると思う。
念のため扉の取っ手が熱されたりしていないだろうかと小指の先でそっと触るがそのようなものはないようで一安心だ。
「じゃあ、開けるよ!モンスターが飛び出してくるかもしれないから念のため盾の呪文の準備を! 」
彼女は承知したようにこくりと頷いた。
「よし!せーの!ふううううううぬううううううううううううううううううう!!!!???????? 」
どういうことだ……?扉は力強く引っ張っても開かない。
「こんのお!ふんにゅううううううううううううううううううううううううううう!!!!!!!! 」
今度は両手で渾身の力で引っ張る!しかし扉は開かない。ゴーレムを倒さなければいけないのにゴーレムを転倒させてはい倒しました!はトンチレベルで認められず完膚なきまで叩き潰せということなのだろうか……?とはいえドアにはゴーレムの中からみつかるであろう鍵を差し込むような鍵穴なんかも見当たらない。
「トーハさんの力でも開きませんか、ではほかの冒険者の方はどうやってこの試練を突破したのでしょう? 」
彼女が首をかしげる。
そうなんだ、他の冒険者は全員冒険者見習いにも関わらずゴーレムを突破したのだろうか……
「他の冒険者?……ほかの冒険者…………あああああああああああああああああああああああああ!!! 」
そうか!なぜ気付かなかったんだろう!
「ど、どうしましたか!? 」
彼女が俺が突然声を上げたのに驚いたように聞く。
「そうだよ、他の冒険者だ!他の冒険者はこんなゴブリンの力もずばぬけて凄い盾の呪文も持っていないんだ!ということは、熟練冒険者と一緒に行動しないとまず無理だろう!それなのに王様は君を一人でここへ向かわせた!そもそもゴーレムは試練1回につきそれぞれに1体と気軽に用意できるようなものなのかな? 」
「そ、それってつまり……」
彼女も気付いたようだ。答え合わせをするかのように続ける。
「つまり………………このゴーレムは倒さなくていいんじゃないかな? 」
考えてみればここには俺が単独で入ったので能力に加え照明も持たないで洞窟に入るというイレギュラーな状況でここまできた。
しかし、冒険者の資格を持たないものに対して殺しにかかるというのもどうかとも思うが、ゴーレムはまず倒せないと思うので足の遅さを考慮しても明かりを持ったまま逃げ回ることになっていただろう。その最中に困り果てて探す、もしくは偶然みつかる秘密の扉がどこかにあるのではないだろうか?中には気付かず、扉も見つけられずで死んでしまった人もいるようだが……
「どこかに始めと同じで秘密の扉があると思う!探してみよう!!おそらく壁のどこかにあると思う! 」
彼女も頷き2手に分かれて岩肌に手を付けしらみつぶしに探していく。なかなかみつからないようなので彼女に気になることを尋ねるとしよう。
「そういえば、魔王がいるってなんでわかったの?ゴブリン曰く数か月前に魔王のペットが野に放たれたらしいんだけどそれまでは何もなかったんだよね? 」
彼女と離れているから大きな声を出したため声が洞窟内に反響する。
「それは、私も不思議だったのですが父曰く今まで占いを外したことのない占い師の方がそういったのだと………………現にそれ以降この世界にモンスターが現れましたし魔王のペットこそいませんでしたが、皆元を叩けば消えるだろうという考えで魔王討伐を目指していたようです。 」
なるほど、この世界にはそんな歴史があったのか………………
「ありましたよ!ここに扉が!! 」
そんな話をしていると彼女が扉を見つけたようでそちらに向かう。そこは俺たちが入ってきた扉のすぐ近くだった。そこはこれまでの扉同様岩の色に塗装されていて気付きにくい様になっていた。
「本当にあった……」
真っ向からゴーレムを倒そうとするなんて……何か凄い回り道をした気がして思わずため息をつく。そんな俺をみて察したのか
「クヨクヨしていても仕方ありません、行きましょう! 」
と俺の手を力強く引っ張り2人で扉の中へ入っていった。
扉の中はこれまで同様人一人が通れる通路だったが今度は階段は下ではなく上に伸びていた。
「ここからは階段は上に向かっているのですね。 」
「みたいだね、これ以上下に行くのはうっかり崩れると生き埋めなんてこともあるから願ったりかなったりだよ。 」
「生き埋めのことを考えると、ゴーレムが暴れまわっているって結構怖いですね……」
彼女が万が一、ということが起きたらと想像したらしく震えているようだ。
何か罠があると困るので先に立ち慎重に進みながら上って行く。
「そういえば、王様に何をもっていけばいいんだろう?この試練のクリアの証って何なのかな? 」
「何でしょうね、王様は『とあるもの』としか………………。 」
「これで上に着いたら王様や兵士たちがいてさ、祝福しながら拍手してきたらどうする? 」
「それは………………ちょっと拍子抜けですね。 」
試練と称してこれほどの大冒険なのだ。できれば何かそれにたるものが欲しいという願いは彼女も同じなのだろう。
剣か凄い魔法が載っている魔術書か杖か…………もしかしたらはやくもオーブがみつかるかもしれない!そのような会話をしている間に階段を上り終え、目の前に扉が見えた。これまで同様、石のようにみせかけた引き戸だった。
「よし、開けるよ……。 」
一体何があるのか……期待を込めて扉を開けた。
室内はこれまでの洞窟のようなものとは打って変わって足場も床も石で綺麗に整備され天井を支えるように幾つもの柱がそびえたち奥にドーンと棺のようなものが置いてあった。
「わあ……!! 」
これまでとは打って変わった華やかな光景に彼女は感嘆の声を漏らした。
しかし、この配置……なんか墓場みたいだな、と思うもまさか王様が墓荒らしなんて依頼すまい、と振り払った。
警戒しながら棺の所へと歩く。
「何が、入っているのでしょうか……? 」
「開けるよ………………。 」
背が届かないのでダイヤに抱えられた状態で両手で棺の蓋の端と端を持って静かにズラしていく。蓋が退けられ中のものが少しずつ姿を現す。
「これは………………」
中にはでかでかと【大怪盗パンルここに眠る!】と彫られていて真ん中にポツンと金色の豪華な鍵があった。
「パンルって誰?」
思わず彼女に尋ねる。
自らを大怪盗と名乗るくらいだし有名人なのだろうか?というか本人の墓だとして『怪盗』まではともかく『大怪盗』と書くとは何を思ってそうしたのだろう………………
「聞いたことがあります、何でも昔実在して世界を騒がせた怪盗だとか! 」
彼女が指に手を当てて答える。
実在したのか………………意外と茶目っ気のある怪盗だったのだろうか?
「この鍵が、報酬なのかなあ」
「みたいですね。 」
彼女も半信半疑の様子で答えた。
「一体どこの鍵なんだろう? 」
例え豪華な鍵でもどの鍵穴に対応してるのか分からないのならば無用の長物に感じた。
「どこの鍵か分からないから、こうやって試練をクリアした証に使っているのかもしれません。 」
「確かに……俺たちにはどうでもいいことか。よし!試練の証として早く取っちゃおう!日が暮れても面倒だから。 」
彼女の推測に納得したので鍵を取るように促し飛び降りて両手を自由にした。この試練をクリアしたのは彼女だから彼女が取るべきだと考えたのだ。
しかし彼女はそんな俺を再び抱きかかえた。
「1、2、の3で2人一緒に取りませんか? 」
参った……。こう何度も言われると恥ずかしい……。俺は黙って頷いた。
2人でクリアした証に2人で鍵に手を伸ばす。
「「1、2の3!!! 」」
2人で試練を達成した記念に2人同時に鍵を取った!
「綺麗ですねこの鍵、凄く輝いて見えます。 」
彼女が鍵を大事そうにみつめて呟いたその時だった。
「その鍵を返していただきましょうか! 」
おびただしい声が遥か頭上から響いた。




